7話 お風呂

「え?」

「?」

彼女は首をかしげる。俺と彼女は目を合わせてしばらくして、俺は切り出す。

「あのーまだ入ってますが…」

「うん、知ってる」

いや、知ってる、じゃなくて。そういうと彼女は風呂の椅子に座ってシャワーを浴び始めた。腰にタオルを巻いて、彼女の背中を見て考える。

もしかしたら、この世界では一緒に風呂入るのは普通なのかな?

「なに背中ばっかみてんのー」

「あ、すんません」

おれは姿勢を戻してまた浴槽に腰をかける。シャワーの音が気になりながらもおれは天井を見て耽る。彼女がシャワーを浴び終えて、俺の横に座る。

「じゃあ、おれはあがりま…」

「ちょいまち」

立とうとした俺は彼女に腕を掴まれまた座る。

「この機会だし、少し2人で話すこと話そうよ」

「な、なんでですか?」

「これから一緒に住むじゃん?でも君のこと全然知らないしさ、パパとママに言えないんなら私に話しなよ」

「いや…そんな話すことないですよ…」

「え〜そんなことないでしょ。例えばさ…君の過去のこととか」

俺は少しビクッとした。きっと彼女が言ってるのはこの世界でのことだとは思うが、俺からしてみればこの世界に来る前のことかと思わざるをえない。その感情の揺らぎは彼女に見えていたようで、

「いいよ、話して」

彼女は足を立て、俺を見ている。そんなまじまじと見られると言わざるをえないじゃないか。

「えっと、まあ過去のことなんだけどさ…」

おれは天井を見ながら話を続ける。

「正直言うと…なんていうかさ、ぜ、前世の記憶的な?感じでさ…」

「うんうん、それで?」

俺は少し驚いた。こんなことを言ってもそんな献身的に聞いてくれるとは思ってなかった。

「俺…人生楽しめてたのかなって」

「それまた突然」

「まあ、自分語りになるんだけど…。おれ、昔からあんまり人生楽しくないなって感じること多くて」

「友達とかいなかったの?」

「友達は…いたと思う。学校とか休み時間一緒に話してたし、会社とか孤立してたわけではなかったし」

「じゃあ、趣味とか…恋愛というか好きな人とかいなかったの?」

「趣味…そういえばそういうのなかったな。恋愛とかもしたことなかったと思う…。したいこととかなかったし、誰かと付き合うとか…」

自分で考えてもあまりに色のない人生だ。そりゃ、楽しくないのも無理もな…

「うーん、なんかさ、怖がってるんじゃないかな?」

「うん?どいうこと?」

「あ、いやそのね。生きてたらさ、なにかしらしてみたいこととか、なんか気になる人ができたとか、何かしらあると思うのね。なかった?

「やりたいこと‥気になった人か」

おれは学校、職場、家。今まで過ごしてきた場所、どう過ごしてきたかを振り返っていた。

「その感じ、もしかしたら何かあったんじゃない?」

「まあ、なかったわけではないかな…」

「やっぱりあったんだね。きっとその気持ちに嘘ついてたんじゃない?何を気にしてたとかあったとか知らないけど…」

気になってた人、してみたかったことも、あったかもしれない。もしかするとそういうことに本気になることが怖かったのかもしれない。全力でやって失敗したらとか、振られたらとか、そういうことばっか気にしてたせいでなにもやってこなかったのかなと今では思う。

「だとしたら、私もちょっとわかるかも。何かに失敗したらとか、そいうこと考えないことなんてないしね」

「そうだね…」

そういうと彼女は急に立ち上がった。遠くを見ながら言う。

「でもさ」

「うお、びっくりした」

「それはあくまで君の記憶…っていうか前世?か知らないけど、これからは楽しく過ごしてけばいいじゃん!」

「そうは言っても…全力でなんかするって…」

「今日さ君は私を助けてくれたじゃん。それって言い換えれば、私のために全力で戦ってくれた、って言えない?」

そう言う彼女の声は凛々しく、顔はすごく眩しくて俺には直視できない。

「まあさ、過去がどうであれ。君は君、ウルアネルなんだよ。この人生を全力で生きる、何かを恐れずにやりたいことをやってみる。それが君にとって一番いいと思うよ」

彼女のその言葉におれはなんだか少し救われたような、なんだか不思議な気持ちになった。

「そうか…なんかありがとう、ございます」

「なんで敬語?私と年同じなんだしそれに、もう他人じゃないでしょ」

彼女は俺に微笑んで、浴槽から出る。

「そろそろあがろ、のぼせちゃうよ〜」

「うん、そうだな」

「ん!いまなんか楽しそうな顔してる」

「ふっ、なんだそれ」

そうして、おれたちは風呂からでて着替える。

「こっちみないでねー」

「だいじょぶだよ…見ないから。てか同時に上がる必要なくない?」


着替えを済ませた俺たちは脱衣所からでて、自分たちの部屋に戻る。

「ふぅ〜、長く浸かったねー」

彼女はそう言って大きく伸びる。ちらっと服の脇から何かが見えたがおれはそっと目を逸らす。

「な、なんか俺ばっか喋っちゃったな。ごめんな」

「そんなことないよ〜、やっとちゃんと話すことができたんだし、むしろよかったよ」

振り返ってみれば結構無理やり喋らされていたようなきがする。してやられた…のか?まあ、彼女は笑顔だし別にそこはいいか。

「そういえばさ、これからどうするの?」

「どうするって?」

「ウルアネルは私と同じ15だし、学校とか行かないの?」

そうだ。俺は15歳、の設定でいるわけだ。でも、ただでこの家に住まわせてもらうわけにはいかないしな…。

「バイトとかしよかな…」

「え!なんで?」

「いや、俺一応この家に住ませてもらうわけじゃん?ただでいるわけには…って感じかな」

「うーん……」

「なんでそんな考え込む?」

「まあ、この話は一旦明日に持ち込もう!今日はもう眠いし、ふわぁ〜」

それに関しては俺も同意見だ。こうして歩いている間にも彼女はあくびをしてるし、俺自身も結構きている。

そんなこんなで他愛のない話をして、気づけば俺の部屋の前に着いていた。

「じゃあ、また明日、だね」

「ちょ、ちょっとまって」

「ん、どうした?」

「あとちょっとで出そうなんだ」

「え。トイレ行きなよ…」

ちがうそうじゃない。

風呂に入る前に花言葉図鑑をみたおれは少し考えていた、なんなら少し試していた。

「ほい!」

「あれ…これってあの時のツタみたいなやつ?」

「そう…だけど…あと少し、出た!」

そう踏ん張った俺の手からは一本の花が出ていた。

「これって?」

「ピンクのフィローズだってよ。それでこの花言葉なんだけど…」

俺は彼女にこれをあげて向かい合って言う。

「こんな誰かもわからない俺を助けてくれて、ほんとにありがとう。これは俺からの,感謝,…って感じ」

言っていて少し思うが…なんかくさいな。そしておそるおそる彼女の表情をうかがうと、

「よくわかんないけど、ありがとう!じゃあ、おやすみ!」

「あ…おやすみ」

彼女は走って向こうの部屋まで行ってしまった。まあ、少しは伝えれたかな。

「ふわぁ〜、寝るか…」

まだまだ返しきれないけど、これから返していくとしよう。そう決めておれは眠りについた。


自分の部屋について、扉を閉めて私はベットに転がり、渡された花を見あげるようにして見ていた。

「ピンクのフィローズか…、ふふ」

ついつい口角が上がってしまうのを抑えられない。

「おやすみ、ウルアネルくん…」

___________


「死体処理めんどい〜」

「誰のせいだと思ってんだ…」

「だって、こんな簡単に死ぬとは…」

「向こうの連中とは違って、こういう一般人はすぐ死ぬからな」

「そんなに力出してないのに…ん」

「うお、急に止まるなよ」

「なんか来る」

「…わかった、とりま逃げるぞ」

******

「来ないと思って探してみれば…何してんだお前ら」

「…あ、は!す、すいません!」

「何土下座してんの。てかこっち死んでんじゃん」

「この度は…あ、あの」

「まあいいよ。とりま顔あげな。で、なにあった」

「お、女さらったら、男がついてきて。ツタみたいなのが手から出てきて…それでさっき変な男が」

「ふーん、そっか、だいたいわかったからいいや」

「ぐふ……」

「女1人さらえない雑魚はいらねえわ。しかし…手からツタか。能力…エスト学園のやつか。面倒なことになりそうだ…」

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