第5話

 部屋に戻って、さっきおばあちゃんに言われたことを考えていた。

 好きと言ったことがないなんて、思ったこともなかった。

「麻、いる?ちょっと話があるんだけど」

色の声だ。私は不思議に思ってドアを開けると、色だけじゃなく歌、英、音まで揃っていた。

「話って…?あ、部屋入りなよ」

「ありがとう。それで、さ。話っていうのは、お母さんのことなんだけど…」

やっぱり五つ子だ。皆気になっていたんだね。

 色の後ろで、珍しく歌も真剣な顔をしている。

「探さない?」

「探す?探すって、お母さんをってこと?でもどこにいるかわからないよ」

お母さんは行き先も言わずに出ていって、それから一切連絡はない。だから今どこにいるかわかっていないのだ。

「それなの!だから私はSNSで呼びかけてみる!!」

「私も近所に張り紙貼ってみる」

「じ、じゃあ私はネットの掲示板とかで」

「私もゲームのチャットでいろんな人に聞いてみるね!」

色、歌、英、音の順に言っていく。自然に笑みがこぼれた。お母さんを好きな気持ちは、皆一緒だった。

「それなら…私は大会で知り合った人達に聞いてみようかな」

「さすが、空手で全国いってるだけあるね。顔が広いっ!!」

色がパチパチと手を叩きながら笑う。

 SNSの方が人は限られないから、より有力な情報が出てきそうだけど。

「じゃあ丁度夏休みだし、皆で頑張ろう!」

英の掛け声に、皆で拳を高く突き上げた。

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