見ている景色が二転三転し、全て閉じたときに感動します

この話は、始めは事故だと言われました。登場人物は否応なしに見知らぬ世界に飛ばされます。

右も左も分からない世界で、驚くべきは世界より登場人物の方。へこたれることなく積極的に活動して活路を切り開いていきます。これがよく笑えるコメディでして。

しかし、偶然から始まったものが各人の意図的行動と絡み合うと、物語は思わぬ方向に……

登場人物が世界を理解していくのと同様に、読者は世界の構造を、そして作者の計らいを理解していき、驚愕します。見ている景色が二転三転します。

サバイバルであり
滑稽話であり
魔法と科学の融合であり
人間の情念の物語であり……

独自の世界観に、特殊技術とそれを使いこなす知恵の相乗効果、さらには各人の生命力。各要素がとにかく力強く、読者は息つく暇なく引っ張られます。

それを最後まで読んだとき、物語の輪が閉じたときの感情は、何というのでしょう。本作の出だしを読んだとき、最後のあのような感情を覚えるとは思いませんでした。仔細は明かせません。ご自身の目でご覧願います。

凄まじいものを見ました。その一言です。

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