第5話 真実
──頬がひどく冷たかった。だが森の中で感じた、包みこまれるような感覚ではない。
氷のように堅く、拒絶するような冷たさだ──。
──。
どこかで声が聞こえた。
──ヤ。
懐かしく感じた。声に聞き覚えがある。
─ウヤ。
赤くて細い、揺らめくものが視界にぼんやりと映る。
シュウヤ──。
ようやくはっきりとわかる。どこかで誰かが自分を呼んでいるのだ。
ぼんやりと揺らめくのはロウソクの炎だった。
そのまえに二つの影が見えた。
そのうちの一人がシュウヤを呼んでいるのだ。
灯りはロウソクだけでひどく薄暗い。それでも徐々に目が慣れて、二つの影にピントが合い輪郭が露になる。
一人はルリオだった。
表情はなく、冷ややかな視線をシュウヤに落としていた。
もう一つの影、並んでいるルリオよりも頭一つ低い。
それは見たことのない若い女だった──。
いや──見覚えがある──。
ショートカットで、整った顔立ちはルリオに似ている。
その若い女にも、幼いころの面影が残っていた。
フウカだった。
フウカがシュウヤのことを呼んでいたのだ。
シュウヤは驚き立ち上がった。
そのまま二人の元へと進む。
だが、かたい何かが二人とシュウヤの間を遮った。
直線のかたい棒が縦に何本もはしっていた。棒と棒の間隔はひどく狭い。
鉄格子──。
シュウヤの前には鉄格子が立ちふさがっていた。
シュウヤはわけもわからず、その鉄格子を両手で握り、思い切り力を込めた。
押しても引いてもびくとしない。
「シュウヤ駄目よ。そんなことをしても無駄。そんな急に起き上がって、怪我をしていたのだから寝ていなきゃ」
フウカは、シュウヤに対して馬鹿にするような口調で、そう言った。
鉄格子に隔てられてはいるが、目の前にルリオとフウカの姿があった。
その二人の隙間を縫うようにして、奥の燭台に掲げられたロウソクの揺らめく炎が見えた。
「フウカ……なぜ……事故で死んだはずじゃ……」
シュウヤがそう言った途端、ルリオとフウカが顔を見合わせた。
直後、二人の笑い声が響きわたる。
二人とも整った顔を歪ませ、腹を折り、まるで狂ったように笑い転げていた。
シュウヤはその二人の姿を呆然と見ていることしかできなかった。
何がそんなに可笑しいのかまるでわからないのだ──。
二人とも涙を浮かべて笑っていた。
シュウヤは二人のその姿を見て、説明のつかない絶望感が腹の奥底からせりあがってくるのを感じていた。
「フウカ……言ったとおりだろ……本当にシュウヤは全部忘れちゃってるんだよ……」
ルリオがようやく息を整えて言った。
「本当におめでたいわね……都合の悪いことは全部忘れられるなんて……私にもその方法を教えてほしいものだわ……」
そうルリオの言葉に答えたフウカは、シュウヤを一瞥した。その目はすでに笑っていなかった。シュウヤには、フウカの瞳の奥に、ロウソクの炎にも似た、揺らめく影が見えたような気がした。
その影の正体はすぐにわかった。
それは漆黒にもえたぎる憎悪の炎だった。
「ぜ、全部忘れる……いったいなんのことだ……? それに……ここはどこだ……俺は森の中で倒れて……」
足が思い出したように痛み出した。
そう屋敷を探して、森の中をさまよい歩いていたはずだ──。そこで力尽き意識を失い倒れた──そこまでは覚えていた。
「まさかあそこまでたどりつくとはね……本当に驚いたよ……敷地内の森まで来られるなんて……」
ルリオはあきれたような口調で言った。
「敷地内……ここは屋敷の中なのか……?」
「そうだよ。屋敷の中だよ。ひさしぶりに来ることができて嬉しいかい?」
ルリオはさきほどとはうってかわり、無感情に言った。
屋敷はあったのだ──。
自分の記憶は正しかった。
やはり町の人間たちのほうが間違っていたのだ。だがフウカはなぜ生きているのだろうか──。そしてルリオは、ここが屋敷の中だといっているが、屋敷の中にこのような鉄格子の部屋などあっただろうか──。
屋敷が存在していた、という嬉しさは一瞬で立ち消えた。
シュウヤの頭の中には、いくつもの不安と疑問が渦を巻いていた。
「ここは屋敷の、いったいどこなんだ……?」
「どこって、地下にある地下牢だよ。君みたいな人間を閉じ込めておくためのね……」
「地下牢……」
シュウヤは鉄格子から離れて、今いる自分の場所を確認した。すでに目は、この薄暗さに慣れはじめていた。床は固いコンクリートでできている。息が詰まるような狭い空間にシュウヤは閉じ込められていた。上を見る。少し伸びをすれば頭をぶつけてしまいそうな恐ろしく低い天井が眼前を覆っていた。
地下牢──。
屋敷の地下にそんなものがあるだなんてシュウヤはまったく記憶になかった。
「ルリオ……俺を閉じ込めてどうするつもりだ……?」
「どうしようかな……シュウヤはよっぽど、昔のことを知りたいみたいだね……」
「俺は生まれたときからずっとあの町に住んでいるが……なぜだか自分だけが、あの町そのものから疎外されているように感じていた。何も知らぬまま、町を出て行こうかと考えていたが……ルリオ、君にまた再び出会ってしまった……すべてを忘れていた俺は、部分的にこの屋敷のことを思い出した……それが俺を再び悩ませる原因となってしまった……。
見え隠れする真実に俺は苦しめられている……どうしても何があったのかを知りたいんだ……」
「その言い方だと、まるで僕に責任があるようだね……君は、僕に再会したことで苦しんでるんだろ?」
「そうは言っていない……これは俺自身の問題だ……」
「まあ、いいよ。そんなに知りたいならあのとき何があったのか教えてあげるよ」
「本当か……?」
「本当さ。そのために君は、僕を追いかけてここまで来たんだろ?」
シュウヤはゆっくりと頷いた。
「そうだ……俺は真実を求めて、ルリオを追いかけてここまできた……それと同時に、あの町から出たかったんだ……あの町に俺の居場所はない……」
「なぜ君はそう感じると思う? 君は生まれたときからあの場所に住んでいるんだろ?」
「わからない……なぜそう感じるのか……誰とも相容れることができなかった……親も友人も……いつも一定の距離をとられて、たえず誰かの目が俺を監視している……そんなふうに感じていた……」
シュウヤは自分自身に驚いていた。こんな話、誰にもしたことがなかったからだ。ルリオの不意な問いかけに、知らずシュウヤは心の内をさらけ出していたのだ。
「それはまあ、仕方ないかもね。町のすべての人間が罪の意識に苛まれている……君を見ると誰もが、自らが犯した罪を鼻先に突き付けられているような気持ちになるんだろう……」
シュウヤにはルリオの言った言葉の意味がまるでわからなかった。
「どういうことだ……何をいっている……?」
ひどく嫌な予感がした。そのとき二人の背後でロウソクの炎が大きく揺らめいた。シュウヤは、この薄暗い空間が不穏な空気で満たされていることにようやく気づいた。
「シュウヤは町から届けられた生贄だったんだ」
ルリオの口から思いもかけない言葉が飛び出した。
「知っていると思うが、あの町にある会社のほとんどが、僕の父親の物だった。言うなればあの町自体が父親の所有物だったと言っても過言ではない。あの町で生きていくためには僕の父親に歯向かっては生きていけなかった」
そのことは知っていた。シュウヤの祖父が日本の財政会を牛耳るほどの大物で、その実子であるキョウイチが町の実権を握っている、というのは知識としてシュウヤの頭の中に入っていた。
だが──そのことは誰に教えてもらったのだろうか──。町の人間、両親や友人から、そのような話を聞いたことはなかった。おそらく幼いころルリオに直接聞かされた話ではないか、とシュウヤは考えた。
だが町で暮らしている頃、自分の両親や友人が、キョウイチに対して、生贄という物騒な言葉がでるほどに、何かに恐れている、という印象はなかった。
シュウヤの両親などは団地を出て、一軒家を建てたころから、夫婦の仲も良くなり、派手ではないが、順風満帆に生きている、という印象を持っていた。
「君の父親は、僕の父さんの会社から多額の借金をしていたんだ。君は借金のカタとして生贄にされたんだ」
ルリオの言葉はシュウヤにとって現実味のない荒唐無稽な話に聞こえた。シュウヤにはまるで身に覚えのない話だったからだ。
「ルリオ、君の言っている言葉の意味が俺にはまるで理解できない。生贄……冗談だろ……俺は屋敷で、ただ君たちと楽しく遊んでいた、という記憶しかない……」
「シュウヤ、君は僕が図書館で教えたことの意味を何もわかっていないようだね」
ルリオはうんざりした表情で言った。
「俺がつくりだした偽物の記憶ってことか……?」
「そうだ。偽の記憶だ」
シュウヤは冷ややかに言った。
「じゃあ、いったい何があったんだ……?」
「質問ばかりだな……少しは自分で考えてみなよ……不自然に思えることがらをつなぎ合わせていけば、自ずと真実は見えてくる……」
不自然に思えることがら──。
図書館でシュウヤは、ルリオの記憶は、ある真実を隠蔽するために、創り出された偽の記憶であると話した。
ルリオが指摘した矛盾点とは、屋敷に突如として紛れ込んだシュウヤに、何の対処もしない大人たち、陽が沈んでから家にたどり着いたシュウヤに対して何も言わず、また同じ場所へと遊びに行かせた両親の不可解な行動──。そしてさまよい歩いて偶然たどり着いたこの場所に、翌日、どのようにしてまた遊びにくることができたのか──。
ルリオの言葉を反芻するとたしかに現実的ではないことばかりであった。
さらに今日、シュウヤが自身の体を使って、記憶の一つが偽物であることを証明していた。屋敷は団地から歩いて、偶然、目の前に姿を見せられる場所には存在していなかったのだ。
大人の体を持った、今のシュウヤですら、半日歩き、結局自分の足でたどり着けることなく、力尽きてしまったのだから。幼いシュウヤがたどり着けるはずがない。
だがシュウヤにはこれらが意味する答えを導き出すことができなかった。
「ルリオ、俺にはわからない。頼むから教えてくれ……」
「勝手な男ね」
フウカの声だった。
「自分で蓋を閉めたくせに、開け方がわからなくなったから教えてくれだなんて」
やはりその目は怒りの炎で燃えているように見えた。
シュウヤは耐え切れず目を背ける。
「いいさ、教えてやろう」
ルリオがフウカを制した。
「シュウヤ、簡単なことだ。毎日、この屋敷で遊んだ記憶があり、家に帰り着いた記憶がない。あたりまえだよ。君はこの屋敷に監禁されていたんだから」
「監禁……」
「ああ。帰り着いた記憶などあるはずがない。君はずっとこの屋敷にいたのさ」
「そんなばかな……」
「団地で遊んでいて、さまよい歩いて、この屋敷にたどり着いたというのも、偽りの記憶だ。
君の父親が、君を売り渡しに、直接ここへ連れてきたんだから。父親が自分を売った、という事実を認めたくなかったんだろうね」
ルリオは信じられない言葉を吐いた。
やはり他人事のように思えた。団地にいたころ、金がなく、よく夫婦喧嘩をしていたが、父親も母親もシュウヤに対しては優しかったことを覚えている。まだ若かった両親の、包み込んでくれるような温かい笑顔は今でも覚えていた。
だが屋敷から戻り、団地を出たころから、両親の表情が消えた。どのような表情でシュウヤに接していたのか、今もまだ一緒に住んでいるのに思い出せないのだ。
あれ以来、記憶の中の両親の顔はいつものっぺらぼうだった。
「君は屋敷の中がどんな作りだったか覚えているかい?」
シュウヤの動揺が収まらぬうちに、ルリオは質問をしてきた。
庭で毎日遊んだという記憶はある──。離れで部屋を与えられ、トウコと一緒にいた記憶も残っている──。
だが、大きな窓がいくつもある、豪奢な屋敷の外見は鮮明に思いだせたが、その屋敷の
内側についてはまるで思いだすことができなかった。
「思い出せるはずがないよ。というかそんな記憶あるはずがない。監禁されて奴隷だった君なんかが屋敷の中に入れるはずないじゃないか」
シュウヤはルリオの困惑する様子を楽しんでいるように思えた。
「君は子供だった僕らの遊び相手だった。そして僕らが遊び飽きたら、みすぼらしい離れの小屋に戻らなきゃならなかったんだからね」
屋敷の離れ──。鬱蒼とした林の中に離れはあった。屋敷とは比較にもならないみすぼらしい建物──。それぞれ部屋を与えられていたが、トウコとずっと一緒にいた──。
トウコは、母親と自らのことを屋敷の使用人と呼んでいた。
「じゃあ、トウコも……」
「ああ。そうだ。あいつもあいつの母親も、どこかの馬鹿に売られた奴隷だ」
ルリオの口調はいつのまにか変わっていた。
「奴隷……俺は両親に売られた奴隷だったのか……?」
「ああ。そうだ」
「だけど、奴隷というが、俺は君たちとただ楽しく遊んでいた、という記憶しかない」
「ここまで来るとちょっとした才能だな。どうして、そう自分の都合の良い記憶だけを残して、あとのものは消し去ることができるんだ?」
「どういうことだ……」
「シュウヤは父親の玩具だったんだ。父親は町へ出たときに、君を偶然見つけた。そして、その子供の父親が自分の息のかかっている会社から金を借りていることを知った。だから借金を帳消しにすることを条件として、君を買ったんだ。
僕の父親は、今、思い出しても虫唾が走るほどの変態野郎だった。男女問わずの小児愛好者だった。考えても見なよ。いくら金を持て余して暇だといっても、毎日のように、何時間もいい大人が、子供と遊ぶわけないだろ。
一緒に遊ぶ目的は、汗だくの大好物の子供たちの体に触れるためだ。そうやってあいつは興奮していたんだよ。自分の子供だろうが関係ない。小さな子供だったら見境なしの変態ロリコン野郎だ」
ルリオは吐き捨てるように言った。
「覚えているかい? あいつは俺たちに、季節ごとに何台もある車のタイヤ交換を手伝わせていたのを……」
その記憶はあった。専用の駐車場にぴかぴかの新車が何台も止められていて、ルリオの父親であるキョウイチは、子供たちに、ことあるごとにタイヤの交換を手伝わせていた。あまりにも回数を重ねすぎて、最後のほうは子供たちだけで交換ができるほどになっていた。
「なんであんなことさせたかわかるかい?」
シュウヤはまるでわからず首を振った。
「あの変態は車の下を覗き込ませることで露になったスカートの中身や、太ももを見ながら興奮に打ち震えていたのさ」
そう言われて蘇る記憶があった。
キョウイチはよく鬼ごっこや隠れんぼを子供たちとやりたがった。
自分が鬼になることを喜んでかってでていた。
子供と大人の走力の差は歴然だ。子供の僕たちはすぐにつかまった。
背後から首筋にかかる荒い息づかい。一度、捕まえられるとキョウイチはなかなか離そうとしなかった。その冗談めかした言葉とは反対に、抱きしめる力は強まり、汗だくになった子供の柔肌を体に感じて、キョウイチは絶頂の極みにあったのかもしれない。
気味の悪さに背中が粟立った。
「じゃあ、離れで、ルリオの父親は、トキヨと逢引していたわけじゃなかったのか……」
「トキヨ……ああ、フウカの母親か……あの女とも関係を持っていたとは思うけど、ついででしかないよ。あくまでも、あの変態の目的は、君たちの体さ……」
ルリオの言葉が終わらぬうちに、シュウヤは天井をみた。薄暗い天井は、気のせいか先ほどよりも下がってきているように思えた。
低い天井──。
蘇る記憶があった──。
あのときも二人、手をつなぎ、床に横たわり、低い天井を見上げていた。
キョウイチは離れに現れると、シュウヤとトウコを全裸にし、体の隅々を、ゆっくり時間をかけて執ように弄り回した。キョウイチの荒い息づかいと共に、体の中に入り込んでくるザラザラとした舌の感触が蘇る。
最初は二人とも、キョウイチを懸命に拒否していた。しかし、それが無駄だとわかったころから、頭の中を空っぽにすることを覚えた。自分は感情のもたない人形だと思えれば、少しは楽になれると思ったのだ──。泣き叫んでも決して助けが来ることはなかった。
長い儀式が終わり、キョウイチからようやく解放されると、全裸のまま大の字になりしばらく何も考えずに天井を見上げていた。
だらりと伸びる手に、触れるものがあった。
隣で横たわり同じように天井を見上げるトウコの手だった。
それがこの場所で信じられる唯一の温もりだった。
シュウヤはトウコの手を握った。
トウコは虚脱した表情のまま、変わらず天井を見ていた。
青白く強張った、その頬に一筋の涙が伝った。
──シュウヤたすけて──。
トウコのその手に、ほんの少しの力が込められた。
──助ける。君を必ず助ける。一緒にここから逃げ出そう──。
シュウヤとトウコは、その後、何度も逃げ出そうとした。だが逃げ切ることは叶わず、屋敷の使用人に連れ戻された。そのたびに、キョウイチじきじきのお仕置きが待っていた。
心を殺して耐え続けてきたが限界だった。そのとき、屋敷の庭からだったか、離れからだったかは正確に覚えていないが、ぼんやりと遠くに連なる山の峰々を見ていたことを思い出した。屋敷に監禁されて最初の冬を迎えようとしていた。連なる山の峰々にはうっすら雪化粧が施されていた。
そのときシュウヤの頭の中である計画が閃いたのだった。
「──どうしたんだ? ショックでおかしくなったかな?」
ルリオの声だった。目の前にいるのはルリオと死んだはずのトウコ。
ここは屋敷の地下牢であることを思い出した。
「すべてを思い出したよ」
シュウヤは言った。
「ようやく思い出したのか……自分がやったことを言ってみなよ」
「俺は……君たちを、俺の考えた作戦に巻き込み、君たちの父親であるキョウイチを殺した……」
ルリオもフウカも何も言わなかった。
ただじっとシュウヤを見ていた。
「俺はトウコを助けたかった……。だから一つの作戦を思いついた。キョウイチが雪の積もる峠を越えて、遠出することを俺たちは知っていた。
その数日前、キョウイチは俺たちを使って、一台の車のタイヤを夏タイヤから冬タイヤに変えさせたからだ。その直後、俺は、キョウイチが屋敷にいないタイミングを見計らって、シュウヤとフウカ、トウコに声を掛けた。キョウイチに悪戯を仕掛けよう、と。
君たち二人は不安そうな顔をしたのを覚えている。トウコは何も言わなかった。
俺はいつもの悪戯だから大丈夫、車がちょっとすべってびっくりするだけさ、と君たちを説得し協力させた。そしてキョウイチが屋敷へ戻る前に交換した冬タイヤを、また夏タイヤへ戻すことに成功した。
出発前にタイヤを見られたら気づかれる可能性はあった。だが気づかれなかった。キョウイチは夏タイヤの車で峠を越えようとして、カーブを曲がり切れず、ガードレールを突っ切り、そのまま谷底に落ちて死んだ。ただ一つ大きな計算違いがあったのは、その車にトウコとトウコの母親のトキヨが乗っていたことだ……。
俺はこの手で大切な人を殺してしまったんだ……。トウコはあのとき、どんな気持ちで車に乗っていたのだろうか……。トウコはその車が夏タイヤを履いていたことを知っている。俺のせいにして、キョウイチにそのことを話してもよかったのに……。
そうはしなかった……。俺は大きなショックを受けた。その事実を受け止めきれず、その記憶をまるごと体の奥底に封印した……。そのあとの経緯は思い出せないが、屋敷を出て家に戻り、そこで新聞やニュースで事故の内容を知った。
だが、なぜかキョウイチと、屋敷に残っていたはずのエレナとフウカの三人が死んだことになっていた……これはどういうことなんだ……」
シュウヤは思い出された事実に悄然としながらも、その疑問をぶつけた。
目の前にいるのは間違いなくフウカだった。そうなればシュウヤが思い出した記憶どおり、亡くなったのはトウコということになる。だが、図書館で探し当てた新聞の縮小版の記事にはフウカの名前が載っていたのだ。
「あの計画はたしかに君が考えたものだ。だけどそれを承知で協力したのは自分たちだ。あの父親が死んだことをどうこう言っているわけじゃない。あの男は死んで当然の人間だ。だけど君のことを許せなかったのは、何もかも忘れてしまい、まるで何事もなかったかのように生きていたことだ。僕とフウカは、その報いを受け入れ生き続けている。君もそうしなければならない……」
またさらに胸の奥に暗雲が立ち込める。シュウヤには返す言葉はみつからず、ただ黙ってルリオの言葉を待つことしかできなかった。
「君も知っての通り、僕の祖父はとんでもない金持ちだ。親戚には何人もの政治家がいて、金の力で自分の思うとおりに、国を動かしている。そんな祖父が一番恐れているものが何かわかるかい?」
シュウヤは首を振った。
「スキャンダルだよ。市井の目というのは集まればとてつもなく巨大なものとなり、祖父が積み上げてきたものを簡単に打ち崩してしまう。そんなふうに祖父はひどく醜聞には神経質になっていた。だから父親は、祖父にとって、とても頭の痛い存在だったと言える。祖父は早くから、父の異常な性癖を見抜き、同時に跡取りにすることに対しても、早いうちから見限っていたのだと思う。だからこんな辺鄙なところに大きな屋敷を建ててそこに住まわせ、それでも遊び呆けぬよう、祖父の息のかかった会社だけで形成されていた一つの町の経営を、仕事として任せ、この屋敷から動けないようにしたんだ。
だが困ったことが起きた。父親が事故で死んだ。一人で死んでくれれば良かったものの、二人を道連れにした。同乗していたのは面倒なことに使用人の女と、その娘だった。
この事実が報道されれば大きなスキャンダルになるのは間違いない。だから祖父は早急に手を打った。地元の警察や新聞社に圧力を掛け、亡くなったのは使用人の女と、その娘ではなく、父親の、実の妻と娘である、という形にして、報道させた。
死体はすでに警察によって回収されていた。さすがの祖父もトキヨとトウコの死体を消すことはできなかった。だから僕の母親とフウカは死んだことになった……。
祖父からの一生遊んで暮らせるほどの金の援助はある。だけど二人は一生、屋敷から出ることはできない。祖父の命令は絶対だ。社会に出ることの自由を失ったんだ……生きているが死んでいるのと同じだ……」
とても信じられない話だった。
そうなると自分はキョウイチとトウコ、そしてその母親のトキヨを殺しただけでなく、ルリオの母親のエレナとフウカをこの屋敷に一生閉じ込めてしまう原因を作ってしまったことになる。
ルリオとフウカの言う、自分だけ都合よく忘れてしまって、という言葉の意味をようやく理解できた。
「そのあと俺はいったいどうなったんだ……?」
「僕とフウカはこの計画のことを誰にも話していない。警察の実況見分においても、夏タイヤで峠道を走っていたことに関しては、大きな問題にはならなかったようだ。季節は秋に入ったばかりで、雪が積もっていたのは峠道の山頂付近だけだった。それを知らず、もしくは知っていても、どうにかなるだろう、という父親の単なる準備不足と断定され、やはり事故として処理された。僕らは、このことを絶対の秘密にすることを誓い合った」
「俺は君たちの父親を殺したんだぞ……憎む心はなかったのか……?」
「そんな気持ちなど微塵もなかった。あの男は本当の変態であり、人間の皮を被った悪魔だった。小児性愛者だと言ったろ? 当時の僕もフウカも、君とトウコと同じようなことをあいつにされていた……実の子供だろうが見境なしだ……。だからそのことに関しては感謝しているぐらいだ……だが君は僕らを裏切った」
そう言われたが、シュウヤには何も思い出せるものはなかった。
「やっぱりそのことは思い出せないか……。いや、忘れたふりをしているのか……。
まあ、どっちでもいい。
僕らは事故が起こった直後、君と僕、フウカの三人で約束したんだ。このことは絶対、誰にも話さないと……」
「ちょっと待ってくれ。僕は誰にもそんなこと話していない。そもそもそのこと自体、記憶にないんだから……」
その記憶が戻っていないとして、他人と相容れない自分が、そのような秘密を誰かに話すなどとても考えられなかった。
だがルリオはシュウヤの言葉を無視して話を続けた。
「父親が死に、君は解放された。屋敷の人間が、君を家まで送り届けたんだ。
君は町へ戻ってからの変化に何か気づかなかったか?」
シュウヤの言葉を無視したと思ったら、ルリオは急に質問をぶつけてきた。
シュウヤは考えた。
屋敷から家まで送り届けられたこと。戻ったときの両親の反応などは思い出せない。ただそれからだと思う。両親を含む町の人間たちとの間に、見えない壁が現れたのは。それと変化ということで言えば、それまで団地住まいで、とても裕福とはいえなかった親の羽振りが良くなり、団地を出て、一軒家を建ててそこで暮らしはじめた。それまでは金のことで喧嘩ばかりしていた両親が、急に仲良くなり、金のことで揉めている、という記憶はそれ以後なかった。
記憶の中に黒い影がよぎるのをシュウヤは感じていた。
ルリオはそれに気づいたように、またシュウヤの言葉を待たずに言った。
「急に金回りが良くなっただろう? 実は死んだのは、使用人の二人であることを、君は自分の父親に話したんだ。そして事実を知った君の父親は、それをネタにして、僕の祖父を脅迫した。その事実を公表してほしくなかったら、金を払えと。
祖父にとっては君の父親の存在などゴミ虫みたいなもので消してしまうこともできたが、おそらく事故で警察に圧力をかけた直後に、また問題を起こしたくなかったのだろう。祖父は君の父親に金を払った。祖父にとっては微々たるものでしかないが、君の家族にとっては一生遊んで暮らせる金だ」
シュウヤは驚きのあまり声を出すことができなかった。
だがルリオの話が事実だと考えたら、急に親の金回りがよくなったことも合点がいくのだ。
そしてシュウヤ自身、他者と決して相容れることができない、と感じた理由も──。
シュウヤは屋敷から家に戻ると、両親に事故のことだけではなく、キョウイチの性癖にいたるまで屋敷で経験したことを洗いざらい話したのではないだろうか──。
幼い子供なのだ。オブラートに包むことなく、直接的に話したに違いない。
借金のカタに売りとばしたのだ。ある程度は何をされるか予想していたとはいえ、さすがの両親も大きなショックを受けたことだろう。両親は罪悪感に苛まれ、当て外れの義憤に駆られたのかも知れない。その結果がルリオの祖父への脅迫だったとは考えられないか──。それとも捨てたはずの子供が脅迫のネタを持ってきてくれてただ単純に喜んだのだろうか──。どちらにせよ、ここまでになると通常の親子の関係など再び構築できるはずがない。二人は人の心を捨て、悪事に身を浸すことで手に入れた幸せの上、シュウヤの親という役を演じていただけなのだろうか。たしかに、その状況であればシュウヤが両親に対して絶望的な距離を感じても不思議ではない。
そうなれば今さら、シュウヤに屋敷のことを聞かれても、知らぬ存ぜぬで通すに違いない。
そして町の人間たちもシュウヤの身に何があったかはおおよそ感づいていたのかもしれない。子供が一人忽然と消え、突然、また戻ってきた。その直後、一軒家を建て見違えるほど羽振りがよくなった一家の姿。キョウイチの事故のことは、実際は使用人が死んだということを抜きにして、報道で、町の人間は、皆、知っているはずである。キョウイチの性癖というのも噂になっていたのかもしれない。事故のことと、シュウヤが突然、町へ戻ってきたことについて重ね合わせて考えたのは想像に難くない。
町はかつてキョウイチに支配されていたという。キョウイチの存在をよく思っていない町の人間はたくさんいたのだろう。町は、キョウイチの死を持って、その支配から解放された。シュウヤという生贄をもって──。その罪悪感と後ろめたさの思念が常に、シュウヤに対して向けられていたのではなかろうか──。
それをシュウヤは感じ取っていたのである。そのような状態であれば、皆に、屋敷のことなど聞いても、そんなものは知らないと答えるかもしれない。
そう考えれば、あのやる気のない図書館司書が、なぜあきらかに気づいていたはずのルリオの存在を認めなかったのかわかる気がする。
シュウヤとルリオは他にだれもいないと思い、不用意に屋敷のことを自習室で話していたのだ。
それをあの司書は自習室の外で盗み聞きしていたのだ。
屋敷のことには決して関わってはならない、という暗黙の了解でもあるかもしれない。
関わっては危険に晒されるかもしれない、と恐れた司書は何もかも、ルリオの存在すらも見ていない、と言い張ったのだ。
やはりこの屋敷は、あの町にとって決して触れてはならないものだったのだ。
「俺をどうするつもりだ……?」
シュウヤはルリオの話をいつのまにか事実として受け入れ、自暴自棄ともいえる感情に支配されていた。自分の存在はあの町の人間にとって忘れてしまいたい過去を思い起こさせる、不吉なものでしかない。そう思いはじめていた。
自分はあの町にとって忌み子のような存在なのだと。
「君に協力してもらおうと思ってね」
ルリオが言った。
「協力……?」
「忘れたかい……フウカが小説家を目指していて、あと一歩のところまで来ているということを……」
シュウヤはルリオが図書館で話したことを思い出した。ルリオはフウカに、その事実を伏せて、フウカのゴーストライターをしているのだ。
「フウカは紛れもなく天才なんだ。今、もうあと一歩のところまで来ている。毎回、最終選考までには残っている。だが、フウカはなかなかこの壁を越えられないと悩んでいてね……」
ルリオは心にもないことを言った。
それを引き継ぐように、フウカが話しはじめた。
「私は生きていることを証明したいの。この屋敷に閉じ込められたまま死にたくない。だけど祖父の命令は絶対だわ。その禁を破って逃れることはできない。だけど小説家になってデビューして本を出せれば……そしてその本を読んでくれる人々がいるなら、その人々に私が生きているという証を残せるのよ」
フウカの背後でロウソクが風もないのにゆらりとまた大きく揺れた。フウカの陰影がぐにゃりと歪む。シュウヤは不意に押し寄せる言い知れぬ不安に押しつぶされそうになっていた。
「私は考えたわ……。才能だけでは越えられない壁があるの。それは経験よ。社会に出て他者と交わることで、蓄積される経験というものが私にはまるでないのよ。
私が書いているモノはすべて自分が目にしたものではなくて、頭の中で想像したものでしかない。かといってここを出て一人暮らしをはじめるわけにもいかないわ……」
そう言うとフウカは何がおかしいのか、フフフ、と笑い出した。それは柔らかな感情から芽生える自然な笑顔とは程遠い、体の奥底から黒くどろどろした塊から醸し出されるようなひどく陰にこもった笑い方だった。
「昔、遠い異国の地に高名な怪奇小説家がいたの。その人は女性だった。私と同じように大きな屋敷に住み、一歩も外に出ることなく幼少期を過ごしたの。だけどそのまま社会経験をまったく積まない状態で小説家としてデビューして、いくつもの素晴らしい作品を書き上げたのよ……。
彼女にはたしかに社会経験はなかった。だけどそれをはるかに凌ぐ素晴らしい経験を社会に出ずして、彼女は積むことができた」
すると不意にフウカが右手を上げた。長く細いしなやかな腕が、低い天井の寸前で止まる。途端、ロウソクが風もないのに、ふっ、と消えて闇に包まれた。
どこからか足音がした。それは大股で歩く粗雑な音だった。つぎにガチャリと金属の触れ合う音がした。すると不意にシュウヤの両腕が強い力で押さえつけられた。
ルリオとフウカではない。フウカの命令で、どこからか人が現れ、そいつらが牢の中に入り込んできたのだ。おそらくは二人──。シュウヤの左右に立ち、それぞれが腕を押さえつけ、そのままシュウヤを牢から連れ出そうとしていた。
「な、何をするんだ! どこへ連れていく!」
シュウヤは必死に抵抗するが、物凄い力で抗うことなどできなかった。体は半ば宙に浮いている状態で両腕を持たれ、どこかへと向かっていた。足元に段差がある。階段だ。そのまま階段を上らされる。何段か上った後、またガチャリと音がした。
闇が切り取られた。わずかな光はすぐに大きな長方形へと姿を変える。ドアが開いたのだ。シュウヤはあまりの眩さに目を閉じた。そしてゆっくりと目を開けた。
外だった。眩さの正体は太陽の光だったのだ。
目の前には聳え立つような建物の壁面が見えた。
「ここはどこだ!?」
シュウヤはわけがわからず叫ぶように言った。
「地下室からの階段は二つあってね。今、上ってきたのは直接、館の裏手、外に通じている階段だ」
ルリオの声だった。
気がつくとルリオとフウカが目の前にいた。
思った通り、シュウヤは二人の人間に両脇を固定されていた。
それは二人の大男だった。二人とも禿頭で無表情、色黒で筋骨隆々の半裸の男たちだった。
二人の男はシュウヤを捕まえたまま、また歩き出した。
「な、何をする気だ! やめろ、助けてくれ!」
シュウヤはこの明らかに常軌を逸した状況に、とてつもない恐怖を感じていた。
だれからも必要とされず、自分など生きている価値はない、と自暴自棄になっていたはずなのに、それが一瞬で消し飛ぶほどの恐怖に見舞われた。
こういう状況になり、自分の本当の気持ちをはじめて理解できたのだ。シュウヤは生に執着していた。死にたくないのだ。
二人の男は無言のまま、シュウヤの体を引きずって歩く。館の裏側から正面へと向かう。
背後でフウカの声が聞こえた。
「普通の人間が決して経験できないことを私は経験するのよ。その高名な小説家も、死に直面する人間たちの、生に執着する生々しい姿を見て、それを小説に投影させたの。私も同じような経験を得ることができれば必ず小説家として成功できるはずだわ」
この女はいったい何を言っているのか──。
シュウヤにはまるで理解できない。地の底に落ち行く絶望的な恐怖が体全体を覆い尽くしてゆく。
視界の隅に入るフウカの視線はどこか中空をさまよっていた。
館の側面を通り、そして正面の庭へと向かっていた。大きな庭が見えた。整えられた芝生。十数年前の記憶のままだった。
芝生の上に肌色の何かが見えた。近づくにつれて、それが何かわかった。
それは全裸の人間たちだった。四人いる。両手には手錠、そして右足に黒い鉄の玉をつけて立たされているのだ。
「なんだあれは! いやだいやだ! 死にたくないやめてくれ! たすけてたすけて!
おかあさん! おとうさん! 助けて!」
シュウヤは一心不乱に叫び続けた。
「ようやく五人目がみつかってよかったわ。なかなか死んでもいい人間なんていないのよね。あなたが森へ迷い込んでくれたこと本当に感謝しているのよ。
あなたほど皆から、いなくなることを望まれている人間はいないかもしれないわね。あなたの両親も町の人たちもさぞ喜んでいると思うわ」
フウカは嬉しそうに言う。ルリオも屈託なく笑っている。
「ふざけるな! こんなことが許されると思ってるのか! はなせ! はなせ!」
シュウヤがどれだけ騒ぎたてても、こたえてくれるものは何もなかった。
「あなたも大変だったかもしれないけど。私たちも大変だったのよ。私がこういう目にあってるのも少なからずあなたのせいでもあるのだからあきらめて運命にしたがいなさい」
フウカは笑顔を消し、冷ややかに言った。
シュウヤの左腕を押さえていた男が、ふと手を離した。次の瞬間、足を掛けられ倒される。シュウヤはしたたかに背中を打ち付けた。呼吸ができずのたうちまわる。大男二人はやはり表情を変えず、倒れたままのシュウヤの服に手をかけた。強引に上着を脱がされる。下着も乱暴に脱がされ、全裸にされた。息が整わないうちに強引に立たされる。
両手には手錠が付けられ、右足には鎖がつけられ、その先には黒く重たい鉄の塊がつけられた。
庭に立たされているあの人間たちと同じ姿だった。
また二人の男に促され歩みを進める。
両手を股間にあてがい羞恥心と屈辱に塗れながらシュウヤは足を引きずりながら歩いた。
庭の芝生に足を踏み入れる。一面を短く綺麗に刈り込まれた芝生の先が足裏に刺さる感触があった。
すると異様なモノが目に映った。
芝生の上には、透明なガラス張りの正方形の巨大な箱があった。
透明であるため、遠目では気づけなかったのである。それは全面、透明なガラス張りで、人が住めるのではないか、と思えるほどの大きな箱だった。
箱の前にはシュウヤと同様、全裸の人間四人が並ばされていた。
なぜかシュウヤにはその人間たちの顔がすべてのっぺらぼうに見えた。
「さあ、ゲームをはじめましょう」
背後でフウカの声が聞こえた。
それは希望に満ち溢れる高らかな声音だった。
了
失われた記憶 ほのぼの太郎 @honobonotaro
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