なんでもない日常に今日を見出せたのなら
- ★★★ Excellent!!!
日常。
繰り返される毎日の中でどんなことに日常を感じるかは人によりけり。
もしも、習慣化された行動の中に自分の大切な人の姿があるとしたら、それはなんでもない日常。
すなわち、素敵な日常と呼んでもいいのではないでしょうか。
本を読む彼氏とカレーライスを作る彼女。本作はそんな二人の日常を切り取ったかのような物語です。彼らにとっては何でもない一日のひとつ。日常という言葉に溶けて混ざって纏められるものなのかもしれない。
嗅覚と視覚と聴覚。
文章を追っている内に自然と匂いがし、彼の目を通して見るもの、聞こえるものが鮮明に浮かんでくる感覚がするのです。
淡々とした会話からは二人の仲の良さがひしひしと伝わってきました。無理のない言葉と返答は、ドラマチックに表現された日常の音や匂いを、地に繋ぎ止めているかのようなリアリティを感じます。
最初から最後まで、多幸感に溢れた作品でした。
素晴らしい作品をありがとうございました。