【異世界冒険部門】勇者、無理っす!~異世界転移して勇者になったけれど戦うのが怖すぎるので「どうせ死ぬなら一発ヤらせてくれ」と土下座したらチートスキルが目覚めた件~
「勇者、無理っす!!」
「ええーーっ!?」
社畜の末に死亡し、気が付けば異世界転移を果たしていた
転移先は勇者。
剣聖と大賢者の血を引き、所持スキルも申し分なし。
ここから俺の無双ストーリーが始まる!!
……と喜んだのも束の間、メグルは秒で王城に舞い戻り女王セレーネに詰め寄っていた。
「いやマジ無理だって。死ぬって。ゴブリンが振り回すこん棒の速さと強さ知ってる? あれに比べたらカツアゲの金属バットも目じゃないって。今ならワンチャンあっちなら弾き返せそうだもん」
「金属……? いえしかし、メグル様はご無事のように見えますが」
「今はね? 『今は』ね!? 大賢者から継承したオートヒールがかかってるから傷も治っているけど、もう五回くらい走馬灯見たよ!? スライムとか思ってたよりずっとデカくて重いから、頭当たると首ゴリぃ行くんすよ!?」
「まさか、お戯れを。メグル様の御力なら、ゴブリンやスライムなど物の数ではないでしょう」
「スキルが詠唱できたらね!? 向こうは群れで来るじゃん。俺一人じゃん。『あなたのはレヴィオサー』以前の問題なのよ。『ウィンガーディアム』の『ディ』くらいで『アッ』ってなるのよ。『ウィンガーディアッ……』なのよ!!」
――そう、どれほど強靭な体と強力なスキルを持っていても、中身は現代日本人。
実戦の立ち回り方も知らなければ、魔物と戦う恐怖など当然持ち合わせていない。
「魔王討伐のあかつきに貰えるっていう富や名誉も、ぶっちゃけ割に合わないと思うんですよ」
「そう申されましても……いかがいたしましょう」
「ヤらせてください」
「…………はい?」
「どうせ死ぬなら一発ヤらせてください。この世界でも童貞のまま死ぬとかマジ無理っす。それに俺が死んだら勇者の血が絶えますし、ここで子孫を残しておくのはWin-Winじゃないでしょうか!!」
ヤケクソでぶちまけた童貞の咆哮。
しかしそれこそが――
「レベルが、上がった……? そうか、童貞のまま死んだ俺の魂と、ろくに女遊びも出来なかった剣聖と大賢者の血が共鳴して、
メグルの異世界無双ストーリー覚醒の狼煙だった!?
「聖女とは国に操を立てた身。斯様な欲に身を堕とすことは許されません」
×
「優しく、してくださいませ……」
――イーリアス王女にして次期聖女・アステシア。
「頭沸いちゃったの? あたしの炎で蒸発させてあげよっか?」
×
「やだやだやだ、見るなぁっ! ほんとに漏れちゃうからぁ!!」
――王立学校魔法科在籍中に『賢者』の称号を得た天才・オラヴィ
「拙者の剣に斬れぬものはありません。魔王も――勇者殿でさえも」
×
「鎧を脱いだばかりで……汗臭くはありませんか?」
――若くして騎士団の一隊長に上り詰めた剣鬼・ノワール
「……前にばかり集中しているから、ポケットがガラ空き」
×
「……メグルの匂い、安心する。くぅん」
――銀狼の血を引く神速の盗賊少女・ケルシー
「俺は陰キャで良かったよ。テメエらみたいに他人を傷つけて悦ぶような生き方だけはしなかったし、虐げられる痛みもよく知ってる」
――異世界転移した最弱で最強の勇者・メグル
「いつまでもビビってるわけにはいかねえよな! 来いよクソ野郎。俺が勇者だ!!」
これは、後に『英雄色を好む』の語源として名を刻まれることとなる男の、異世界冒険譚である!!
勇者、無理っす!~異世界転移して勇者になったけれど戦うのが怖すぎるので「どうせ死ぬなら一発ヤらせてくれ」と土下座したらチートスキルが目覚めた件~
11月29日より公開予定
雨愁軒経カクヨムコン10ティザー集 雨愁軒経 @h_hihumi
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