いじけてる私

天雪桃那花(あまゆきもなか)

いじけてる暇はない?

 モテる男子に恋をすると、ろくでもないなって思った。


 寂しさとか嫉妬とかで、胸の中がぐちゃぐちゃだ。


 本人はモテている自覚もないし。亮平りょうへいのあほ〜!


 今だって、クラスの女子から手作りのお菓子とかもらいそうになってるやんか。


美朱みあか、あんた、ほんまに亮平くんのカノジョになったん?」

「そ、そ、そのハズですけど」

「亮平くん、モテモテやなあ」

「ねえっ、奈央なおちゃん! わたしどないしたらエエんやろ」

「まあまあ。美朱は美朱だけの魅力があるねんから」

「なに? どこどこ? ねえねえっ、わたしの魅力ってなに? 教えて、奈央ちゃん!」

「あー、まあ。そんなん亮平くん本人に再確認せな。何度でも聞いたらエエよ。あんな女子の大群、二人でイチャイチャ惚気のろけてたりしたら皆サーッていなくなるんやない? 大体さ、好きって告って来たん、向こうからなんやろ?」

「そ、そうだけど」

「自信持たなアカンで。目ぇ、光らせとかんと。ボケボケしてたりいじけてる暇ないよ? 美朱がそんなんだと、亮平くん、のんびりほわほわしたお人好しやから、すぐにずる賢い泥棒猫にかっさらわれるよ」

「ううっ……」


 わたしのことが好きだって、世界一可愛いカノジョだって、言ってくれたもん。


「ああ、アイツは人当たりエエし、世話好きだかんな。美朱は、亮平なんかやめてオレにせえへん?」

「はあっ? なんで?」


 蒔野まきのがわたしの肩を抱いて、しょーもないちょっかいをかけてきた。


「蒔野。その手、どかして」

「りょ、亮平!」

「亮平くんっ」


 亮平くんがいつの間にかこっちにやって来てて、わたしの肩に触れてる蒔野の手をじ上げる。


「いたたたたっ」

「蒔野、気安く触らんといてな? 美朱はボクのカノジョだから」

「亮平くんっ!」


 忘れてた。

 亮平くんって、小学生の頃から空手かなんかやってるんだよね。

 見た目は亮平くんってば可愛いい童顔なのに、こんな時は眼光が鋭くって強くて。


 亮平くんのギャップに胸キュンしちゃってる。


「亮平くん、萌えるわ……」

「美朱、良かったな。あんた愛されてるやん」

「う、うん」


 わたしは一気に恥ずかしくなってきた。顔がカアーッと熱くなる。


「亮平、そういやお前さっき手作りのお菓子もらったんやろ? 美朱っちゅうカノジョおんのに、良くないで」

「あのなあ、手作りのお菓子の差し入れは丁重にお断りしました。ボクは美朱の作るお菓子を食べたいので」


 ど、どーしよっ。

 わたし、お菓子作りとかあんまり自信ないで。


「美朱。うちで放課後、一緒にクッキーでも作らへん?」

「えぇっ?」

「亮平んち、ケーキ屋さんなんやで。オレらも行きたいよなあ。なっ? 奈央ちゃん」

「蒔野、なんでアタシまで巻き込むねんっ。二人のお邪魔でしょ」


 蒔野が近づいたら、奈央ちゃん、顔が真っ赤だ。

 耳まで茹でだこみたいに真っ赤なんだけど……どうしたんやろ?


 ――あれ? あれれ?

 もしかして、ひょっとして。


「亮平くん! もし良かったら、わたしと奈央ちゃんと蒔野の三人で亮平くんちにお邪魔しても良いかな?」

「うん。もちろん良いよ。……ボクは隙を見て美朱と二人っきりの時間も作るからね」

「ええっ?」

「ボクは美朱しか興味ないんやから」


 みみ、みんなの前で、亮平くんからほっぺにチューされちゃった。


 教室のあちこちから、キャーッて女子の声が上がる。


 たしかに私、いじけてる暇、ないみたい。




       おしまい♪




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

いじけてる私 天雪桃那花(あまゆきもなか) @MOMOMOCHIHARE

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ