弟が増えて

どこまでも増えて

いつまでもずっと増殖して

僕は押し出されて

町の隅で凍えて

気紛れで叫んだら

全部終わった


吐き出した体を

おもいきりくすぐって

笑わないんだ

僕が笑った

なんだいだらしがない

なんだい意味もない

家に帰ってしまえ


弟達の区別がつかない

まだまだ繁殖を続ける

このままだと

お小遣いもなくなるぞ

ああああ退屈だ

誰か死なないかしら


雨が続いてきて

屋根が傷んできて

なんだか愉快になって

お経を唱えてみたよ

子守唄みたいなもんだ

いやでももう一度

本当は叫んでみたい

吐き出した体を

取り戻したくなった


弟達はおおかたくたばった

世界はススキだらけみたいだ

さっぱりしちゃったのかなあ

あそこになんか落ちてるな

なんだい僕の体か

心のひだがくすぐったいな

見なかったことにしよう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【詩集】見なかったことにしよう 清水らくは @shimizurakuha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ