第8話 愛芽、虎一郎を探す
―― 虎一郎の家 ――
「コイちゃーん、あたしー。いるー?」
「寝ちゃったのかな」
するとその時、
「あ、矢口さんだ」
「矢口さん、何かありました?」
『あ、A4480がベヒーモスつれて歩いているってツイッタグラムに投稿されてるんだけど、バグじゃないよね?』
「えっ! コイちゃんが!?」
『このショートビデオなんだけど』
ポーン
5秒くらいのビデオには、ベヒーモスをつれて歩いている虎一郎と撮影した人たちの声が入っていた。
…ー あの人、牛みたいにベヒーモス引いてるんだけど! ー…
…ー ほんとだ! でもなんで引いてるんだろう。散歩? やば! ー…
ビデオを見終えた
「矢口さん、間違いないです。さっきクエストでベヒーモスと戦ったんです。コイちゃん勝ったんだ……」
『え、A4480ベヒーモスに勝ったの!? え、あ、そんなことより、このビデオの背景見て場所ってわかるかな』
「これ岩山ですよね……、なんとなく分かります……。たぶん」
『A4480には
「あ、そうなんですね。じゃあ、あたしも探しに行きますね」
『ごめんね、また私のミスなんだ……』
「いえいえ大丈夫ですよ。何かあったら連絡しますね」
『すまないね、よろしく頼むよ……』
「…………。やっぱ出ないか。ボイスチャット教えてないもんね……」
―― 株式会社イグラア
コンコン
「はい」
「専務の鶴井田だ」
「はい、お入りください」
ガチャッ
鶴井田が秘書室に入ると、鶴井田の娘の
娘の
「ごめんなさい、専務と重要な話があるの。先にお昼に行ってもらっても良いかしら」
「はい、
「ありがとう。あとでお礼するわね」
「いえいえ、そんな。ではお先にお昼に行ってきますね」
「うふふ。いってらっしゃい」
後輩の女子社員はノートパソコンを閉じると、席を立って秘書室から出ていった。
「お父様。A4480様のお世話役の件、どうですの?」
「あ、ああ……、すまん。やはり
「なんで? ぜんっぜん分からない! なんで私みたいな適任がいるのに庶務課にやらせるのかしら?」
「そ、そうだな。わたしもそう言ったんだが……」
「こんなチャンス、
「ああ、わかっているよ
「もう! お父様、ぜんぜん頼りにならない!」
「ごめんよ
「情報?」
「え、お父様、何?」
「ちょっと再生してみてくれ」
「あっ、A4480様! この
「あの……、
「行方不明ですって!?」
「
「どこって、ピンデチの岩山ですわ」
「もしかしたら、
ガタッ!
「それだわ、お父様! 天才!!」
「お昼休みを取って、ちょっと行ってきますわ! お父様はお留守番を!」
「え、ええ!? 秘書課で私が!?」
「何かあったらボイスチャットお願いしますわね!」
「お、おい!」
バタン!
◆
その頃、虎一郎はピンデチに向かって
「このあたりは暑いが、不快ではないな」
「モォオ」
「そうかそうか、お
虎一郎はベヒーモスの頭を撫でると、ベヒーモスは嬉しそうに頭を下げた。
「そうだ、お主に名を付けよう。お主はメスであったな……、では『お
「モォオ」
「はっはっは、そうかそうか。ではお菊にしよう。これからは畑仕事を頼むぞ、お菊」
「モォォオオ」
お菊は嬉しそうに鳴くと、頭を虎一郎に
「はっはっは、名前を気に入ったようだな」
虎一郎はお菊の頭を撫でると、再びピンデチに向かって歩きだした。
ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ
「それにしても、生き物が死なぬ時代が来るとは。しかも目の前に文字まで現れる」
ブン ブンブン
虎一郎はHPやMPのなどのインターフェイスを触ろうとしたが、やはり触ることが出来なかった。
「やはり
スゥゥッ……
ザザッ!
虎一郎は背後から刀を引き抜く音が聞こえると、瞬時に刀に手をかけて距離を取るように振り返った。
ブンッ
すると、
「やー!」
「甘い!」
虎一郎は声をあげると、低い体勢から素早く
「ぃやぁあ!!」
シュピン!
『クリティカル! +20%』
ズザァ
「く、くそっ!」
忍者は素早く立ち上がると、虎一郎に
ボンッ!
「はっ! これで何も見えないだろう!」
「
ドガッ!
虎一郎は一歩踏み込むと、前蹴りで忍者を吹き飛ばした。
ズシャァ……
「な……、なぜ見えた……」
「煙に隠れても声を出しては場所が知れるであろう」
「あ、そっか……。はは」
シュゥゥゥウウウ
吹き飛ばされた忍者はHPが無くなって消滅すると、どこからともなく忍者が集まってきた。
シュタッ シュタタッ シュタッ シュタッ
そして、ひときわ筋肉質で大柄な忍者が前に出ると、虎一郎に言った。
「おれはコスギ。確かに君はストロングそうだが、ベヒーモスが
「待機状態?」
「……ほう。もしかして仲間にしたモンスターの使い方を知らないのか……。これはチャンス……」
「何をブツブツ言っておる。お主の言っている事は良くわからぬが、敵だということは分かる。戦いたいのならば相手になるぞ」
コスギはそれを聞くとニヤリと笑った。
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