第7話

 次の週の日曜日、私達は小学校の遠足に行く時に使っていたリュックを背負って、家を出た。

「いってらっしゃい」

おばあちゃんは私達が見えなくなるまで手を振り続けていた。今お母さんが住んでいるところまで行くには、いくつかの電車を乗り継がなければならない。当然県だってまたぐし、気が遠くなるほど遠い。でも、なんとなくワクワクしているような気がする。私達は横1列に並んで、時々スマホで地図を見ながら目的地を目指した。


「歌、うーた!起きて!着いたよ」

やっとのことで電車から降り、駅を出た。すると、あの頃とどこも変わっていないお母さんと、見知らぬ男の人が駅の外で待っていた。多分この人が新しいお父さんとやらだろう。優しそうな表情の人だった。

「麻!色!歌!英!音!」

お母さんに呼ばれ、私達は一斉にお母さんの胸に飛び込んだ。

「「「「「お母さーん…っ!!」」」」」

私達は場所など忘れて思いっきり泣いた。小さな子供のように。お母さんの体は小さく震えていた。でも、とても暖かくて安心する。お母さんは更に強く私達を抱き締めた。

「ごめんね、あなた達だけ残して勝手にいなくなっちゃって…。後悔しかしてない。なんで置いていったんだろうって。大好きなのに、大好きなのに!!手の届かないところにいるのが、不安で仕方なかったのに…!毎日のように泣いてた。今何してるかなぁって、そればっかり考えて。きっともう会ってもくれないと思ってたの。でも、私を探してるってことを知って、とても嬉しかった。私はまだあなた達に忘れられてないんだ、こんなでもお母さんなんだって」

一気に喋り終えると、お母さんは涙に濡れた顔で私達を見た。

「会いにきてくれて、ありがとう」

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