<最終話> 峰賀澄 梅香 (3)
はーあ。すっきりした。
将矢。ねえ将矢、もういいわよ。ええ、ご苦労様。終わったわ、全部。
いやねこの男、気絶した上で失禁してるわ。やだやだ。
来里原の男は顔はいいけどこういう時の度胸が無いのよね。雪乃ねえねが言ってたの、ホントにそのままなのね。
将矢。悪いけど、汚いもの全部片付けてちょうだいね。来里原の処遇はどうなるかって――梅香は知らないわ。親族会議で決まるんじゃないの? ま、勿論梅香の意見も言わせてもらうけど。
ええ。ありがとう。
え? 録音と録画はどこまで使うか?
そんなの、怯えた来里原 悠太が姉様を殺害したことを認めたくだりだけよ。
それ以外のなんかもう神通力だかなんだかのくだりは、全部カットよ、カット。
当然じゃない。
この梅香が神通力なんて非科学的なもの信じるわけないじゃない。もし万が一そんなの世間にバレたら、もうアイドルとしても女優としてもやっていけないじゃないの。イメージでやってく世界なんだから。
でもま、これでちょっとは姉様の仇もとれたってものね。あーすっきりした。
え?
あらごめんなさい。
そうね、仇だなんて縁起が悪い。
無事に一命を取り留めていた姉様に聞かれたら、怒られてしまうわね。
とはいえ梅香からすれば、姉様も姉様だけどね。来里原 悠太、こんな男のどこがいいのかしら。ホント梅香、姉様の趣味分かんない。
ええ、桜子姉様は本当に発見が早くて助かったわ。でなければまず命が助からなかったし、犯人がこの男である事も聞けなかった。
それもこれもあなたのおかげね、将矢。貴方のことは一生大事にしてあげなきゃ。
あら、ふふふ。でも考えてみればソレも違うのかしら。
元々は蔵でかくれんぼなんて悪いコトしていた、花恋ちゃんのおかげかしらね。
貴方が花恋ちゃんを探して蔵に入らなかったら、姉様を早くに発見できず、あのまま手遅れになっていたかもしれないものね。ああおぞましい。
うふふ。ありがとうね、まーくん。
え? あら、この呼ばれ方は花恋ちゃん限定なの。あらそう。妬けるわね。
ま、とにかく早くここを片付けて、録画したデータをお父様に渡してちょうだい。
それと。あとでいいけど、大木に口止めの報酬も渡しておいてね。雪乃ねえねへの御礼は梅香から直接渡すから。
来里原への脅しに使ったマネキンはどうするか? さあ、適当に蔵にでも放り込んでおいたら?
ん? ああ、そうね。まさかあの蔵でこんな事件が起きるなんて、本当に因果なものね。梅香はあんまりオカルトとか信じないタイプだけど、流石にあの蔵の「曰くつき」をちょっと信じる気になったわ。
え、あの蔵が「曰くつき」の詳しい理由? あら将矢、知らなかったの? ふぅん。詳しい理由までは聞いてなかった? そうなの。
あの蔵では、元々ね。
峰賀澄にとって、『表に出たら都合が悪い』と判断された死体を処分していたそうよ。
あら、梅香は使わないわよ。
だって、梅香にとって都合が悪いコトが起きても、将矢がいるじゃない。
<終>
【全8話】蔵で死体を見ましたか? 二八 鯉市(にはち りいち) @mentanpin-ippatutsumo
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