エピローグ・A
命がひとつ、溶かされて。時はさざめくように波うった。
平然と費やされた悪意が、無垢な命を貪り、透明なまま増幅する。
その音はごく近い。儀式はこの森で行われているのだ。根源たる石樹のもとで。
「前はいつだったっけ、変なおばさん三人。ぜんっぜん思いが足りなかったけど! どうかなー今回の人間は成功するかなー? ……んんん? あれ、この人間って」
水鏡の精霊は、その魔術師がどのような人間か確認しようとし、ふと、覚えのある魂の感触と、清廉な森の薫りに気づく。
あははっ! ――と、どこまでも透明に、精霊は笑った。
「運命って、おもしろーい」
幼気なその声が、誰にも届かぬ空虚に響く。高まる気持ちにぴょんぴょんと飛び跳ねれば、足もとで飛沫が舞う。
「うんうん。やっぱり人間は、味方だね。みーんな、僕の味方」
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ。
ぐるりと周って映してみたら
大きなものにも手が届く!
舞った飛沫が、わあんとはじけた。
「楽しみだなー……ほんとに、森を壊せちゃったりして」
構築される精霊 ナナシマイ @nanashimai
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