第4話

「…てな話なんだよ。

 この二人は恋人でもなくて、加虐被虐

 の性癖を持った主従関係だったと言う

 わけだ。

 すごいだろう?

 おい、どうした?苦虫を噛み潰したよ

 うな顔して」


『君ね、山の中にひっそりと移り住ん

 だっていうのに何でその話を知ってる

 んだ?

 全く。やっぱり君の話は信じられな

 い』


「だから、噂だと言っただろう」

そう言いながら湯呑みの茶をすすっている。


『貴重な時間を無駄にした』


「そう言うなよ」

ハハと笑いながら友人は饅頭を口に運ぼうとしていた。

噂話は程々にしとけよと忠告しようとした時だった。


「御免下さい」

玄関から声が聞こえた。

『来客だ。

 細君さいくんが出かけているんだ。

 ちょっと失礼するよ』

急いで玄関へと向かう。

そこにはここら辺では見たことのない人物が立っている。

どちら様で、

そう言おうとしてハッとした。

そこには切れ長の黒い瞳に白い肌の女と

薄茶色の髪の毛の美青年が立っていたからだ。


「ご近所に引っ越してまいりましたの

 で、ご挨拶にと思いまして。

 これ、もしよろしければどうぞ」


そう言って渡された品物を受け取るとき女の腕にうっすらと傷があるのが見えた。

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蚯蚓 梅田 乙矢 @otoya_umeda

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