都会に置き忘れた“わたし”を探す旅

その始まりは、思い切りよく手放した日常と、風に吹かれるまま辿り着いた名もなきカフェ。ルリさんの淹れるコーヒーは、どこか遠い記憶の味がして、秋穂の心の隙間にそっと染みわたってゆきます。

誰にも知られず、誰かにそっと見守られるような時間の流れ。登場人物の会話の合間に、まるで風が通り抜けるような静けさがあり、読んでいる私まで肩の力が抜けていくのを感じました。“居場所”とは、地図にはない、でも確かにそこにあるもの。そんな感覚に触れさせてくれる、優しい物語です。

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