第11話 アイドルの悩み

 三浦蓮、本山冬夜に続き、今度は木野慎太郎だ。

 まさか、モテ期…?

 このタイミングでモテ期が来たの…?!

 もしくは、転生後の私の見た目があまりにも男子ウケしている可能性もある。正直、今度はどんな迫られ方をするのかドキドキしている自分がいた。


 事務所の打ち合わせ室に入ると、木野慎太郎は私に向かい合った。


 「こんなこと本当は言うべきじゃないんだけど、三森さんに知っておいてほしいんだ。俺さ…」


 …まさかの告白?

 アイドルとマネージャーの恋愛はできないけど、気持ちだけは知っていてほしいパターン?!

 あれ、どうしよう。告白ってどうやって断ればいいんだっけ…。というか、そもそも断る必要ってある?!


 「飲み会が苦痛なんだよね…」


 …え?


 「会社の人に誘われて、よく他の会社の社長とご飯を食べに行くんだけど、結構辛いんだ…」


 …本当に相談だった。


 「ごめんね、三森さんにこんなこと言っても仕方ないのに。でもなんか話しやすいというか…俺らのマネージャーに知っててもらいたかったんだ。相談というか、これって愚痴だね。でも、こうやって知っていてくれる人がいるだけで、なんかちょっと気が楽になる」


 しばしの放心からようやく意識を取り戻す。

 彼は本当に私に言いたかっただけのようで、「それじゃあ」と言って部屋を出ようとした。


 「待ってください!」


 木野慎太郎が、驚いてこっちを振り返る。

 …恥ずかしさを感じている場合でない。私は、私に今できることをやらなければ。


 転移してきた理由をもう一度考える。前世では、私も同じような悩みを抱えていたこともある。仕事にいい影響が出るのか出ないのかわからないような、とりあえず集まることだけを目的とした飲み会。

 関係性づくりとはいえ、本人が苦痛と感じていることを続けさせるわけにはいかない。

 私は、「プラネット・ファイブ」のメンバーのためにこの世界にきたんだ。

 何かを終わらせ、何かを始めるために。

 今回は、終わらせるべきだ。


 「その話、詳しく聞かせてください」



 「会社の上層部の人たちが、木野さんを誘って頻繁に飲み会を開いているというのは本当ですか?」

 「またお前か…」


 社長が呆れた顔でため息をつく。昼食とも夕食ともつかない時間に、出前の豚丼をかきこんでいるところだった。


 「ああ、そうだよ。営業だよ、営業。メンバーのやつらだってウチの社員なんだから、やって当然だろ」

 「申し訳ないのですが、スケジュールが空いていないので、今後は私の管理下に置いてお断りさせていただこうと思っています。社長にもご認識を合わせてくださいますよう、お願いいたします」

 「おい、勝手に決めんな。それでどれだけ仕事がなくなると思ってる」

 「仕事は私が取ってきます」


 「失礼します」とお辞儀をして、社長室を出た。

 大口をたたいてしまった。後には引けない。


 でも営業なんてやったことないから、どうしよう…。急に弱気な気持ちになってしまい、その場に座り込む。


 もう一度、世界征服のことを考える。彼らが征服してしまえば、世の中を変えることができる。望まないことであふれている現実を変えることができる。


 やるしかない。

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人気アイドルグループのマネージャーに転移したけど、恋愛そっちのけで世界征服を目指します みーあ @miiia0119

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