第24話 九頭龍の能力

「単刀直入に申します。。」


九頭龍は鋭い眼光から放たれる圧を弁財天に向ける。しかし弁財天は意に返さない構えである。


「なぜ返して欲しいのじゃ?返答によってはやぶさかではない。」


九頭龍に取り憑いているソレはニヤリと口角をあげる。


「刀を返して頂けたら、ちまたを騒がせているとかいう雑魚どもの首を獲ってご覧にいれましょう。あなた様のお膝元で京都を荒らす輩の首を鳥居にでも並べましょうか?それを見ながら酒でも飲みましょう。実に風流でござる。」


「修羅道に堕ちても尚、人を殺すのが好きなようじゃな。」


弁財天は九頭龍を睨みつける。


「斬った張ったが世の中でござりましょう。自分が世の中を回しているなどと思い上がった阿保あほうを斬るのは今も昔もたまりませんなぁ。」


「無益な殺生は好まぬ。」


九頭龍は舌打ちして髪をかきあげる。


「チッ!温いことを言う。ならばその首から頂こうか!」


弁財天は正座したまま動く気配はない。しかし九頭龍は無刀のままではあるが、片膝を立てて抜刀の構えをする。


「無刀居合」


電光石火の手刀が弁財天の首を目掛けて走るがピタリと止まる。


「どうした?首を刎ねるのではなかったか?」


「さすがにござりまするな。瞬きすらしないとは。」


「殺気のない攻撃を向けられてものぅ‥。」


弁財天は正座したままクスリと笑う。


「殺気があってもなくとも天眼で見切れるでしょう?」


九頭龍は笑う。最初から斬る気など無かったように。


「斬らぬなら、九頭龍の能力について話せ。」


「刀を返して頂けないのにそちらの要求を飲む義理などありませぬ‥‥が一つ教えましょう。なぜあなたが先程、九頭龍に遅れをとったのか。」


弁財天が一瞬、ピクッと反応したのがわかったが九頭龍のソレは構わず続ける。


「九頭龍の能力は4つございます。」


「4つじゃと!?」


「はい。そのうちの一つがにございます。これはいかなる者も九頭龍の。つまり達人であればあるほど、殺気や気配を読み対策しますが、殺気すら隠すことが可能なのです。それは神のをもっても読むこと叶いませぬ。」


「なんじゃと!?なるほどだから先程から九頭龍の挙動が読めなんだのか‥。」


「左様。九頭龍の能力ならば。これがどれほど厄介な能力かあなた様ならわかりましょうや。加えて、この俺の能力、。これは相手がいかなる技を繰り出しても、絶対に俺の。この組み合わせは破ることが出来ませぬ。おっと。お喋りが過ぎたな。あまり手の内を明かすのはやめておこう。」


「そなたの目的はを取り込んで技のすべてを自分の物にするつもりじゃな。」


九頭龍のソレは御名答とばかりに笑う。


「まぁ、そういうことだ。。邪魔する奴は神でも仏でも殺ス!!」



九頭龍の高笑いが本殿に響いていく。目の前にいるソレはまさに悪鬼羅刹そのものであった。

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弁天怪異譚 九頭竜 @kuzryu

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