第34話 さりげない優しさ

「はっくしょん!!」

「ん? 沙菜さな、噂されてるんじゃない?」

「ううん、昨日から風邪だよぉ。鼻水、くしゃみと咳が出るの。熱が出ないだけいいんだけどさぁ」

 まったりとした大学のお昼休み。学食で日替わりランチを友人のみどりと2人で食べていた。今日は唐揚げ定食だ。がやがやと、騒ぐ生徒たちもいる。


「大学なっても騒がしい人いるものね……」

「……あ、あの、騒いでる人、元彼」

「そうなの?」


 話をしていると、こちらに気づいた彼が急におとなしく近づいてきた。静かにポロンとのど飴をテーブルに置いて立ち去った。


「……なにあれ。どういうこと」

「”お大事に”って書いてる」

「元彼女にやさしい!」


 沙菜はそっと飴を舐めた。幾分落ち着いた。

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