6話 食事後
「「ごちそうさまでした」」
「あとは、私が片付けておきますのでみなさまは先にお戻りください」
「ありがとうございます」
俺はお礼を言って、彼女とご両親と部屋を出た。
両親は俺らの前を歩いている。少し部屋を出て歩いてから、俺の前を行くパーネルさんが振り返って言ってきた。
「部屋はそのまま使っていいからね」
「ありがとうございます」
「それじゃ、おやすみ」
両親の部屋が俺と彼女とは反対方向らしく階段を上がって二手に分かれた。
「う〜〜ん!疲れたね〜」
そう言うと彼女は体を伸ばして脱力する。
「そうだね…」
確かにこの世界に来ていろんなことがあった1日目で彼女に助けられて、2日目で家に迎え入れられる。すごい急展開にまだまだ追いついてないのが本音だ。
「さっきパパとママ腕組んでたし、私たちも組む?」
突然彼女は俺を覗き込んでからかうように聞いてくる。
「いや、いいです」
「ふーん、つれないねー」
少しびっくりしておれは彼女から一歩離れて歩く。そうして歩くうちに俺の部屋の前に着いた。
「そいえばお風呂入った?」
「え、に、臭いますか?」
「いやいや、色々あったしまだ入ってないかなって思ってね。早めに入っちゃいなよ」
そう言って彼女は向こうまで歩いて行った。俺は自分の部屋に入って、お風呂の準備をする。少し気になった俺は自分の匂いを嗅ぐ。
「臭ってない…よな?」
準備してから気づいたが今日パジャマで外にでていたせいで、これ以外のパジャマらしきものが見当たらない。
「スリスさんに聞きに行くか」
部屋を出てさっきの道をもう一度歩く。夜になってすっかり静けさが漂っていて、広いこともあり修学旅行のホテルで就寝時間に出歩いてる気分になる。学生の頃そんなことしてなかった、というよりしようとも思わなかったけど。そう思いながらさっきの部屋に付いた
「す、スリスさんいますか…」
扉を開けたが、スリスさんはいなかった。少し音が聞こえてくる方向を見ると。もう一個部屋の中に扉があることに気づいた。ゆっくり開けて入ると、
「ウルアネルさん、なぜここに?」
食器を洗っているスリスさんがいた。シンクには食器がかなり多くあった。
「えっと、手伝いますよおれ」
「別にいいですよ気を遣わなくても。4人分の食器ぐらい造作もありません」
「いや、手伝わせてください」
この家に少しは借りというものを返さねばならないし。思いが通ったのか、
「じゃあ、こっち側の食器をお願いします」
スリスさんはそういうと俺にスポンジを渡して指示をくれた。静かになり食器が当たる音しかしなくなってきて、おれは気になったことを聞いてみた。
「スリスさんはまだご飯食べてないんですか?」
「そうですね、ポーメ様たちのご飯を作って食器を洗ってから作るので」
「メイドって…大変ですか?」
「…そうですね、大変ではあります」
それはそうだろう。この広さの家に恐らくスリスさん以外のメイドはいなさそうだしなんとなく察しはついてしまう。
「ですが、それ以上にこの家に迎え入れてくれた恩もありますから。あなたもそうなのでは?」
見抜かれていたようだ。スリスさんはおれの顔を見てくる。
「そういえば、助けてもらったって言ってましたね」
「はい。私もあなたも助けてもらったどうしですね」
スリスさんはそう言うと少し笑った。スリスさんの笑った顔初めて見た気がする。
「な、なんですかそんなまじまじと見て」
「あ、すいません」
「 そういえば、なぜここにきたのですか?皿洗いの手伝いをしにきたようには見えなかったですけど」
そういえば肝心の聞きたかったこと聞いてなかった。
「パジャマ、というより着替えはどこかなって聞きにきたんです」
「それだったら、タンスの中のズボンと服着てしまって大丈夫ですよ」
「あ、ありがとうございます」
気づけば食器もすべて洗い終わっていた。置き場には綺麗に並べられているのを見て、几帳面さに驚かされる。
「わたしはこれから自分のを作りますが、食べますか?まだ食べれるならですけど」
「お腹はいっぱいなので、大丈夫です。それじゃあ、おれはこれで」
「わかりました、ありがとうございます、助かりました。それと、お風呂入っちゃってくださいね」
そういうとスリスさんは準備をし始めた。おれは部屋から出ようとしたその時、スリスさんが大きな袋をか両手ひとつずつ軽々しくもっていた。どう見ても、すごい重そうなのはわかる。メイドってこんなに力必要な職業なのかと思いながら部屋を出た。部屋を出た俺はまた自分の臭いを嗅ぐ。
「やっぱ俺臭ってる…?」
自分の部屋に戻って着替えの準備を用意してお風呂に向かう。いまだに慣れない広さの家に多少迷いそうになって着いたおれは服を脱いで、扉を開ける。やはりまだこの広さというより解放感のあるお風呂には慣れない。
「シャワーがきもちぃ〜」
頭を洗い、体を洗い風呂につかる。今日はほんとに色々あった。パンを食べたり、服を見たり、彼女を助けたり。はちゃめちゃではあった。だがそれ以上に少し楽しかった日ではあった。今までに感じたことのない感覚というのかな。そう思いながら浴槽に腰掛けていると、お風呂の扉が開いた。
「ん、だれって…え!」
「よっ、さっきぶり」
そこにはタオルを巻いた彼女が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます