ヤンデレな不死

女神なウサギ

第1話

 あれはまだ私が小学生低学年だった頃。

大好きだった祖母が急に亡くなった。

「ねえ、お母さん。私、死ぬのが怖い」

母は頭を撫でて私を慰めてくれた

「美穂が亡くなるのはずっと先よ。その頃には怖さもなくなっているわ」

それでも私の恐怖心は消えなくてついに大学生になってしまった。自分でも怖がりすぎだと分かっているが、それほどまでに幼い頃の祖母の死は衝撃的だったのだ。

 そんなある日、大学のオカルトサークルに所属している親友が奇怪な人面魚を見せてくれた。正確には人面魚のすり身だったのだが。

「見て、美穂。この間見つけた人面魚のすり身だよ、美味しいそうでしょ?」

「いや、意味わからないから。せっかくの貴重な魚をすり身にしちゃもったいないでしょ。それに人面魚自体、信じられないし」

「大丈夫、研究し尽くしたやつをすり身にしたから。美穂は死ねのが怖いんだよね?実はこの魚は妖怪の八百比丘尼やおびくに伝説の若狭わかさの人魚にそっくりなんだ。これを食べれば不死身になれるかもよ?」

「うーん、遠慮しておくよ」

「そう言わずにあ〜ん」

半ば強引に食べさせられてしまった。

「ちょっと!」

「美味しかった?」

「白身魚だね」

「これで怖いことが一つなくなったね」

「まだ、信じてないから」

 だが、やがて年を取るとこの魚が本当の不死の人面魚だと知ることになる。この友人を看取り、私が死ぬ番になると若返って生き返ったのだ。

誰もが気味悪がって肩身が狭くなってしまった。

それならせめて自分が先に亡くなる人を看取ろうと思い、看護師になった。

一生懸命に働き、大勢の人々を看取ることができた。

 そんなある日、1人の患者に恋をした。イケメンで優しくて初恋の人に似た青年だった。彼はまだ若かったが重い病気にかかり、入院することになったらしい。偶然にも私が彼の看護を担当することになり、趣味やその他の好きな物の話で意気投合した。やがて両思いになり、退院したら付き合う約束までこっそりしてしまった。そうしているうちに私は自分の中の悪魔の誘惑に負けてしまった。ネットで調べ上げた情報とあの親友の話を元に若狭の人魚を手に入れて、恋人となった患者さんことたけるさんに食べさせようと考えたのだ。一生に一度しか手に入らないであろう人魚を探すなんて馬鹿げていると思うが恋の力の後押しは止められなかった。

 そして私はついに若狭の人形を手に入れることに成功した。と言っても釣り上げたわけではなく冷凍保存されていた私が食べた個体の一部なのだが。腐らないのはさすが妖怪か。

 お家デート中に切り出した

「ねえ、猛さん。プレゼントがあるんだけど」

「なんだい?」

「と〜っても美味しい魚すり身よ」

「良いね、美味しそうだね。美穂は食べないの?」

「私はいらないわ。猛さんのぶんしか無いし」

「そうか。じゃあ、頂きます」

「ゆっくり、味わって食べてね」

「ねえ、猛さん。これからもずっとず〜っと一緒よ」

「もちろんだよ」

「ふふ。二人きりになってもずっと一緒に仲良しでいようね。お互いのことしか考えられなくなってもね」

そんな言葉をかけながらあの人魚を食べる猛さんを見続けていた。


 

 

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ヤンデレな不死 女神なウサギ @Fuwakuma

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