第25話

盗賊団の問題を解決し、プロジェクトの成功が明確になるにつれ、ナート男爵領の評判は急速に高まっていった。周辺領地の領主たちも、バース子爵領との協力がもたらした成果に注目し始める。そんな中、ルークのもとに、隣接するハリス子爵から手紙が届いた。


「ナート男爵家ルーク殿、

貴殿がバース子爵家と共に進めている新たな灌漑について話を伺いました。我が領地でも同様の問題を抱えており、是非とも協力をお願いしたく存じます。ハリス子爵家エドワード」


ルークは手紙を読み、深く考え込んだ。


「ハリス子爵領か…。あそこは干ばつが特に厳しい地域だったな。」と、リックが地図を広げながら言う。


「はい。ハリス子爵領の土地はバース子爵領以上に荒れています。技術をさらに改良する必要があるでしょう。」ジルが指摘した。


ルークは頷き、静かに口を開いた。


「これはチャンスだ。他領地と連携することで、技術の向上や労働力の共有が進むはずだ。まずはハリス子爵と会談しよう。」


______________________________


ルークは使節団を率いてハリス子爵領を訪れた。到着したルークを出迎えたのは、気さくな性格のハリス子爵エドワードだった。痩せた体つきだが、目には知性と熱意が宿っている。


「ルーク殿、久しいですな。お越しいただき感謝します。まずは現状をご覧いただきたい。」


ハリス子爵の案内で領地を巡ったルークは、深刻な干ばつに苦しむ村々の様子を目の当たりにした。ひび割れた土地と枯れた作物。住民たちの表情には疲労と絶望が漂っている。


「厳しい状況ですね…。しかし、ここまでの荒地でも、水さえ確保できれば復興の道はあります。」ルークは確信を込めて言った。


ハリス子爵はその言葉に希望を感じたように微笑んだ。


「ルーク殿の技術力を信じています。ぜひ、協力して欲しい。」


ルークは笑みを返しながら答えた。


「もちろんです。しかし、ハリス子爵領でのプロジェクトは、資金や労働力の面でナート男爵領だけでは対応しきれません。他の領主たちにも呼びかけ、共同プロジェクトとして進めるべきです。」


「他領地との連携、ですか…。確かにそれが実現すれば、大きな力になるでしょう。」


ルークの提案を受け、ハリス子爵の協力のもと、南部の領主たちを招集した会議が開催されることになった。ナート家に集まった領主たちは、灌漑プロジェクトの成果や、干ばつに対する新たな取り組みについて議論を交わした。リル公爵家のみ代理人が参加している。


「ナート男爵領とバース子爵領が成し遂げた成果は、すでに実証済みです。この技術を南部全体で共有することで、経済的な安定と発展を実現できます。」ルークは熱意を込めて語った。


しかし、慎重派もいた。マイナ伯爵だ。


「確かに興味深いが、我々にとってのリスクが大きすぎるのではないか?」


「投資の回収が確実である保証は?」


それに対し、ルークは冷静に答えた。


「最初の導入費用は確かに高額ですが、長期的に見れば莫大な利益をもたらします。また、灌漑技術だけでなく、交易ルートの整備や市場の拡大も同時に進めることで、確実な回収を目指します。」


さらに、バース子爵デリックも支援の意を表明した。


「私も最初は疑念を抱いていました。しかし、ルーク殿の計画は我が領地に確かな成果をもたらしました。彼を信じる価値はあります。」


この言葉が決定打となり、南部の領主がプロジェクトへの参加を表明した。


会議後、南部連合とも呼べる新たな協力体制が結成された。ナート男爵領はその中心として、各領地の復興計画を統括する役割を担うことになった。ハリス子爵領を含む複数の領地で、同時進行の灌漑プロジェクトが開始された。


一方、ルークはさらなる課題に直面していた。プロジェクトの規模が拡大するにつれ、資材や人材の不足が顕著になり始めたのだ。


「物流の効率化が急務だな…。南部全体で使える新たな交易ルートを整備する必要がある。」ルークは地図を見つめながらリックに語った。


「それだけでなく、技術者の育成も急がねばなりません。これを機に学術施設を設立してはどうでしょうか?」ジルが提案した。


「学術施設か…。確かに、次世代の育成も重要だな。」ルークは新たな目標に向けて、さらに意欲を燃やした。


こうして、ナート男爵領を中心にした南部の発展は、より大きな波を生み出し始めた。次々と現れる課題に挑みながら、ルークの挑戦は未来へと続いていく――。

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異世界不動産 ~不動産から始まる異世界改革~ Nami @namisan1217

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