第24話
王宮に着くと、駅前でジョウンが待っていた。
「おーい!遅かったな!目当ての物は買えたか?」
「はい。雑貨屋のおじさんのお孫さんに勝負を仕掛けられました」
「そうか、アリスがいたのか。それは災難だったな」
「殺されかけたんですよ!」
ジョウンは面白おかしく笑った。
「笑い事じゃないですよ!もぅ!」
「ハハハ!悪い悪い」
「もぅ!」
王都は私たちの住む地域とは違い、建物が黄金装飾によって豪華絢爛に彩られ、一流のブティックや、流行の最先端の店が所狭しと軒を連ねていた。
「お前が遅れてきたから先に買い物は済ませておいた。何か他に欲しい物はあるか?」
私は目の前にある宝飾店のショーケースに飾られていた髪留めのアクセサリーに目を奪われた。
「これが欲しいのか?」
私は首を横に振る。
「ジョウンさんには制服も、日用雑貨も買って頂いたのに、更に嗜好品を買って頂く訳にはいきません」
「娘のわがままに付き合ってやるのが、父親の役目だ」
ジョウンは店に入って行った。
「ちょっと!」
「この娘に一番似合う髪飾りを選んで欲しい」
「かしこまりました」
「いいんですか、ジョウンさん」
「お前の顔を見れば分かる。自分の気持ちを押し殺したまま育って来たんだろう」
図星だった。
「お待たせいたしました。最新の流行のデザインの物をお待ちいたしました」
花と蝶の流麗な彫刻の髪留めであった。
私は恐る恐る装着する。
「大変、お似合いですよ」
その、淡麗な輝きが私の心を奪った。
「よし!これを一つください」
「かしこまりました」
「本当にいいんですか、ジョウンさん」
「いいんだ。それにお前の目を見れば分かる」
「恥ずかしいですよ‥‥」
霧隠れのビクトリア -スチームパンクの世界に迷い込んだ少女の話- 玉虫エリン @yuszk-0909
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