黎明
「ねぇ、僕たちどこまでいけるかな」
僕は立ち上がってミツキにそう言った。僕のどこにも行けなかった世界はミツキのおかげで広がった。なら、もっと、と期待してしまうのは人間の性だろうか。僕は、いやきっと僕らは、心の奥底ではこの灰色の世界を吹き飛ばしてしまいたくてたまらない。
「――どこまででも、かもな」
ミツキがぽつりと呟いた。徐にミツキを見ると目があう。ミツキはにやりと笑った。僕はそれに目を見開いて、ふはっと笑いが零れた。
「世界の果てまで?」
「世界の果てまで」
「宇宙の果てまで?」
「宇宙の果てまで」
ミツキは僕の言葉を繰り返すように言った。両手を広げて歌うように言葉を放つミツキは何時になく楽しそうだった。僕はその様子を見ながら満面の笑みで言った。
「じゃあ、僕らの終わりまで行こう」
今度はミツキが目を見開いて、子供のように笑う。
「いいね、それ」
ミツキに手を差し伸べた。ミツキはそれをしっかり握って立ち上がる。僕はその手を強く握った。
「排除されそうになったら二人で逃げればいい。狂気に陥ったら二人で世界を滅ぼせばいい。僕らはもう、何処にだって行けるよ」
「そうだな、でもまずはコンビニ行かねえと」
「え」
ミツキの言葉に音が零れる。カーテンの隙間から夜明けの光が射しこんだ。ミツキは眩しそうに目を細めて、口を開いた。
「朝飯、まだだろ」
そう言ってミツキは、瑞々しく笑った。
心臓が満ちるまで 熒惑星 @Akanekazura
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