第2話 疑惑の死
UDIラボの解剖室は、いつもと変わらず冷たい光に包まれていた。白いタイルの壁と無機質な解剖台が、死と向き合うための静かな舞台を作り出している。三澄ミコトは、遺体を前にして黙々と準備を進めていた。彼女の目はいつもと変わらず鋭く、しかし今回の案件には何か違和感を抱いていた。
遺体は、50代の男性。公式な死因は「急性心不全」とされていたが、彼が入院中に受けていた治療の記録には不可解な点が多かった。特に、彼が投与されていた薬のリストには、通常では考えられないような組み合わせが見られた。ミコトはその点に注目し、解剖を開始する。
中堂系が解剖室に入ってくる。彼はミコトの様子を一瞥し、彼女の手元に目を向けた。「どうだ、何か見つかったか?」
ミコトは顔を上げずに答える。「まだ確信はない。でも、この患者の死因は公式記録とは異なる可能性が高いわ。」
中堂は軽く鼻で笑い、「そんなことだろうと思ったよ。厚生労働省と日本医療会の連中が絡んでいる案件だ。簡単に真実が見えるとは思えない。」と皮肉を込めて言う。
ミコトは、解剖を続けながら冷静に話を進める。「彼が投与されていた薬の一部は、最近日本医療会が推進している治療法の一環で使われているものだった。でも、その投与量が明らかに異常なの。まるで意図的に過剰投与されているかのように。」
中堂の表情が険しくなる。「意図的に、か。となると、これが単なる医療過誤ではない可能性が出てくるな。」
その言葉にミコトは無言で頷く。彼女の目には、真実を求める鋭い光が宿っていた。この患者の死の背後に、竹見敬三や松本与四郎の影がちらついているように思えてならなかった。
そこに、東海林夕子が駆け込んでくる。「ミコト、中堂さん、これを見て!」彼女は手に持ったタブレットを二人に見せる。そこには、患者の電子カルテのデータが表示されていた。東海林は興奮を抑えられない様子で続ける。「患者が投与されていた薬の一部が、厚生労働省の新しい指針で推奨されたものと一致してる。でも、この薬はまだ臨床試験の段階で、正式な承認はされていないはずよ!」
ミコトはタブレットのデータを凝視し、疑念が確信に変わるのを感じた。「これが本当なら、患者はまだ試験段階の薬を投与されていたことになる。そして、それが直接の死因に繋がっている可能性が高い。」
中堂は低く唸る。「つまり、厚労省と日本医療会が患者を実験台にしていたということか。」
ミコトは静かに頷く。「そして、その実験の結果が、この患者の死だとしたら、それは許されるべきことではない。」
解剖室に重い沈黙が流れる。三人はそれぞれの思考を巡らせながら、この事件の背後に潜む巨大な闇を感じ取っていた。これから彼らが追う真実は、竹見敬三や松本与四郎の築いた医療界の闇そのものであり、そこには多くの命が犠牲になっている可能性があった。
中堂が口を開く。「次に行くべきは、厚労省の内部だな。奴らが何を隠しているのか、俺たちで暴いてやる。」
ミコトは深く息を吐き、解剖台の上の遺体に目をやる。「そうね。この方の死を無駄にはしない。私たちが必ず真実を明らかにする。」
その言葉に、東海林は静かに頷いた。「これが私たちの使命よね、ミコト。」
UDIラボのメンバーたちは、重い決意を胸に抱え、次なる一歩を踏み出す。彼らがこれから直面するのは、ただの事件ではない。日本医療界と政府が絡む巨大な闇を暴くための戦いであり、その先には、誰もが予想し得なかった真実が待ち受けている。
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