Songs 03 布谷文夫『ナイアガラ音頭』他 ~盆踊り、音頭等の話。マニアック編~ 

「マスター、最近、調べ物ばっかりしているって聞いたけど、何をそんなに夢中になっているの?」

 声を掛けてきたのは、昔からの常連の一人、上田さんだ。確か70歳を超えているって聞いた事があるけど、見かけ上はずっと若く見える。因みに音楽に関しては殆ど知らないような人だが、喫茶店時代に暇をみて入り浸っており、中古レコード屋の営業になった後も、時々顔を出しに来る。まぁ要するに暇人だ。


「清水さんの話がきっかけで、盆踊りとか音頭を調べていたんだけど、何か変な方向に脱線して、今まであまり興味がないというか、聴く事が無かった大瀧詠一さんについて調べていったら、まぁ自分の知らなかった事実が色々出てきてね。気になって気になって、夜しか眠れないよ」

「相変わらずマスターのギャグのセンスはイマイチだね」

 上田さんに一刀両断され、ショボくれるマスターこと、店主の下野だった。


「きっかけは元祖声優ユニットの『スラップ・スティック』なんだけれど、実は大瀧詠一さんが関わっている曲を演奏したりしてたんだよね」

 気を取り直してマスターが話し出す。普段はあまり喋る方じゃないけれど、好きな音楽に関する事は饒舌に話すのだ。

「『恋するカレン』の原型みたいな曲とかね。意外だなと」


 スラップスティック『海辺のジュリエット』

 https://www.youtube.com/watch?v=u8gLUyGBndw


「それでスラップスティックが歌ってた『クックロビン音頭』から連想したのが『ナイアガラ音頭』なんだよね。個人的に好きな布谷文夫さんがボーカルを取っていたりね。で、検索したら昔のライブ映像が出てきて驚いた」


 布谷文夫, ナイアガラ社中『ナイアガラ音頭』 1977年6月20日 渋谷公会堂   The First Niagara Tourより

 https://www.youtube.com/watch?v=MvPGnfzNryc


「何か楽しそうだね。映像はこれだけ?」

 上田さんのリクエストで、この日の全編の映像を見せてあげた。時間的に長くないのが残念だが、動く大瀧詠一さんや布谷文夫さんが見れるだけでも貴重だと思う。


 https://www.youtube.com/watch?v=YM1oTK68baM


「で、何の話だっけ?」

「で、調べてみたら、近年、『ナイアガラ盆踊り』っていうイベントをやっているって知って、結構映像が上がっていたから見ていたんですよね」

「ほう、どれどれ?」

 下野と上田さんは、一緒に今年の『ナイアガラ盆踊り』のイベントを鑑賞した。いや、これも楽しそうだな。


『ナイアガラ盆踊り2025』第1部 2025年7月13日 代々木公園イベント広場

 https://www.youtube.com/watch?v=8GmhinZ30fM&t=26s


『ナイアガラ盆踊り2025』第2部 2025年7月13日 代々木公園イベント広場

 https://www.youtube.com/watch?v=y4Mka_8uKDg



 ……………………


「こうして聴いてみると、お洒落な音楽しか作らなかったと思っていた大瀧詠一さんって、『ナイアガラ音頭』みたいな曲も作っていたんですね。知らなかったですよ」

「オレは音楽は詳しくないけど、どんな感じの曲がお洒落なのか?よくわかんないね」

「まぁ大瀧詠一さんの代表的なアルバムは、やっぱり『A Long Vacation』かなぁ。永井博さんが描いたジャケットも秀逸だし。多くの人が思っている『シティポップ』のテンプレみたいなものって言うべきかな」


 https://www.youtube.com/watch?v=J5Ox44_7puU&t=33s


 ※ 余談ですが、『A Long Vacation』は、1982年10月に世界初のCD化タイトルとして発売された中の1枚ですが、35DH1規格の初期音源の段階で3種類のマスタリングがあるといい、細かく分類されています。最初期生産のレーベルが金ラベルのもの、当時のソニーのCD独特の所謂、『箱帯』と言われているものが潰れていないもの、そして状態のいいものでしたら、現在、えげつない値段がついていたりします。


「この『禁煙音頭』って、昔、どっかで聴いた事ある感じだけど、有名な曲?」

「それは宇崎竜童さんがいたダウンタウンブギウギバンドの『スモーキン・ブギ』って曲のパロディですよ。今回、調べてみて初めて知ったんですけど、この曲、デビュー前のシャネルズが録音に参加しているらしいです。鈴木雅之さんとかね」

 下野は、『はっぴぃえんど』系のアーチストは毛嫌いしていたので、大瀧詠一さんの事は詳しくないけれど、今回調べてみて、『LETS ONDO AGAIN』というカバーやパロディを集めたアルバムも作っていると知った。タイトル曲の『LETS ONDO AGAIN』は、チャビー・チェッカーの『Let's Twist Again』のパロディだけど、前述のシャネルズもライブでカバーしていたりも。


 https://www.youtube.com/watch?v=iTAdopkw_pM


「で、この曲を細川たかしさんがカバーして、NTTのCMでちびまる子ちゃんとのコラボで使われたりしたから、知ってる人は知ってるかもね。一応、CDシングルも発売されてたようだけど、近年、アナログシングルでも復刻しているみたい」

「何だかよくわからないけれど、細川たかしさんが歌っていたのね」

 興味ない人にとっては、こういった反応が当然か。


 https://www.youtube.com/watch?v=_V0Nq81OgTc


「これも大瀧詠一さんの仕事だけど、見事に音頭になっているのが凄いね。そして音頭と言えば、『イエローサブマリン音頭』も外せないね。何しろビートルズを音頭にするという発想が凄い。今から40年以上も前の話だよ」

「これは聴いた事あるかな。よく許可が出たと思ってたよ」


 https://www.youtube.com/watch?v=M2PGhqbK4-c


「という事で、大瀧詠一さん関連と、音頭や盆踊りとかをずっと調べているんだけれど、まだまだ調べる事がたくさんあってね。例えば大阪関西万博での大規模盆踊りがあったみたいで、地元大阪の河内音頭の河内家菊水丸さんの名前も久しぶりに見たりと、面白いね。他の地域の現代版盆踊りもまとめてみたいし」

「マスターの研究の成果、また今度聞かせてよ」

 そんな話をしつつ、上田さんと『ナイアガラ盆踊り』の映像を楽しんだのだった。でも上手くまとまるのだろうか?と、ちょっと心配になった下野だった。



 ○○○○


『音頭と盆踊りと大瀧詠一さんの研究』、上手くまとまるかは不安ですが、もう少し時間を掛けて調べてみたいと思います。どんどん話が広がって、収拾がつかない状態になりつつありますので。

『イエローサブマリン音頭』ですが、編曲を萩原 哲晶さんが担当していますが、これが遺作となったそうです。萩原さんは、クレージーキャッツの作曲、編曲を担当していて、実は大瀧さんは萩原 哲晶さんの楽しいアレンジのファンであり、クレージーキャッツのファンだというのを知りました。日本語の訳詞も松本隆さんだし、最後の方の台詞には、杉真理さん、伊藤銀次さん、佐野元春さんが参加しているとか。


 クレイジーキャッツの名前が出たら、ドリフターズも出て来るなぁという事で、多分次回は、『東村山音頭』とかも取り上げると思います。他の人にとっては、つまらない事だろうけれども、調べると新たな発見があって面白いのです。


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