飼育される人間

千織

飼育される人間

 この世界には、飼育する人間と飼育される人間がいた。飼育される人間は、遺伝子検査で病気や障がいが無いかを確認され、なおかつその時代のカワイイとされる顔になるように調整される。オスもメスも最初から避妊手術を受けている。


 そのようなペット人間のアンジェは、3歳の時に山田家に買われ、家族になった。6歳年上のアキラはよくアンジェの面倒をみた。


 アンジェは天使のような可愛さで、いつも笑顔で山田家の人々を愛していた。よく話を聞き、嬉しい時は一緒に喜び、悲しい時は慰める。アンジェがいることで、山田家はいつも幸せだった。




 アンジェが12歳のある日、大雨が降って、川が氾濫し洪水が起こった。山田家は自宅を後にして避難することにした。


「アンジェ……ごめんね……。避難所にペット人間は連れていけないんだ……」


 アキラは悲しみを堪えて言った。


「うん、大丈夫。2階にいるから……」


 アンジェはそう答えた。


 2階にアンジェの食べ物や飲み物、携帯トイレを置く。山田家は泣く泣くアンジェを残して自宅を離れた。




 二日後、雨が止み、洪水も収まったので山田家は急いで家に帰った。2階には元気なアンジェの姿があった。


「アンジェ! 無事で良かった!」


 アキラはアンジェに抱きついた。


「みんなも、無事で良かったぁ」


 アンジェはいつもの天使の笑顔を浮かべた。


 この大雨や洪水では一人も出なかった。


 めでたし、めでたし。



※三題噺

飼育、洪水、死者

ディストピア

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飼育される人間 千織 @katokaikou

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