第3話 虎一郎、街へゆく
『パブリック・エリアに入りました』
「ん?
「あ、パブリック・エリアね」
「……?」
「さっきの山はコイちゃんのプライベード・エリアだから、コイちゃんとフレンド、あと社員しか入れないんだけど、この先は他の人も居るんだ」
「う……、うむ」
虎一郎は良くわからなかったが、とりあえず返事をした。
「ほら、見える? あれがピンデチの街だよ。始まりの街で一番大きな街なんだ」
虎一郎は目を
「なんと! 今まで見たどの城下町よりも大きいではないか!
「
「なるほど、殿様の居ない
「じょうかまち? なんか良くわからないけど、とりあえず行ってみようよ」
「うむ、そうであるな」
―― ピンデチの街 ――
虎一郎は見慣れない街並みと沢山の人々に驚きながら歩いていた。
「
「
「それに、この街の人々は
「まぁ、ゲームの中だしね。普段は仕事とかで大変な人も沢山いると思うよ」
「げーむの中?」
「え、うん。……あ、あの建物にトレーニングルームがあるんだ。行こう」
「なんと、石造りの巨大な建物とは!」
「え、そんなに驚く?」
「い、いや、私の時代は木造りの建物しか無かったのでな。石は城の石垣にしか使えぬほどの
「へぇぇ」
「なんと立派な……。
「もちろんだよ。だってトレーニングルームだもん。こっちこっち」
「コイちゃん、あの人形で試し斬りしてみて。もし大丈夫そうだったらロボット相手に……」
「おぉ、この人形を斬っても良いのだな。父上と一緒に
「ははは、コイちゃん嬉しそうだね」
「うむ。父上と稽古したのが懐かしくてな」
虎一郎は刀を抜いて構えると、
「ぃやぁっ!」
バス、バスッ
虎一郎は
「
「コイちゃん、すごい! 人形のHPけっこう減ったよ」
「「はははは」」
虎一郎が不思議そうな顔で3人を見ると、3人のうちの男性プレイヤーが虎一郎に話しかけてきた。
「お兄さん。刀、反対に持ってるよ」
「うむ、
「え、本気で言ってます? その人形はそんな簡単に切れないっすよ。ははは」
「ほう、そうであったか。これは
虎一郎は
スゥゥゥ……
「ぃやぁっ!」
バンッ シュピン!!
虎一郎は目にも
スゥゥ カチャ
ズ…… ズズズズズ…… ズシャッ!
すると人形は見事に真っ二つになって地面に転がり、それを見ていた3人の表情は一気に驚きの表情に変わった。
「は……、速ぇぇ」
「うそ……」
「え、ええっ?」
すると虎一郎は地面に転がった人形を拾い上げながら3人に言った。
「切れてしまったではないか」
「い、いや、お兄さんが普通じゃないって……」
シュゥゥウウ……
その時、虎一郎が抱えていた人形が消滅していった。
「人形が……」
それを見た
「コイちゃん、この世界だとプレイヤーも含めてHP、あ、命の棒が無くなると消滅して復活するんだよ」
「復活?」
「うん、ほら人形見てみて」
「なっ! 人形が!」
虎一郎が切った人形は元通りに戻っていた。
「あたしたちはプレイヤーだから、命の棒が無くなると自分のプライベート・エリアに戻されて復活するんだ」
「なんと。では私は命の棒が無くなったらどうなるのだ」
「えっと、たぶん、家に戻るんじゃないかなぁ」
「それはまさか……、不死身という事なのか」
「うん、この世界ならね」
「なんと! それほどまでに
「うん。モンスターも昔は死んでたみたいなんだけど、今は命の棒が少なくなったら逃げ出すか、仲間になるよ」
「ええと、その……。すまぬ、
「あ、そっか、ごめんコイちゃん。モンスターってね、襲いかかってくる……、動物? あ、コイちゃんの時代だと妖怪とか?」
「なんと、モノノケの
「えっと、そんな感じかな。たぶん」
虎一郎と
「お兄さん、さっきはすみません……。あの、すごく強そうなんで、良かったら一緒にパーティー組んでくれませんか? 攻略したいクエストがあるんです」
「???」
虎一郎がよく分からないでいると、
「コイちゃん、それいいかも! この世界に慣れるのにちょうどイイよ。クエストに行こう!」
「う、うむ。百聞は一見にしかずと言うからな。この国の事は早く知らねばならぬ」
「じゃあ、2階のギルドで登録するね」
「ぎるど?」
「うん。ギルドで登録を済ませるとクエストを受ける事ができるんだ」
「?」
「いいから、いいから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。