プロローグ

第1話

 私達は五つ子だ。お父さんはいない。私達が無事生まれたという連絡を受けてすぐ、体の弱かった父は風邪をこじらせて亡くなったそうだ。それからお母さんは、おばあちゃんと2人で私達5人を育ててくれた。私達にはお母さんとおばあちゃんしかいなかった。

 それなのに…お母さんは私達を捨てたんだ。


中学に入学して半年ほど経った頃、お母さんは家を開けることが多くなった。

 男でもできたんだろう。再婚をするのには賛成だけど、その人と仲良くなれるのかが心配だった。

 でも、そんな心配は一切いらなかった。

「じゃあね、また迎えにくるから」

そう言ってお母さんは家を出ていった。荷物はほとんど持たず、部屋の物は全て処分されていた。

「どこ行くの?」

私がそう聞いてもお母さんは何も言わない。悲しそうな顔で私達5人を抱き締めてから、目も合わせぬままいなくなった。おばあちゃんは気まずそうな顔で、庭の畑仕事をしに外へ出た。

そこに、私達5人だけが残された。

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