第2話 クワ振る武士
―― 翌朝 ――
ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ
「畑を耕すなど子供の頃ぶりか。しかし、
ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ
「500年後に刀ではなくクワを
ザッ ザッ ザッ ドッ
虎一郎はブツブツと
「
するとその時、遠くから虎一郎を呼ぶ女性の声が聞こえた。
「こいちろーさんですかー?」
虎一郎は声のするほうを見ると1人の若い女性立っていた。
「そうだ、虎一郎だ!!」
虎一郎はクワを置いて大声で返事をすると、若い女性は虎一郎のところへ駆け寄ってきた。
タッタッタッタッタ
「はじめまして、虎一郎さん! あたし、このゲームのメーカー、株式会社イグラァ
「お、おお。わ、私は
「将軍様!?」
「うむ。お付きの者がカイチョウと呼んでいた将軍様だ」
「あ、会長さんか! でもまぁ、将軍みたいなものか。ははは」
「お、お主、将軍様を笑い飛ばすとは……。しかも、その美しい着物と清潔な髪……。もしや、位の高い
「姫? え、あたしが? ははは、そんなわけないって」
「違うのか?
「あたしは会長……、えっと将軍さんから虎一郎さんのお世話をするように頼まれたんだ」
「なっ!
「うん、そうだよ。あたしにしか出来ないって言ってくれて。へへへ」
それを聞いた虎一郎は
「将軍様に
「え、ちょ、ちょっと! 土下座?? 待って待って!」
「あたし普通のOLだし、土下座はやめてよ、コイちゃん」
「コイちゃん?」
「あ、あだ名ね。コイチロウって長いじゃない?」
「そうか……。500年も経つと
「え、なに?」
「いや、すまぬ。こちらの話だ。それでは宜しくお願いつかまつる、
「おっけー、よろしくねコイちゃん。そういえば、何か困ってること無い?」
「……ふむ。困っていると言えば、今の季節が分からぬのだ。今は春であろうか」
「え、季節? この世界に季節ってあったっけ? ……えっと、いつも春……かな?」
「なんと!」
「天気は変わるけど、そんなに大雨降ったり嵐になったりもしないかな。エリアにもよるけどね」
「それは
「うん。それより、この畑ってコイちゃんが
「うむ。家の前に農具が置いてあってな。朝から耕しているのだ」
「え、すごい! 1人でやったんだよね?」
「そうであるが……」
「なんだ全然動けるじゃん。ちょっと待ってね」
すると突然、虎一郎の視界に文字や図形が現れた。
「な、なんだこれは」
虎一郎は突然現れた文字や図形を掴もうとした。
ブン ブンブン
「ん? 手で
「コイちゃん、今視界に表示されたのはインターフェイスって言うんだ」
「いんたー、ふぇいすぅ?」
「うん。右上にアイテム
「……うむ、
「あ、そっか。矢口さんが現代日本語ファイルは入れたって言ってたけど、英語は読めないよね……。ちょっと待って」
『はい、矢口です』
「あ、高橋です。虎一郎さんアイテムとかは分かるみたいなんですけど、英語読めないみたいで。HPとかMPとかって日本語に変えられます?」
『あ、英語ファイル入れるの忘れてた! 言語ファイルを現代語に近づけるのに必死で……。ごめん、いま変えるね』
「おねがいしまーす」
すると虎一郎の視界にあった英字が日本語に変換された。
「おお! なるほどなるほど。……
「えっと、たぶんHPの事だよね。その棒がコイちゃんの命で、無くなったら死んじゃうんだ」
「なんと、寿命が見えるのか」
「えっと寿命っていうか、攻撃されたら減って、なくなると死んじゃうんだよね」
「ほう。
「あ、それそれ! コイちゃん頭いい!」
「では、命の下にある
「たぶんMPだから、魔法を……、ってコイちゃん刀使うんだよね」
「私は武士であるからな」
「じゃあ関係ないか」
「
「え、ヤトウ屋さん族? ちょっとそれは分からないけど、モンスターとか悪い人もいるから……」
「そうか。
「そうそう。じゃあ、とりあえずトレーニングルームに行ってみない? 戦闘のやり方を教えるように言われてるんだ。刀持ってきてもらっていい?」
「うむ、承知した」
タッタッタッタッタッタッ
虎一郎は家に刀を取りに行った。
「やっぱ昔の人って
タッタッタッタッタッタッ
「
「わぁ、その刀かっこいいね」
「
スッ……
虎一郎は刀を腰に
そして刀を
「え、うそ。コイちゃん、すっごいカッコイイ! 刀持つと変わるね!」
それを聞いた虎一郎は顔を赤くして恥ずかしがると、刀を
「な、何をおっしゃるのだ
「あ、うん。そうそうトレーニングルームね。山を下って街に行くから付いてきて」
「うむ、承知した」
こうして虎一郎は
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