レーベルのニーズと受賞の関係
4.総評で怒られた(と思う)けど個別講評をもらいたくなった
私は好きなものだけを書いていて書きたくないテーマや展開には手を出していませんが、コンテストには応募しています。でも商業作家を目指しているからではありません。2022年11月に小説を投稿し始めて2年ほど経ち、自分の小説がどの程度ちゃんと書けているのか、コンテストに応募して確認したくなりました。
私は趣味で小説を楽しく書いているので、切磋琢磨しなくていいと思っていました。でも読者の皆さんから反応をいただくと嬉しいんですよね。そうすると、勝手に自分の好きなものだけ書いているにもかかわらず、読者の皆さんは拙作を楽しんで読んでくださっているだろうかという疑問や、楽しんで読んでもらいたいという欲が出てきました。だからそのためにもっとうまく小説を書きたいなと思って力試しのようなつもりでコンテストに出していました。
だけど自分の小説をよりよくしたいのなら、講評をもらえる公募に出すべきだと思うようになりました。そう思うようになったのは、まちかりさんの創作論『【考察】選考者から一言』を読んでからです。
『【考察】選考者から一言』(まちかりさん作)
https://kakuyomu.jp/works/16817330662740850480
今まで私はタグ設定とか「コンテストに応募」ボタンにチェックを入れるだけで気軽に応募できるような小説投稿サイトのコンテストにのみ応募していたので、受賞作品以外は個別講評をもらえないことに慣れていました。でもまちかりさんのエッセイを読んで、一次選考で落ちても希望を出せば講評をくれるコンテストもあると知り、驚きました。
まちかりさんの経験によれば、講評の内容は今後の創作に役立つ真摯なものばかりではなく、あからさまに提灯記事みたいな誉め言葉ばかりが並ぶものからこき下ろしまで色々あるそうですので、公募は選ばないといけません。まちかりさんのような公募経験者のエッセイを読むと参考になりそうです。
今年、私はKADOKAWAとムーンライトノベルズのタイアップコンテスト『2024eロマンスロイヤル大賞』に『傀儡妃は幼馴染の王太子をひたすら愛する』で応募し、一次選考だけ通過しましたが、もちろん講評はいただけませんでした。それでも一次選考通過自体初めてだったので、とても嬉しかったです。
このコンテスト応募作品はムーンライトノベルズとエブリスタに投稿しているR18版ですが、カクヨムでもR15版を投稿しています。今はカクヨムコン10に備えて休載中です。
『傀儡妃は幼馴染の王太子をひたすら愛する』
https://kakuyomu.jp/works/16818093082545600224
2024eロマンスロイヤル大賞の受賞作品は、10月8日に総評と受賞作品への選評と共に発表されました。
https://static.kadokawa.co.jp/promo/eromanceaward2024/2024result.html
何気なく2024eロマンスロイヤル大賞の総評を読んでガクブルしました。
「「eロマンスロイヤル」は大人女性が官能恋愛シーンを気持ちよく楽しめるレーベルを目指しておりますが、自分の書きたいものに意識が行き過ぎて、読者への配慮が欠けた過度な描写がある作品がいくつか見受けられたことは残念でした。」(引用以上;傍点は筆者が付加)
上記の部分を何度も読み直して「こりゃ、私のことじゃん!」と思わず叫びそうになりました。私は、本作のアントンという脇役をどヘンタイクズ夫にしたかったので、ちょっぴり無理矢理場面とか、見られそうなスリルで盛り上がる(?)エッチシーン(カクヨムでは当然のことながら運営から怒られない程度の描写)を入れました。でもそういうのが好きな読者は、恋愛小説でほどほどの「官能恋愛シーンを気持ちよく楽し」むことが好きな読者よりも圧倒的に少ないでしょう。
「自分の書きたいものに意識が行き過ぎ」という言葉は実に耳に痛かったです。Web小説投稿サイトのコンテストは公募よりも簡単に応募できてしまうので、どうせ受賞しないだろうとは分かっていたものの、自分の性癖を詰めた作品でもどこまで通用するか力試ししたくて応募してきました。でもそんな甘っちょろい態度で応募するものじゃないですね。正に単なる記念受験状態でした。自分の性癖ごり押しの作品は趣味でやっているので、書籍化を目指すコンテストにはそぐわない――今回、やっと自覚しました。
だから今後は、レーベル(=レーベルの読者)が求めるものに合っていそうだと思えた作品だけを応募していこうかな、すべきかなと思ったりもします。最初はそうすべきと思ったんですけど、投稿サイトのコンテストでは講評をもらえないんですよね。それなら撃沈覚悟で応募してもいいものなのか。やっぱり迷います。でも講評をもらえる公募に応募するなら、こちらも礼儀を守ってレーベルに合わせた作品を応募するつもりです。
次回の「物書き徒然日記」では、KADOKAWAのBL小説レーベルである角川ルビー文庫のコンテストを例にとり、レーベルの求めるもの(この例では挿入ありのエロ)を盛り込まなくても作品の質さえよければ、コンテストで受賞できるかどうか考察します。ただし、私自身には公募に応募した経験がないので、カクヨムで公開されている他の作者の方々の経験談を参考にします。
【追記2024/10/14、12/17、2025/1/10、2/26】講評をもらえるコンテスト
※(2)以外は応募経験がありませんので、公式サイトの情報によります。
(1)徳間書店のキャラ文庫小説大賞(中間選考突破作品対象)
今、「物書き徒然日記」の第6弾記事のためにBL関連情報を調べているのですが、次回作へのアドバイス付きの懇切丁寧な総評や次回のコンテストに向けた質問回答を、徳間書店のBLレーベルCharaコミックスとキャラ文庫のサイトで見つけました。次回の第3回キャラ文庫小説大賞ではどうなるか分かりませんが、第2回キャラ文庫小説大賞では中間選考を突破した作品は希望すれば個別選評を送ってもらえるそうです。
創刊25周年記念キャラ文庫小説大賞 結果発表(2023/6/22)
https://www.chara-info.net/news/36758/
第2回 キャラ文庫小説大賞 結果発表(総評&個別講評)(2024/7/1)
https://www.chara-info.net/news/44813/
第3回 キャラ文庫小説大賞 質問回答(2024/7/19)
https://www.chara-info.net/news/45419/
(2)ネオページサポートプログラム賞(NSP賞)(全応募作品対象;次回未定)
2024年7月にオープンした小説投稿サイト「ネオページ」の「ネオページサポートプログラム」賞(NSP賞)は、規定の3万字を達成した応募全作に「フィードバック」をくれます。コンテストサイトに「講評」でなく、「フィードバック」と書いてあるので、もしかしたら当たり障りのない感想かなと最初は引っ掛かりました。
でも2025年1月9日にいただいた第1回NSP賞応募作2作に対するフィードバックは、真摯なものでした。自分でも情景描写が苦手なのを分かっていたのですが、その点をやはり指摘されました。Nolaの「AI読者ネコのヨミスケ」が別作品にくれた感想にも共通していたのですが、時々説明が長い場面があってテンポが悪くなっているそうです。「エピソードを通じて状況を説明する」ように勧められましたが、どうやればうまくできるのか分かりませんので、「編集サポート」(下記参照)でその点を相談してみました。どんな返事が来るか楽しみです。
このフィードバックは、欠点を指摘するだけでなく、長所も見つけてくれています。ですので、これを読んで凹むことはなく、むしろ指摘された点を改善しようと思い、モチベーションをアップできました。
2025年2月26日現在、第4回NSP賞まで終了しており、新たなコンテストが開催されるかどうか発表されていませんが、何か企画中という噂は聞いています。編集部は大変でしょうが、次回のコンテストでも応募者全員には無理でも希望者にフィードバックをいただけると嬉しいです。
また、これはコンテストとは関係ありませんが、ネオページには「編集サポート」という機能があります。契約作家でなくとも、この機能を使って編集部に創作上の相談をできます。私は相談を送ったばかりでまだ返事待ちなので、実際にどんなアドバイスがもらえたのかとか、それが役に立ったのかどうかまだ何とも言えません。でも書籍化・メディア化したことがないと、編集のプロのアドバイスをもらえる機会は中々ないので、この機能は貴重です。
(3)SBクリエイティブのGA文庫大賞(希望者対象)
SBクリエイティブのラノベレーベル(GA文庫)のコンテスト「GA文庫大賞」でも、中間選考を突破しなくても希望すれば評価シートをもらえます。コンテストサイトでアカウントを作り、応募する際に評価シートを希望すると、一次選考終了後、選考に漏れた方から順次評価シートがコンテストサイトのマイページで閲覧可能になります。
GA文庫大賞
https://ga.sbcr.jp/novel/taisyo/
(4)オーバーラップ文庫大賞(全応募作品対象)
株式会社オーバーラップが主催する「オーバーラップ文庫大賞」では、全応募作品に評価シートをフィードバックしています。コンテストサイトにアカウントを作って応募すると、結果発表後、すぐに評価シートがマイページで閲覧可能になります。
オーバーラップ文庫大賞オンライン
https://over-lap.co.jp/bunko/award/
【追記2024/11/10、12/17】カクヨムコンの講評について
以前、私は小説投稿サイト主催のコンテストで受賞作以外は講評をもらえないことに何の疑問も持っていませんでしたが、本記事記載のまちかりさんのエッセイを読み、考えを変えました。コンテストに落選しても次に向けて作品を良くしていきたい場合、講評はとても役に立つはずです。
なので、カクヨムコンでも(今回は無理だろうから次回からでも)せめて抽選でいいから講評を出してくれないかなと思い、2024年11月7日開催の「カクヨム編集長が質問に答えます!zoomウェビナーイベント」のための事前質問がカクヨムのDiscordサーバーで募集された時、真っ先に(2番目でしたが)それについて質問しました。
結果的に言うと、私の質問は取り上げられませんでした(涙)多分、応募作が多すぎるから無理ってことなんでしょうが、だから「抽選で」って聞いたのに。それとも今回のカクヨムコンのことじゃないからか(希望を言えば今回からやってくれると嬉しかったのですが)、後から「説明イベント事前質問」とつけたのがいけなかったのか。多分どっちも当たっているかもしれません。
でも本音で言わせてもらえば、運営は膨大な量の応募作が集まるカクヨムコンでこんな手間のかかることをする気ないんだと思います。全体のレベルアップはどうでもよくて、一部の才能のある作者さんの作品を見つけられたらいいってことなんでしょうね。利用が無料な以上、会社はどこかで利益をあげていかなければならないから仕方ないと言えばそうなのですが、ちょっとがっかりしました。
……と書いてから1ヶ月以上経ちましたが、講評を受けたい過去のカクヨムコン応募作品を募って抽選で詳しい改善点を教えてくれた公式企画があったのを後から見つけました。欠点だけでなく、よかった点も書いてくれてあってこの企画で当選した作者さん達はきっと励みになっただろうと思います。
中には削除されてしまった作品もありますが、まだ公開されている作品を見れば、どのような文章や話の運び、キャラクターの造形などが運営に高く評価されているか、参考になりそうです。
私が見つけた限りでは、2017、2018、2020、2022年のカクヨムコン直前に講評企画が行われていました。2022年を最後に実施されていないので、来年のカクヨムコン11開始前に復活することを祈っています。
リンクを全部貼ると長くなるので、それぞれ第1回目の講評のページのリンクだけ貼っておきます。別の講評回のリンクも第1回目のページに載っているので、2回目以降も容易に見つけられるはずです。
おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会!【第一回】(2017/11/27)※全4回計20作(~2017/11/3)
https://kakuyomu.jp/info/entry/webcon_proreview_pt1
【カクヨム小説創作オンライン講座】カクヨムコン歴代応募作品講評会 第1回(2018/10/22)※全5回計20作(~2018/10/26)
https://kakuyomu.jp/info/entry/wc4_rev_vol1
【カクヨム小説創作オンライン講座2020】カクヨムコン歴代応募作品講評会 第1回(2020/10/28)※全7回計30作(~2020/11/6)
https://kakuyomu.jp/info/entry/wc6_rev_vol1
カクヨムコン歴代応募作品講評会2022 第1回(2022/11/1)※全3回計9作品(~2022/11/6)
https://kakuyomu.jp/info/entry/webcon8_review_vol1
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