マナーを守れゲロカス

白川津 中々

◾️

朝食バイキングバトル大会、開催。


説明しよう。朝食バイキングバトルとは、朝食バイキングのバトルである。

スマートフォンの専用アプリで盛り付けたディッシュを読み取り戦闘力を算出。生成されたバイキング戦士同士のオートバトルにより雌雄を決する。なお、おかずにはそれぞれコストがあり、規定値を超えないよう盛り付けなくてはならない。


というわけでここ、ホテルニュー多治見にて開かれたバイキングバトル。バイキングマン(バイキングバトルをする者)達がゲートインしてスマートフォンを片手に列を作る。さぁ果たして、どのような戦いが見られるのか、注目である。



……



……



……



……誰も取らねぇ。




列が進まない。コストとステータスを比較するせいで中々おかずを決定しないのだ。これには出遅れた後続のバイキングマンもご立腹。「一旦飯食わせろ」とブーイングである。




「ちょっとなにこれ。ゲームしてるの?」


「非常識でしょ。マナーとかご存知ない?」




一般客から納得の非難。そりゃそうだ。この大会は非公式。普通に旅行を楽しんでいる人もいる。バイキングマンはそんな人達の細やかな幸せと喜びを奪っているのだ。許される事ではない。




「ゲームをされている方、出禁でーす。帰ってくださーい」




とうとう会場側からのNG。しかしバイキングマン達はこれに応じず怒りの実力行使。「こっちは寂れたホテルにわざわざ来てやってんだぞ」とサービスを受ける側とは思えない台詞を吐き捨て並べられたおかずを掴み投げるなどの蛮行に及ぶ。おぉ、なんという事だ。せっかくの朝が台無しではないか。マナーを守らないゲロカス人間が、すべてをぶち壊したのだ。会場は散々。泣き出す子供もいる。それでもなお、ゲロカスは散らばったおかずを拾い上げてスマートフォンでパシャリである。正気の沙汰ではない。地獄が、ここに形成されてしまったのだ。



如何なる場所においても、如何なる理由があろうとも、他者の気持ちを鑑みずにエゴを通すなどあってはならない。諸兄諸姉方々はもちろん重々承知である事よくよく理解してはいるが、常々ご留意いただきたい。



なお、ゲロカスどもは公僕に引っ捕らえられ豚箱にぶち込まれた模様。楽しいバイキングは無事再開された。めでたしである。

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