1-1 師と弟子の正しい距離感とは?
王都、
それらに立ち向かえるのは、凡人にはない特別な内功を持ち、厳しい修行をしてある領域以上に達した仙人、もしくはそれを志す道士だけだった。
十五歳で道士見習いの
「
王都の西区で起こっていた【怪異】を鎮め、明け方近くに戻って来た弟子に対し、師である
片膝を付き簡易的な拱手礼をしている弟子の横には、行儀よく"伏せ"をしている胴の長い白い毛の生き物がいるのだが、なにか後ろめたいことでもあるのか視線が逸らされる。
後ろでゆるく結んでいる長く美しい白髪をゆらし、白い道袍の上に青い衣を羽織りながら
「今回の怪異は少し厄介で手こずってしまい、戻るのが遅くなりました」
目の前にやってきた師を見上げて、
「·····それで朝帰りですか?」
あはは〜と呑気に笑っている
「まさか怪我などしていませんよね? 確認させてください」
と言いながら、片膝を付いて挨拶をしていた
それから間髪入れずに、さわさわと頬やら腕やら背中やらを触って、どこか異変がないか確かめ始めた
「 ひゃっ!? ····な、なにするんですか!?
「
「ええ!? ちょ、ちょと待っ」
「ここは? 衣が汚れてますけど?」
右足が隠れている裾を容赦なくぺろっと捲り上げられ、
「し、
「いえ駄目です。君は少し抜けているところがありますので、自分で気付いていないだけということも、じゅうぶんにあり得ます」
鳶色の瞳はどこまでも真剣で、どこまでも生真面目だった。
うぅ····全然信じてくれない。
「ひゃっ⁉ ど、どこ触ってるんですか!」
腰の辺りを触られ、思わず変な声で飛び上がる。腰と足の裏だけはやめて! と
「まったく····あとで他の場所も確認しなくては、」
童顔で可愛らしくもあり美しくもあるその整った容姿は、男女問わず良い印象を与えるようで、育ての親としては心配要素しかない。
ちなみに神仙とは、道士が目指す最終目標であるが、もちろん誰にでもなれるものではない。不老不死であり、神通力を持つ特別な存在。つまりは仙人様なのである。
白髪の
「はあ。
『きゅ?』
白い道袍の上に纏っている紅梅色の衣を直しながら、
だからあんな風に過剰に自分のことを心配してくれるし、擦り傷でもつくって帰って来た日には····いや、あれは思い出すだけでも恐ろしすぎて、眠れなくなるからやめておこう。
とにかく、このままではいつまでも"見習い道士"のままだ。
「
白い毛の生き物もとい、
彼は言葉は話せないが、ちゃんと理解できているのだ。精霊なので普段は普通の人間には視えず、道士の中でも視える者と視えない者がいるようだ。もちろん、
見た目は
赤い首輪は悪さをしないようにと
『きゅ~きゅきゅ!』
「うんうん、そうですよね。私と
きゅ~と
「ありがとう、
『きゅ!』
「あとは、彼のことを忘れてしまわないように、昨夜のことを日記帳に書きましょう。せっかく知り合えたのに、次に逢った時に"はじめまして"なんて言ってしまったら失礼ですし」
『きゅう~』
「ふふ。君が私以外の人間を気に入るなんて珍しいですね、」
『きゅきゅ!』
今回の【怪異】は思っていたよりもいろんな意味で少し厄介で、もしも自分たちだけだったら、あの妖者を再び逃してしまっていたかもしれない。そうならなかったのは、一緒に戦ってくれた彼のおかげといってもいいだろう。
(王宮の首席道士、
◇◆〜 おしらせ 〜◆◇
※こちらは期間限定で公開中です。
12/22に再度非公開となりますのでご了承くださいm(_ _)m
※次回公開はカクヨムコン明けの2月くらいを予定しておりますので、よろしければ作品のフォローをしておいてもらえたら幸いです♪
【華藍国の暁道士】〜見習い道士と王宮の眠り皇子〜 柚月なぎ @yuzuki02
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