誕生日

第2話

 おばあちゃんと私達5人での生活は大変だったけど、全然苦じゃなかった。

あさー!これ欲しいっ!」

霞咲かすみざき家では、それぞれ家事などを分担していた。長女の私、麻は“お金の管理”。次女のいろは“料理”。三女のうたは“洗濯”。四女のえいは“掃除”。五女のおとは“勉強”というふうになっている。おばあちゃんへの感謝の気持ちを、私達なりに表そうとしていたのだ。皆自分の得意なことを生かして役割を決めた。

「ダメ!節約するって言ってるでしょ?色はすぐ物を欲しがるんだから」

色は残念そうに肩を落とした。私達は今、ショッピングモールに買い物にきている。すれ違う人達は、皆揃って物珍しそうな顔で私達を見ていく。確かに5つ子が生まれる確率は極めて低い。それなのに、お母さんは母子ともに健康な状態で私達を産んだらしい。本当に奇跡のようだったと、いつだったか話された記憶がある。

「今日はおばあちゃんへの誕生日プレゼントを買いにきたんだよ!?他にも買いたいものはあるんだから…余計なことはしません!!」

音にまで怒られた色は「はーい…」と言ってやっと大人しくなった。

「あれ、歌!?歌がいなくなった!」

歌は基本マイペースで、1人でどこかにフラフラと行ってしまうことがよくある。 だからずっと私が隣にいたのに…!なんでまたいなくなってるわけ!?

「あ!いた、歌ー!ちょっと何してんの?」

見つけた英が、慌てて歌の元へ走っていく。私達も急いで後を追った。

「え?あー…可愛いなぁと思って」

まさか…。

 歌が指差した方を見ると、案の定狐のぬいぐるみが山積みになっていた。

「歌って、本当に狐好きだよねぇ。狐がある時だけ行動めっちゃ早くなるもん」

「狐は、正義だよ」

「わかった。もういいから早くおばあちゃんの誕プレ、買いに行こう?」

なんとか歌を狐のぬいぐるみから離し、私達はお目当てのお店に向かった。

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