第6話 妹の友達は試してくる。

 つかさちゃんが俺の部屋に入ることは度々あった。

 妹に会うために毎日のように家に来てたのだ。そりゃ何かのきっかけで俺の部屋に入ることくらいはあっただろう。


 でも関係が変わってからは、その意味が結構違っている。

 当たり前と言えば当たり前の話。妹はいなくて二人っきり。

 ただでさえ大胆なつかさちゃんがさらに大胆になる。

 彼女は部屋にいる間中、ほぼ常に僕の体に触れているのだった。


 僕の膝の上に乗って、正面から抱き着いてくるつかさちゃん。

 僕の顔は彼女の胸に抱かれていて、もうそれだけで大変なことなのである。


「はるたさん。何色が好きですか?」

「え……何?」


 突然質問をされた。だけど何のための質問なのかはわからない。

 ただよくない予感はしている。


「何色っていうのは……」

「こういうの、なんですけど」


 そう言ってつかさちゃんは、自分のシャツの胸元を引っ張って、その中を覗かせようとし始める。

 反射的に見てしまった。けどこれはちょっと、その。


「見えました?」

「え? あ、いや、なんのことだか……」

「何色でしたか?」

「水色、いやっ」

「ふふふ、見ましたね」


 つかさちゃんはなぜか楽しそうだ。

 これはずいぶん露骨なというか、明らかに誘ってる感じにしか思えなくて。

 しかし隣の部屋には妹がいる。

 おいそれと流されてしまっていいのか悪いのか、複雑なところだ。


 考え過ぎなのか、思わずそれを見てしまったからか、妙に顔が熱い。頭の中がぐるぐる回ってる感じでちょっと混乱してる。

 僕の反応はいつもより遅くなっていただろう。


「はるたさんの好きな色、教えてください……」

「い、いやー、僕は……つかさちゃんは色々似合うから、つかさちゃんが好きな色を着てもらえれば、と」

「ふふふ♡ ありがとうございます。でも、はるたさんに選んでほしいなーって」


 つかさちゃんが僕に抱き着いてきて、僕の胸元に顔を擦り付けてくる。

 可愛い。ちょっと猫みたい。


「どの色が似合うか、見て確かめてみます?」


 またとんでもないことを言い出した。

 この子は僕をどうしたいんだ。

 いやむしろ、どうにかしたいから言ってるのか。正直ちょっと、体の一部が反応せずにはいられないというか……。


「見る、とは」

「そのままの意味です。私の部屋で」

「そうなるとそのー、ちょっと……」

「襲っちゃいそうですか?」


 この子はどうしてそういうことを言うんだ。本当に襲われたらどうする。いや僕が相手じゃ絶対そんな展開ないだろうけど、ヘタレだから。

 それに僕以外の前じゃこんなこと言ったりしないし、そういう展開はきっとないだろうなって安心感はあるんだけども。


「ただ選ぶだけですよ? 見て、確かめて、帰るだけです」


 すごい誘い文句だ。

 そっか、それなら安心だ、って言ってしまいそうになる。


「そっか、それなら安心だ」

「はい♡」


 しまった。言ってしまった。

 巧妙な罠だった……。

 いや、別に僕だって嫌なわけじゃないんだけど、っていうかむしろ望むところって感じなんだけど。だからこそ真摯に向き合わなきゃいけないっていうか、体だけが目的だみたいな最低な奴にはなりたくないわけで。


「今から行きます?」

「えっ⁉ いや、流石にそれは……!」

「それとも、今日は、一着だけ見ますか……?」


 うっとりするような色っぽい声で囁かれて、自分の服を指でくいっとして、隙間から中を見せられる。

 今度はもう目を逸らすことすらできなかった。ばっちり見てしまった。

 あぁもう、こうなったら気遣いがどうとか倫理観とかうるせぇって思ってしまう。


「はるたさんも見せてくれますか?」

「え? 僕のなんて見てもそんな……」

「私は見たいです」


 それはもうアレなんじゃない?

 それはもう、アレでしかないんじゃない?

 ヤバい気はするけどそんな可愛く言われたら……。


「どうですか? はるたさん」


 僕は……細かいことは考えられなくなって、その誘惑には勝てなかった。

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