妹の友達がムラムラしている。
ドレミン
第1話 妹の友達がよくやってくる。
うちの妹は大人しくて、心優しい子ではあるのだがちょっと引っ込み思案だ。
かくいう僕もコミュ障でシンプルに友達とか少ないから、あまり人のことはとやかく言えないんだけど、心配してもいるし、あまり心配していない。
量より質といった感じで、妹にはとても仲のいい友達がいる。
数は少ないかもしれないけど、信頼する友達がいるならそれでいいかと思ってる。
それは別にいい。
妹の友達が妹と遊ぶために頻繁に家に来るのも全く構わない。
ただ最近、妙に気になることがある。
僕の勘違いだったらいいんだけど、気にならないわけがないって感じだった。
「お兄さん、こんにちは」
僕の妹の友達の鈴原つかさちゃん。
いつも笑顔が可愛い、優等生然とした女の子だ。
家に来ると笑顔で挨拶してくれて、なんだかんだと会話をすることも多い。人見知りな僕もつかさちゃんとは緊張しないで話せるようになった。
なんたって子供の頃からの付き合いだ。
いわゆる幼馴染ってやつ。
僕にはそれほど深い友達はいないのに妹にはそういう仲良しな子が何人かいる。
「こんにちは。どうぞどうぞ」
「失礼します。みあちゃん、お部屋ですか?」
「うん。ごめんね、迎えにも出てこない妹で」
「いえいえ。こちらこそいつもお世話になってますから」
先に妹が帰ってきて自室で過ごし、つかさちゃんは一旦家に帰って着替えてからうちに来るのがいつの頃からか当たり前になっていた。
ご近所さんだから大した距離じゃないし労力も危険もない。
帰りには僕が送っていくことになっていて、ちょっとした散歩にもならないほど。
妹は普段から部屋に引きこもっていることが多い。
だからか、つかさちゃんが来ると僕が出迎えに行くことが多くて、その件について注意しても妹の行動に改善は見られないのだ。
まあ、僕としてもつかさちゃんと話す時間は嫌じゃないどころか嬉しい。
別にいいっちゃいいんだけど、妹の心配をするから敢えて言ってるわけだが。
なんでか一対一で話す時間があって、おかげで僕とつかさちゃんも仲良くなった。
ただ今まで何も意識せず自然に話してたはずなんだけど、最近少し違う。
前に比べて、つかさちゃんが僕をじっと見つめる時間が増えている気がするのだ。
なんて言えばいいのか。じっくりというのか、じっとりというのか。なんとなく前より熱っぽい視線に感じてしまうのだ。
僕の自意識過剰なのかもしれない。そうだとしたら恥ずかしい、けど、昔と明らかに違う部分がある。
「お、お兄さん。襟直しますね」
学校から帰ってきて、あれこれしてたから着替えがまだだった。でもすぐに着替えるつもりで制服のままでいる。
なのにつかさちゃんは襟を直してくれた。
嬉しいけど「今じゃないなー」って思ってしまって、たまにこういう瞬間がある。
なんて思ってると、つかさちゃんの指が僕の首に触れる。
頸動脈を確認、なんて様子には見えない。
顔を赤くして突然「ふぅ、ふぅ」と息が乱れてる。
こんなことを軽々しく女性に思ってはいけないのかもしれないけど……。
エロい顔してる、なんて思ってしまうのだ。
「あの……つかさちゃん?」
「ふぅ、ふぅ……へ? あっ、はっ⁉ あはは! ごめんなさい私ったら! 制服、もう着替えちゃいますよね! うっかりしてました!」
僕が声をかけるとつかさちゃんがハッとした顔をして、勢いよく離れた。
どうやらやろうと思ってやったわけじゃないらしい。
別に嫌なことをされてるわけじゃないからそれ自体は全然いい。ただ、その姿を見ると良からぬ何かを想像してしまう。
「あはは……ありがとう、直してくれて。でも、そうだね、もう着替えようかな」
「そ、そうですよね! ごめんなさい!」
「ううん、全然。じゃあ僕着替えるから」
「着替え……」
「みあは部屋に、つかさちゃん?」
なんか僕の胸元を睨みつけるみたいに見て固まってしまった。
声をかけると数秒遅れてからつかさちゃんが返事をする。
「あっ⁉ いえ! 大丈夫です! じゃあ、私はみあちゃんの部屋に行きますね!」
「う、うん」
ぎくしゃくした感じで歩き出して、たまにこっちをちらっと見ながら、妹の部屋の前に立ったつかさちゃんはドアをノックする。
返事があってから開けて、入る前に僕に小さく手を振ってくれた。
僕も振り返して、彼女の笑顔を見てからつかさちゃんの姿が部屋の中に消える。
なんというか、うん。
優しくていい子なんだけど、最近たまにそういう、ちょっとした奇行がある。
まあ問題になるほどじゃないし、特に問題視なんかはしてないんだけど。
彼女の指が自分の体に触れたことに、ドキドキせずにはいられない。
妹の友達なのに申し訳ないとは思うが、僕は彼女を意識せずにはいられなかった。
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