第5話
部屋に戻って、さっきおばあちゃんに言われたことを考えていた。
好きと言ったことがないなんて、思ったこともなかった。
「麻、いる?ちょっと話があるんだけど」
色の声だ。私は不思議に思ってドアを開けると、色だけじゃなく歌、英、音まで揃っていた。
「話って…?あ、部屋入りなよ」
「ありがとう。それで、さ。話っていうのは、お母さんのことなんだけど…」
やっぱり五つ子だ。皆気になっていたんだね。
色の後ろで、珍しく歌も真剣な顔をしている。
「探さない?」
「探す?探すって、お母さんをってこと?でもどこにいるかわからないよ」
お母さんは行き先も言わずに出ていって、それから一切連絡はない。だから今どこにいるかわかっていないのだ。
「それなの!だから私はSNSで呼びかけてみる!!」
「私も近所に張り紙貼ってみる」
「じ、じゃあ私はネットの掲示板とかで」
「私もゲームのチャットでいろんな人に聞いてみるね!」
色、歌、英、音の順に言っていく。自然に笑みがこぼれた。お母さんを好きな気持ちは、皆一緒だった。
「それなら…私は大会で知り合った人達に聞いてみようかな」
「さすが、空手で全国いってるだけあるね。顔が広いっ!!」
色がパチパチと手を叩きながら笑う。
SNSの方が人は限られないから、より有力な情報が出てきそうだけど。
「じゃあ丁度夏休みだし、皆で頑張ろう!」
英の掛け声に、皆で拳を高く突き上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます