300文字の世界

もちっぱち

第1話 初めての手繋ぎ

「手、繋いでもいい?」

「あ、うん。いいよ。ちょっと待って……」


 隼也は、ズボンの脇で何度も手を擦った。手汗が気になったらしい。


「拭かなくても気にしないよ」

「一応ね。初めて繋ぐわけだから」

「わきまえておくのは、大事だね」


 亜希菜は、笑顔で隼也の手を受け止めた。初めて繋ぐ手は指先から温かさが伝わってくる。心臓じゃないのに、鼓動まで伝わりそうだった。


「緊張してるの?」


 隼也は、右手で小さな丸を作った。

 亜希菜は頬を赤らめて微笑んだ。


「だよね」

「俺、心臓持たないかも……」

「嘘でしょう?」


 亜希菜は、左手で隼也の胸を触って確かめた。

 あまりにも亜希菜が近くて、隼也は顔を真っ赤にし、フリーズしたまま、動かなくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る