第11話 虚構の存在がうるさいな

 巧たちが帰ったかなり後。深夜のこと。


 先ほど現れた2人の学生、橘 玲子たちばなれいこと九条 くじょうあゆむが高台に立っている。


 玲子は背が高く、髪はポニーテールにゆわいている。長い髪がなびいていて、目は切れ長で、シルバーフレームの眼鏡をしている。顔に幼さはない、整った顔つきだ。


 歩もまた背が高い。190センチはある。こちらもまた眼鏡をかけているが、スポーツ用のものだ。怜悧な顔つきをしている。


 玲子が言う「行くか」


「全くだな。昼間の連中は眠っている間にインベーダーが来ないとでも思っているのか? 危機感が足りないな」


「まぁそういうな。だが実際に奴らは数を減らした」


「明日わかるさ。問い詰めてやる。これからは敵のレベルもあがる。覚悟なき者に戦わせるのは心苦しい」


 眼下の森には巨大な狼のようなインベーダーが陣取っている。


「吠えてるぞ」と玲子


「ああ。俺たちで片付けられるか?」


「やるしかない」


 さっと2人が傘を持って駆け出す。


「「領域侵犯」」


「アネモス スティレト」と玲子。傘は縮まり、風を纏う短剣になった。


「ティス フォティアス」歩の場合は逆に傘が大きくなり、火を纏った。


「背中は預けました」と玲子。


 歩が大剣で切り込むが、その傷はすぐに修復された。


 玲子が提案する「私が一度切りつけて、その傷の上から剣を振るってはどうでしょう?」


「策もないしやってみるか」


 玲子の動きはベテランのサッカー選手のようだった。右へ左へ身体をかわしながら時にフェイントをかけ、敵に狙いを定める。


 かなり深く切りつけた。


 間髪入れずに歩が同じ場所を切りつける。


 しかしそれもまた戻ってしまった。


 玲子がつぶやきのように言う「なんて再生力なんだ」


「こりや火力不足だ。逃げるか?」


 話していると、ステッキを持った紳士がどこからともなく現れた。まるで最初からそこにいたように。


 顔にはペストマスクをつけている。手に持ったステッキを一振りすると、金属製の鞭のようになる。それを使い、ケモノを足回りを攻撃する。


 しかしはやり再生能力は働いているようだ。


 紳士の数が増えた気がする。4つ足一度に切ろうとしているのだ。その作業は(戦闘というよりは作業だった)あっという間に終わった。


 ケモノが叫ぶ。


「虚構の存在がうるさいな」


 ケモノは消え、雨も止んだ。


 歩が警戒しながら聞く。

「なんだお前?」


「おまえ呼ばわりはひどいじゃないですか? 仮にも命を救ったんですよ?」


 玲子が代わりに謝る。


「すまなかった」


「私は貴方たちに味方する者です。貴方たちがインベーダーと呼んでいる異世界からの侵略者。私はそれに対抗する者です。あなたたち同様にね」


「信用ならないな」歩が眼鏡のブリッジを上げながら言う。


「そうですねぇ……今、侵略者と戦っているのは貴方たちともうひとグループいますよね」


「ああ」


「あの人たち、インベーダーですよ?」


「信じられないなら今度、斬り殺してみるといい。消えますよ」


「やつらの目的は?」


「インベーダーの目的? そりゃぁこの世界を奪い取ることです」


「ならあいつらは、それに対抗しているように見えるぞ」と玲子


「そうなんですよねぇ……そこなんですよ。まぁこれ以上は言えませんがね、重大な秘密があるとだけお教えしましょう」


 そう言って紳士はくるっと回って消えてしまった。

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世界浸食 〜ヤンキーは電波少女の妄言に巻き込まれ本から出現した侵略者と戦う〜 清原 紫 @kiyoharamurasaki

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