第21話 プロットの話


 「つまらない脚本から面白い映画ができることは絶対にない」


 そう語ったのは、映画『七人の侍』で有名な黒澤明監督でした。


 同じように、つまらないプロットから面白い小説を書くのは難しいです。


 黒澤明監督は、侍映画を撮ろうとして、最初、剣豪たちのエピソードを集めたものを考えたそうです。

 だが、エピソードばかり集めた物語では映画にならない。


 そこで、ふと思い出したのは、ある古文書にあった、「野武士に襲われた村が、侍を雇ってそれに対抗した」という内容の記述だったそうです。

 その一文から、『七人の侍』のプロットのアイディアはスタートしたとか。



 さて、物語はアイディアから作られ、大抵の人はそのまま小説を書き始めてしまうことでしょう。

 だから、そのアイディア=物語となり、そのアイディアが偶然面白い話であったならば、そのまま書籍化なんてこともありますが、そういうラッキーは2度はありません。

 運良く書籍化されて作家デビューしたあなたは、2冊目からはどうするのでしょうか。



 さて、今回はプロットの話です。今回のぼくのカクコン応募作品『ピーチ+1』のプロットについてお話しましょう。


 まず、『ピーチ+1』というタイトルは、よくありません。ひと目見て、何の話だか分からないし、どういう話であるかも分からない。


 良いタイトルは、それだけで何の話だかはっきり分かり、どういう内容の物語であるかも用意に想像つくものです。


 『十角館の殺人』とか『少林サッカー』とかのように。


 『ピーチ+1』のアイデアは、『ダイ・ハード』+『暗殺者』です。


 もともとのアイディアでは、テロリストがいろんなものを占拠し、それを記憶喪失の暗殺者が撃退する話でした。


 最初のアイディアでは、テロリストが占拠するものは、「高層ビル」「学校」「バス」「ディズニーランド」「旅客機」でした。


 一方で、細部までリアルにするのは難しいという逃げの考えから、フィクションの要素を入れる目的で、暗殺者の相棒を人狼にしました。


 詳細なプロットを書き、実際に2度ほど書いても見たんです。が、……物語になりませんでした。


 まず、そもそもが何で、テロリストはいろんなものを占拠するのでしょう? なんでわざわざそんなことする必要があるのでしょうか?


 そして、主人公の記憶喪失の暗殺者は、なんでそんなテロリストたちを次々と撃退していくのでしょう? 何のために?


 ここが、プロットの問題点です。作者がやりたいことと、プロットが要求することには、いつもズレがあります。


 もともとのアイディアは、主人公と対立者の両方に、行動の理由がありませんでした。


 これは、駄目なアイディアであり、駄目なプロットでした。このまま、『ピーチ+1』のアイディアは長いこと放っておかれました。ざっと20年くらい(笑)


 で、このアイディアをどうにかしようと思ったのは、さて何年前でしょう? 思いつきは、全然違うところから始まりました。



 面白い小説。そして、売れる小説とはどういうものか?を考えていたときのことです。


 需要があるのに、あまり書かれていない小説。大人も子どもも楽しめて、映像作品にもなる小説。ぼくはそれを、『ルパン三世』のような小説と結論づけました。


 需要はあるのに、あまり書かれない、『ルパン三世』のような小説。それを書こうと……。

 それこそ、本屋の棚に穴を穿つような、そんな小説を書くべきだと。


 そして、選んだのが、『ピーチ+1』のアイディアでした。


 ただし、そのままでは『ピーチ+1』は使えません。アイディアを変える必要がある。あのままでは、物語にならないから。


 ぼくは『ピーチ+1』のアイディアの中で、自分が本当にやりたいこと、そして読者が読んで本当に面白いと感じる部分を抽出しました。そして、これが何の話であり、何をする物語であるのかを考えました。


 これは、記憶喪失の暗殺者と人狼がコンビを組んで、敵を倒す爽快な物語である。というのが結論でした。


 とすると、物語の中心にあと二つ、パーツが必要になります。


 マクガフィンとゲスト・ヒロインです。ここでいうマクガフィンとは、物語の中心になるアイテムです。そして、ゲスト・ヒロインの意味は説明するまでもありませんね。


 が、ゲスト・ヒロインの存在は重要です。

 主人公が警察官なら、事件を追う理由は最初からあります。が、それ以外の職業で、主人公が事件を追う理由はなんでしょう?


 『ピーチ+1』では、それを二つ用意しました。暗殺者は自分の過去を探し、人狼は被害にあった女子高生を守ろうとします。そのためには女子高生(ゲスト・ヒロイン)が必須でした。


 このマクガフィンとゲスト・ヒロインは、『ルパン三世 カリオストロの城』では、ゴート札とクラリスです。これがないと、物語として成立しない。


 そこで、ぼくは『ピーチ+1』において、ゲスト・ヒロインキャラを作り出し、マクガフィンとしては、人類を滅亡させるオーパーツを設定しました。


 最終的に、人類を破滅させるオーパーツがヒロインの身体の中に仕込まれているという設定にしました。


 これで物語は、女子高生を守るという卑近なミッションから、やがて人類の滅亡を阻止するという大げさなものに進行させることができます。


 そして、アイディアと設定をいじり、結果として敵の武装集団はバスだの学校だのを占拠することになります。結果として、もともとのアイディアを生かす形に納まりました。



 以上が、今年のぼくのカクコン応募作品におけるプロット作成のあらましです。


 ということで、さあ、お賽銭だと思って、以下の作品をフォローしましょう。


 『ピーチ+1 ~人類を滅亡から救う最強コンビ、それがピーチ・プラスワン』


https://kakuyomu.jp/works/16818093081153759854


 もちろん、フォローしたからといって読む必要はありません。☆も入れる必要はありません。



 それどころか、ぼくの作品のことは、なるべく考えないようにして下さい!

 たぶん、みなさんの作品執筆の邪魔になると思うので。


 すでにカクコンは始まっていますね。

 みなさんも、どうぞそちらに集中して下さい。しばらくこちらのエッセイの更新はありません。



 そして、最後にひとつ警告を。



 コンテスト参加作品のタイトルとURLリンクをプロフィール欄に記載することを、忘れてはいませんか?





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カクコン攻略の星☆ Version10 雲江斬太 @zannta

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