絡まったからこそ、こんなにも美しく聞こえる。

月の道。
海に映る月光により、細く長い光の道筋ができる。
それは月への道筋のように、限られた状況の限られた時間の中にだけ現れる。
まるで月が、君のことを呼んでいるかのようで。

アルバイト先の先輩だけど、同じ大学では後輩の『後輩さん』。
アルバイト先では後輩だけど、大学では先輩の『先輩くん』。
いつの間にか定着した呼び名の二人は、飲み会と称した二人だけのキャンプに向かう。

先輩だけど後輩。後輩だけど先輩。
同じ二拠点に身を置くからこその呼び名。

この逆転する関係性から生まれるコミカルな会話だけでも楽しめると思いますが、月や星や音楽など。二人の関係性を比喩で表すかのような幻想的な描写がたまらなく美しいのです。

ややこしい呼び名から始まる、ふわりとした世界は二人を優しく包み込むようで。徐々に浮き出る不器用な想い。月光に想いを馳せ、心を託した二人の終着点とは。

是非、お楽しみください。

素晴らしい作品をありがとうございました。