第17話 祈念
丑三つ時にどうしても顎にカミソリを当てなくてはという強迫観念に駆られて洗面所に立つと、覗き込んだ鏡の中には目と口の位置が入れ替わっている自分の顔が映る、悲鳴さえあげられず呆然としていると左腕に緩く引っかかっていたミサンガが勇ましく鏡面へ躍りかかりおよそ細糸で編まれた物体には似つかわしくない鞭打ちを披露する、やがて鏡に映っていた異形は消えてミサンガもぷっつりと切れてしまった、残骸を拾うべくカミソリを置いて膝を折る、そういえば、中学校の時に気まぐれで先輩が作ったというものを、やはり当時の気まぐれで数年前に押しつけられた腕飾りだ、どうして今になってはめていたのか思い出せない。
百鬼一行 空空 @karasora99
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