第6話
それから2週間ほど経った頃。家に1通の手紙が届いた。見覚えのある薄ピンクの封筒。これは、私達が昔お母さんの誕生日に皆でお金を出し合って買った物だった。だから絶対にお母さんからのもの。間違いない。
「…読むよ」
ごくっと息を呑む。私はその封筒から、丁寧に折られた1枚の手紙を取り出した。手紙を開くと、懐かしさを覚える、丸っこい字が見えた。
『麻、色、歌、英、音へ。知り合いから、あなた達5人が私のことを探しているということを聞きました。教えてもらったものを見て、手紙を書かずにはいられませんでした。自分勝手でごめんね。出ていったのは私の方なのに、こんなふうに手紙なんか送ってしまって…。丁度今の時期は、夏休みじゃありませんか?よかったら遊びにきてください。あなた達と母さんが許してくれるなら、私は新しいお父さんと一緒に、あなた達を迎えたいと思っています。いつまでも、待っています。佳織』
その下には、今住んでいるであろう住所と電話番号が書かれていた。涙が、止まらなかった。拭っても拭ってもどんどん溢れてくる。私達は、久しぶりに5人で声をあげて泣いた。
買い物から帰ってきたおばあちゃんは、手紙は見るなり涙目で微笑んだ。
「会いに行ってもいい?」
歌が私の手を握った。反対されるのが怖いのだろう。夏だというのに、指先は真冬の時のようにキンキンに冷えている。
「確認なんかする必要ないわ。実の娘達が、母親に会っていけない理由なんてないんだから」
おばあちゃんは、優しく私達の頭を順に撫でていった。
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