【最終話】白装束とクーラーボックス。

とことん走り終えたあと、私たちはベンチに座り込んだ。自動販売機の明かりのあるベンチだ。

ここからどうする?と聞くと、私はクビだあとため息をつく。「僕のせい?」と聞くと「僕のおかげ」と答えた。

「せいせいするよまったく、いつ辞めてやろうかって」予想外の返答に驚いた。

すると向こうのほうから車が一台やってきた。

隠れる?と提案したが、

あれはテレビ局ではないと彼女が言った。

車の運転手は白装束Aだった。

まだ彼は白装束を着ている。変わらず私もだが。

「どこにいるかと思ったよ」と彼は窓を開け言った。

とりあえず乗ってと言われたので、私たちは後部座席へ乗った。

「いやほんとうまく行った?みたいで安心したよ」

と彼は車を動かしながら言う。

ありがとうと私は言った。

車を走らせること5分、とりあえずうちに寄ると彼の自宅で止まった。

ちょっと待っててと彼は1分ほどで大きなクーラーボックスを後ろのトランクに入れた。

怪しい。何が入っているのか。

彼はまた運転席に乗り込む、すると白装束B、弟が玄関から出てきた。私はありがとうと声をかけると「絶対幸せになってください」と言われた。私はそれが嬉しく、大きく頷いた。

白装束Aの彼はここから一番近い大きな駅まで送ると言う。ありがたく送ってもらうことにした。

やはり田舎は田舎で、車通りもほど少ない。

私は聞くべきことを聞こうとした。

そう、クーラーボックスの中身である。


私は彼女と目が合い、問いかけた。

「あのクーラーボックスの中身って?」

彼は変わらぬ口ぶりで

「処理に困るものだよ」と言った。

私たちは何か悪い予感がして、

「いいよ、いいよここら辺で」と降りようとした。

「ダメだよダメだよこんな山道で」と言った。

確かにそうだがただならぬ予感がしてやまない。

「じゃあタクシー呼ぶ」

と彼女も言う。「電波繋がらないよ」と彼は言う。

これはやばい。と私たちはだんだん焦り始めていると、「ほら近道」と大きな駅が見えてきた。

ビルとかではない大きな駅だ。

ありがとうと私たちは礼を言う。

いえいえと彼は答える。

車を降りてからはトランクから問題のクーラーボックスを出した。「こんなところで!」と私は声を出してしまった。彼はクーラーボックスを開けた。

「処理に困るんだよ」

中身は大量の麩菓子でした。

「これ食べきれないから持ってって」

私たちは安心して笑い合った。

「殺されるかと思ったよ」と言いながら私たちは再び彼にお礼を言った。

「達者でな」と彼は手を降り、去って行った。

大きなクーラーボックスを抱え、彼女と駅の方へ向かう。警察に2回ほどクーラーボックスの中身を見せた。やはりこんなに怪しいものはない。私は白装束を着たままですし。


あれから私たちは正式に付き合い始めた。

仕事のことはとりあえず二の次で、今はとても楽しい。自由で開放感のある生活の中にいる。

そういえば占い師に言われたのを思い出した。

"あなたはこの数ヶ月甘いものばかり食べる"と。

とりあえずはこの麩菓子を食べ終えてから考えよう。

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断片小説 雛形 絢尊 @kensonhina

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