第3話 赤と青

片思いの君は、いつも赤いマフラーをつけていた。

冷たい風が吹く通学路。

対照的な青のダッフルコートを着て

自転車を漕ぐ。

私はぶつかりそうになるのを予測して、

縁石に足を乗せて止まった。


お互い知らない人だと思って、

ぺこりと頭を下げた。


彼は、自転車を颯爽と漕いで去って行った。


何となく、そうじゃないかと思いながら、通り過ぎてから思い出す。


いなくなってからの方が鼓動が早くなる。


声をかければ良かった。


帰宅してから確認のメールすると、

やっぱりあの時会っていた。


一瞬の出来事だったのに、

その時間は切なくて儚くて淡く

シャボン玉のように消えていく。


直接会って話すことが、ものすごく大事だってことをしばらく経ってから知った。

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