第7話 クリティカル・コンボ
親ベヒーモスが山頂に近づくと、クリア報酬の子ベヒーモスは山を下って逃げていった。
そして親ベヒーモスは巨体を#揺__ゆ__#らしながら岩山の山頂にやってくると、それを見た虎一郎はニヤリと笑って#呟__つぶや__#いた。
「ほう、熊の#倍__ばい__#はあろうか。見上げる大きさよ」
ベヒーモスは虎一郎と少し距離を取って立ち止まると、カイトたちは後ろに下がっていった。
「や、やばいデカい」
「ほんとだね」
「強そうだ……」
#愛芽__めめ__#は虎一郎の後ろに立つと、防御魔法陣の準備をした。
ブモォォオオオオオオ!!!
ベヒーモスは虎一郎を#睨__にら__#みつけながら#咆哮__ほうこう__#をすると、突然虎一郎めがけて爪で襲いかかってきた。
ブンッ ブンッ!
スッ……
しかし虎一郎は攻撃を流れるようにかわすと、体勢低くベヒーモスの#懐__ふところ__#へ大きく#踏__ふ__#み#込__こ__#んだ。
ザッ バンッ!
そして地を#這__は__#うような下段の構えから、美しい姿勢で刀を振り上げた。
「ぃやぁああ!!」
ズバンッ!
『クリティカル! +20%』
虎一郎はそのまま体を横に回転させながらベヒーモスの横へと抜け出し、構えを変えた。
ザッ ザザッ!
そして素早く後ろに下がりながら突きで追い打ちを食らわせた。
ドスッ!
『クリティカル! 2コンボ +40%』
ブモォォオオオオ!!!
虎一郎の攻撃を受けたベヒーモスは2本足で立ち上がると、なんと虎一郎を押しつぶそうとプレス攻撃を仕掛けてきた。
ドスゥゥゥン!!
しかし虎一郎はベヒーモスのプレス攻撃を大きく円を描くように美しく#避__よ__#けると、ベヒーモスの腕に#二連撃__にれんげき__#を食らわせた。
「ぃやぁああ!」
ズバ ズバッ!
『クリティカル! 3コンボ +80%』
『クリティカル! 4コンボ +160%』
ズザザザッ
「やばっ! コイちゃん、すごい!!」
#愛芽__めめ__#は虎一郎の戦いぶりを見て声をあげると、カイトたちも思わず声をあげた。
「クリティカル4コンボで攻撃力160%増し!?」
「虎一郎さん、すごい!」
「ご、誤差3%で全てクリティカルなんて……、凄すぎる!」
虎一郎は刀を構え直して静かに息を吐くと、ゆっくりとベヒーモスに近づいていった。
「コイちゃん、ベヒーモスまだ全然体力あるから#油断__ゆだん__#しないで!」
「そうであったか。では次は本気でいかせてもらおう」
虎一郎がそう言った瞬間、なんとベヒーモスの体が青く光りだした。
バリバリバリバリバリ
「あっ! コイちゃん、危ない! ベヒーモスの#雷攻撃__かみなりこうげき__#が来るよ!」
「#雷__かみなり__#!?」
ベヒーモスは再び二本足で立ち上がると、空に#雷雲__かみなりぐも__#を呼び寄せた。
ブモォォオオオオ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
ブゥーン
「コイちゃん、わたしの魔法陣の下に来て! これで防ぐから!」
#愛芽__めめ__#は慌てて虎一郎の頭上に防御魔法陣を展開すると、カイトたちも下に入るように言った。
「みんなも防御魔法陣の下に!!」
「「はい!」」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
しかし#愛芽__めめ__#はどんどん広がってゆく雷雲を見ながら呟いた。
「え……、雷雲が大きすぎる……。やばい、防ぎきれないかも……」
ダダッ!
それを聞いた虎一郎は防御魔法陣の下から走り出ると、#猛然__もうぜん__#とベヒーモスへ向かっていった。
「#愛芽__めめ__#殿、#皆__みな__#を頼む! #先手必勝__せんてひっしょう__#!」
「え、あ、コイちゃん!!」
#愛芽__めめ__#が声をあげた瞬間、雷雲から#沢山__たくさん__#の#稲妻__いなずま__#が襲いかかってきた。
パァーン! パァーン! パァーン! パァーン! パァーン!
「「わーーー!!!」」
#愛芽__めめ__#たちは必死に防御魔法陣の下で身をかがめたが、虎一郎は軽やかに稲妻をかわしながらベヒーモスに#迫__せま__#っていった。
ザッ ザザッ ザザッ
「このような子供だまし、私には#通用__つうよう__#せぬぞ!」
虎一郎はベヒーモスにそう叫ぶと、力強く地面を蹴って飛び上がり、体ごと斜めに回転させて刀を振り下ろした。
「ぃやぁあ!!」
ズバンッ!!
『クリティカル! 5コンボ +320%』
『部位破壊 +25%』
ザザッ ザッ!
虎一郎は着地すると、#電光石火__でんこうせっか__#のごとき速さでベヒーモスの右腕に突きを放った。
「ふんっ!」
ズドッ!
『クリティカル! 6コンボ +640%』
そして体を#翻__ひるがえ__#すと、地を這うような刃筋でベヒーモスの左腕を斬りつけた。
「ぃやぁぁあああ!」
ズバッ!
『クリティカル! 7コンボ +1280%』
『部位破壊 +50%』
ザッ ザザッ!
そして虎一郎は跳ねるように後ろへ下がると、ベヒーモスは静かに地面に伏せた。
『Lv9になりました』
『ベヒーモスは仲間になりたそうにこちらを見ている。(仲間にする・逃がす)』
「おお、これが言っておったやつか。ふむ、『仲間にする』で良いのだな」
虎一郎は「仲間にする」を選択すると、ベヒーモスは大人しく立ち上がった。
「#愛芽__めめ__#殿、#暴__あばれ__#れ#牛__うし__#を#手懐__てなず__#け#申__もう__#したぞ!」
シーン……
「#愛芽__めめ__#……、殿……?」
虎一郎が振り返ると山頂には誰も居なかった。
その頃、#愛芽__めめ__#は自分のプライベード・エリアの家にリスポーン(復活)していた。
「いたたたた……。やられちゃった……」
#愛芽__めめ__#とカイトたちはベヒーモスとの戦いで、稲妻に倒されてしまっていたのだった。
#愛芽__めめ__#はベッドから起き上がると、ため息を付いて#呟__つぶ__#いた。
「はぁ……。きっと、コイちゃんも倒されちゃったよね……。コイちゃんのプライベード・エリアに行かなくちゃ」
#愛芽__めめ__#は家から出てパブリックエリアへ行くと、転移魔法を使ってピンデチの街の近くへと転移していった。
◆
ブゥゥン
#愛芽__めめ__#は、虎一郎のプライベートエリアの近くに転移してきて中へ入ったが、虎一郎は見当たらなかった。
「山には誰も居ないなぁ……。コイちゃん、家で落ち込んでたりしてないよね……」
#愛芽__めめ__#は心配そうな表情を浮かべながら、ゆっくりと山を登って虎一郎の家へと向かった。
◆
その頃、虎一郎はベヒーモスの頭に牛のように縄をかけ、ベヒーモスを引きながら岩山を下っていた。
「ははは、#手懐__てなず__#けてしまえば体格に似合わず大人しくて良い子だな」
「ブモッ」
「ん? そういえば……」
虎一郎は何かを思いつくと、足を止めてベヒーモスの腹を下から#覗__のぞ__#き込んだ。
「おお、お#主__ぬし__#はメスであったか。#乳__ちち__#が出るな。これはいい」
「モォォ?」
虎一郎はベヒーモスの頭を撫でると、再び山道を歩き始めた。
「これは素晴らしい牛を手に入れた。……それにしても#愛芽__めめ__#殿はどこへ行ってしまったのだろうか。先に帰っていれば良いのだが」
虎一郎はしばらく歩いて平地に戻ってくると、モービルの窓から見ていた#景色__けしき__#を思い出しながらピンデチの街へと向かった。
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