第17話 姫様の為に

アガセ、ルーノ、マリシアの3人を迎え入れた後姫様は部屋を後にされた、外の景色を見たいとの事だった


(…行きましたか…)


姫様が外に出たことを確認し私は防音魔法を展開し直した、そして話を始める


「…皆さん、少々私からお話が」


「お話?姫様居ないけどいいのか?」


「…むしろ姫様がいるところではできないのです」


「あ!もしかしてネフィアさんの計画を新たな仲間にも手伝ってもらうんですねっ!」


「そうです、姫様に魔族の本懐を思い出してもらうために」


「魔族の本懐?どういうことだ?」


ルーノが代表するように言ってくる、私のやろうとしていることは裏切りと言ってもいいかもしれない…しかし姫様はニンゲンを守るという目標達成を抱いてしまっている…このままでは姫様が魔族の裏切り者になってしまう、それは何としても避けなくてはならない


「…お話しますね、姫様がどんな状況に置かれているのか…」


そうして私は話し始めた、姫様の身に起こったこと、このままでは魔族が危ないこと、異変が起こる前の姫様のこと…全てを伝えた


「…まじかよ、つまり姫様はニンゲンだった時の記憶に支配されちまってるってことか…そりゃまずいな」


「私達もさっきまでニンゲンの心を持ってたけど…そんなの絶対捨てた方がいいもんね?♪」


「だな、姫様は混乱されてるのだろうな…何とかしてあげなきゃな」


やはり共感を示してくれた、私達に絶大な力と道を示してくれた姫様…そんな存在だからこそ姫様を魔族の裏切り者なんかにしてはならないのだ


「魔族を内側から変えるっていう考え…やっぱりニンゲンみが強すぎるもんね…私ならニンゲンなんてどんどん狩って家畜にしちゃえばいいと思うもん」


「その通りですフィーナ、姫様もきっと本心ではそう思っているはず…私たちの目的はその邪魔なニンゲン性を消し去ることです…そのためには」


「俺に案があるぜ?姫様に誰か適当なニンゲンを殺してもらうってのはどうだ?ニンゲンの脆弱さを知れば守らなくたっていいってなるんじゃねぇかな」


アガセが案を出してくれる、しかしそれではダメだ、ニンゲン数匹殺すなどニンゲンもまれに行う、それに…


「それは厳しいですねニンゲン性を削るには不十分かと、なにせ主導権が姫様側にあってはニンゲン性の不要さを伝えにくいですからね」


「確かにそれもそうか…」


そう、今の姫様には加虐性が全くない、何をやらせてもニンゲン性を削ることは叶わないだろう


「ん〜それなら私達で適当な理由をつけてニンゲンを殺してさ、魔族の優位性といかにニンゲン性が不要かを示すの」


「なるほど…ですがその理由にもよりますね…姫様を引き立てる内容であるなら効果的かもしれません」


フィーナの案は良さげだった、ニンゲン性に侵食されている姫様に主導権を握らせるのではなく私達が主導権を握る、それであればきっとニンゲン性がいかに不要かを私達が主軸となって示せるだろう


「では決行は王都に到着次第としましょう、今の姫様は魔神級に属するお方…ニンゲンを魅了する力は我々の比ではありませんから間違いなく誘惑されるニンゲンが現れます、そのニンゲンを始末しましょう」


「確かに♪私も姫様に惹き込まれたしあれは抗いがたい感覚だったなぁ…私は勇者の足止めに行かないとだしどうなったかは教えてね♪」


「もちろんだよマリシアさん!お互い頑張ろっ!」


皆やる気十分だ、姫様を苦しめるニンゲン性…必ずや消し去ってみせる、そんな気概を感じとれる


(必ずや姫様の邪悪な本質を取り戻してみせます…待っていてくださいね)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(…うん、いい夜風だなぁ)


先程騒ぎがあったとは思えない静けさだった、いや、むしろ騒ぎがあったからこそ皆静かにしているのだろう、とはいえこの村のお店やらがどうなってるか回ってみたかったので少し残念ではある


「あら、あそこの家…酒場かしら、確かにこの村にも酒場を作った記憶があるなぁ」


懐かしい記憶だ、この村はゲームで初めて作った村のひとつ、せっかくだから少しくらい顔を出してみようと思った


「…こんばんは〜」


恐る恐る酒場の扉を開く、元JKな私には酒場の扉はいつも開く扉よりも重く感じた


「んお?…綺麗…あっと、いらっしゃいお嬢さん、こんな夜に一人は危ないよ」


「あ、ありがとう…でも…」


辺りを見回すとかなり賑やかだった、外に音が出ていなかったからてっきり誰もいないと思っていたのだが…


「ん?どうしたんだい?」


「い、いえ、静かだったはずなのに中に入ったらかなり賑やかだったのでびっくりして」


カウンター席に座りながらそう話す、こんなに賑やかなら外にも音が聞こえるはず…


「あれ、お嬢さん魔法は苦手なのかな?こういう店では基本防音結界をはってるんだ、近隣に迷惑にならないようにな」


「あ、そういえばそうね…ありがとうおじさん」


「どうってことはねぇさ、んでどうするよお嬢さん、正直お前さんほど綺麗な子が来ると危ないよ?」


ダンディな声で忠告してくれる、確かに先程からやたらとチラチラ見られている…前世ではこんなに見られなかったのに


(…やっぱり私の魔性に魅了されてるんだ…)


魔族の持つ性質…それに惹かれているのだろう、トラブル大好きな魔族ならともかく私は中身人間なのだ、若干気まずい


「た、たしかにそうですね…ぅぅ…帰りますね…」


オーナーさんに見送られてお店を出る、魔族は不便だ、特に私は魔神級、何もしなくてもトラブルが起きかねない、オーナーさんが気を使ってくれなかったら今頃魅了された人に取り囲まれていただろう


「今度からお店に行く時はみんなと行かないとなぁ…はぁ…」


一人旅…やっぱり難しいのだろう、ネフィアを連れてきて良かったと思う


「さて…気を取り直して明日の準備しなきゃね…待っててね王都!」


落ち込んでる暇は無い、ホムンクルスイベントの足がかりを得るためにも王都へ向かう、改めて私は気合を入れるのだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

自作ゲームの世界に転生した私は悪役としての使命を全うします! 甘星 @35hoshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ