第3話 迫り来る圧力

UDIラボの静かな調査室とは対照的に、厚生労働省の会議室では緊張感が漂っていた。竹見敬三は、長いテーブルの先頭に座り、周囲にいる厚労省の幹部たちを鋭い目で見渡していた。彼は大臣としての就任直後にもかかわらず、すでにこの場を支配する圧倒的な存在感を持っていた。


「皆さん、ご存知の通り、医療界において重要な改革を進める必要があります。」敬三はゆっくりと口を開く。彼の言葉には、微かな威圧感が含まれていた。「私が就任した以上、日本医療会との連携は今後ますます強化されるでしょう。我々は一枚岩となり、この国の医療制度をより効率的で、経済的に安定したものに変えていくのです。」


幹部たちは敬三の言葉に頷きながらも、どこか緊張した表情を浮かべていた。彼らは、敬三の父であり、日本医療会の元会長である竹見太郎が築いた強力な影響力を理解していた。厚労省の政策は、敬三の指揮の下、日本医療会と密接に結びつくことが必然だった。


敬三は続けた。「しかし、そのためには、一部の邪魔者を排除しなければならない。最近、UDIラボが一部の案件に深入りしているようだが、彼らの動きを警戒しておく必要がある。」


幹部の一人が、慎重に口を開く。「ですが、大臣。UDIラボは独立機関であり、彼らの活動に対して圧力をかけるのは難しいかと…」


敬三はその言葉を遮るように手を挙げた。「難しい?圧力をかけることができないなどと考えているのか?」彼の声は一瞬で冷たくなった。「我々が動かそうとしているのは、ただの政策ではない。これはこの国の医療システム全体を再構築する計画なのだ。そのためには、我々に立ちはだかるすべての障害を取り除く必要がある。」


会議室は静まり返った。敬三は立ち上がり、部屋をゆっくりと歩き回りながら言葉を続ける。「UDIラボがどんなに独立していようと、我々の計画を妨害するならば、彼らを排除することも辞さない。」


幹部たちは一様に緊張感を増していた。彼らの多くは、敬三がここまで強硬な姿勢を取ることを予想していなかった。しかし、彼の言葉は明確だった。竹見家の影響力と日本医療会の意向に背く者は、容赦なく排除される。


「具体的な手段については、各自が考えておくように。」敬三は、冷たく命令するように言い放った。「UDIラボが何か掴んでいるなら、それが公になる前に対処する。彼らの調査を無意味なものにするのだ。」


敬三の言葉が終わると、会議室には再び重苦しい沈黙が流れた。幹部たちはそれぞれが自分の役割を理解し、指示に従う準備を進めていた。竹見敬三は、厚労省内でも絶対的な権力を握りつつあった。


会議が終わり、幹部たちが退出する中、敬三は一人窓際に立ち、外の風景を見つめた。その背中には、冷酷な計画を遂行するための決意が漂っていた。


彼は窓の外を見ながら、静かに呟いた。「UDIラボごときが、我々に立ち向かえると思っているのか。全てが私の掌の中にあるのだ。」


その時、彼の胸ポケットの電話が振動し、竹見太郎からの着信が表示された。敬三はすぐに電話を取り、父の声を聞いた。


「どうだ、敬三。準備は進んでいるか?」


「もちろんです、父上。すべて順調に進んでいます。」


竹見太郎の低い笑い声が電話越しに響いた。「それでいい。すべては我々の計画通りだ。」


敬三は満足げに頷いた。「ご安心ください。UDIラボも、もうすぐ無力化されるでしょう。」


竹見太郎はさらに低く笑った。「それでこそ、私の息子だ。」


敬三は電話を切り、深く息を吐いた。彼の目には、何も恐れるものがないかのような冷たい光が宿っていた。彼は父と共に、この国の医療を完全に支配するための最後のピースを手中に収めようとしていたのだ。


そして、そのためにはUDIラボという小さな存在など、いとも簡単に潰せると確信していた。

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