長い話数で、将棋の話と尻込みすることなかれ。私は将棋の知識ほぼゼロですが、まったく問題なく読めました。本作の肝は、一人の少年を中心にした、愛憎と境遇をめぐるヒューマンドラマだったと思います。一話一話は短いながら(なので、とても読みやすいです)、ラストはいつの間にかあの結末が用意されていて、感じ入りました。大人になっていく感慨と共に、その境遇と実力があるが故に思う主人公の葛藤が丁寧に描かれます。彼の行く末と結末、ご自身の目で見届けてください。
将棋のことは、全くわかりません。にもかかわらず、読み始めたら止まれなくなりました。明るく輝く『太陽』と言う名前とは、あまりにも対照的な生活を送る少年……彼が本作の主人公です。簡潔で無駄を削ぎ落としたような文章をサクサク読み進みながら、主人公の境遇に胸を突かれ、動き出す運命に目が離せなくなりました。まだ連載中。登り始めた太陽は、果たしてどこまで輝くのか。最後まで見守り、応援したくなる物語です。
将棋の強い子供が主人公なら、それは大会に出たり、プロを目指したりするものだと思えば。そうできない事情が、境遇がある。プロを目指せることも、恵まれた環境あってこそなんだなと感じました。1話ごとの文字数は少なく、さらさらと読み進められます。なのに熱量、文章から伝わる質感、リアルさは、胸を打ちます。それは例えば、どんな局面だとしても、突き詰めれば毎回駒をひとつ選んで指すだけという、将棋の所作にも似ているのでしょう。
物語は始まったばかりだが面白いです。ゆっくり読み進みたいと思います。