第3話

 そのお目当てのお店とは、アンティークな雰囲気のある雑貨屋さんのことだ。おばあちゃんは、私達と同じで可愛い雑貨が大好きだから。去年の誕生日もここでネックレスを買った。

「今年は何がいいのかな?」

色が目の前にある物を取ってみるが、ピンとこなかったのかそれをそっと戻した。私も周りの物を見てみるが、大体おばあちゃんが既に持っていそうな物ばかりで「これだ!」といういう物はない。

「これなんかよくない?」

音が嬉しそうに振り向いた。その手に持っているのは、ワインレッドのベレー帽だった。おばあちゃんは近所でも有名なオシャレさんだ。このベレー帽は他にはないぐらいぴったりの誕プレだろう。

「これにする?」

私が音からそのベレー帽を受け取って、手触りを確かめる。

 あ、柔らかくて軽い素材のやつだ。これならおばあちゃんも簡単に着けられそう。

「いいじゃん!これにしちゃお!」

「迷ってても仕方ないしね」

私達はベレー帽を手にレジに向かった。


「「「「「おばあちゃん、Happy Birthday!!」」」」」

「まぁ、すごいわね!嬉しいわぁ」

プレゼントの入った袋をおばあちゃんに渡す。それを受け取ると、おばあちゃんは嬉しそうに微笑んだ。

「本当にありがとう。開けてもいいかしら?」

おばあちゃんの言葉に、私達は揃って頷いた。リボンを解き、袋からワインレッドのベレー帽を取り出す。

「可愛い色ね。いろんなところに着けていけそうだわ」

おばあちゃんは、早速そのベレー帽を被って見せた。派手すぎず上品な色は、おばあちゃんの優しい顔立ちをもっと引き立たせている。

「一生大切にするわねぇ」

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