第2話

 長岡は震えていた。名簿順に座った尾藤、島田もそれぞれ震えていた。和野は一番奥に座っているので、環視されているような気分だった。下駄箱には新学年のクラス表があったが、誰一人として変わらない構成だった。担任の名前だけが書かれておらず、ある意味束の間の延命処置だった。

 しかし、もう間もなく星崎が教室に入ってくるはず。足音が聞こえる。それを打ち消すように鼓動が大きくなってきた。

 スライドドアのガラス窓に星崎の顔が映った。

「てめえらあああああ」

 後ろから怒号が聞こえた。振り返ると和野の片手には包丁が握られている。瞬間、長岡ら三人は立ち上がり、椅子が後ろの机に当たることを気にも留めずに廊下へ駆け出した。

「なにやってんだ和野!」

 星崎の怒号が和野の怒声の上に重なる。和野は星崎に向かって歩み寄った。

「まずはお前じゃ、星崎いいい」

 女子の叫び声、男子の喚き声が重なった上に壮絶な悲鳴が耳をつんざいた。廊下から教室を見ると、和野が星崎の髪を掴み頭部を持ち上げていた。倒れた胴体からは切断部から行き場をなくしたホースのように血が噴き出している

「次はお前らじゃあ!」

 和野は星崎の頭部を長岡に投げつけた。目を瞑るが反射的に腕を前に出し、手のひらが不快な感触を抱いた。目を開けると、白目をむき、従いように垂れた星崎の頭部を捕まえていた。

「うわああああああああああ」

 長岡はすぐに手を離すと、机上にごろりと星崎の頭部が転がった。叫び声が何重にも重なる中、和野の雄たけびを捕らえた。

「島田の目、抉ったったぞおおおお」

 すでに両手が真っ赤になった和野は片手に眼球を指で挟んでいた。黒目がどちらも長岡に向いていた。もう片方の手には島田の髪が掴まれていて、眼球の抉られたところから血がドクドクと流れている島田が「ああああああ」とか細い悲鳴を上げていた。

 廊下に出ようとすると、すでに同級生がドアに押し寄せていた。尾藤は女子も構わず押し倒していた。

「尾藤、待てこらああ、殺してやる!」

 和野は尾藤に島田の眼球を投げつけた。周囲の生徒たちはまた悲鳴を上げた。和野は異様な力で同級生たちをなぎ倒し、あっという間に尾藤の首根っこを掴んだ。

「よくもだましたな」

「違う違う違う。案を出したのは長岡で……」

 和野は長い包丁を尾藤の腹に突き刺した。ごぼごぼと口から血を垂れ流している。和野は器用に腹に突き刺した包丁の刃を腹に当てのこぎりのように扱い始めた。長岡は逃げたくても下半身に力が入らず、自分の席で呆けたまま尾藤が惨殺される様子を見ていることしかできなかった。

「たずげ……」

 和野は両手で露わになった尾藤の背骨を掴み、逆方向に曲げ始めた。すでに亡くなっているかと思ったが、尾藤は「ぼぼぼぼぼぼ」と大量の血と吐瀉物を流し、身体をちょうど半分にされてしまった。和野は半分になった尾藤の上半身を抱え、長岡に投げつけた。長岡は椅子事真後ろに倒れ、後ろの席に後頭部を強打し、視界が暗くなった。

 しかしすぐに脚に激痛を感じ目を覚ますと目の前に血まみれの尾藤の顔があった。

「な、ながおか」

 尾藤は上半身のみになってなお、意識があった。しかし、尾藤は頬を包丁で貫かれたあと、和野に蹴り飛ばされ、長岡に馬乗りになった。

「お前が首謀者だな。絶対に許さん」

 和野は長岡の服を脱がし全裸にした後、包丁で切っ先を立て肌に突き立てた。長岡は激痛を覚悟したが、切っ先は少し刺さったまま降りていった。不思議に思うと、和野は包丁を投げ捨て、指先を切り裂いたところに潜り込ませ、皮をはぎ始めた。

「いたあああああ」

「うるせえ」

 和野はシールをはがすように、つつがなく皮をはいでいく。むき出しになった肉が空気に触れるだけで敏感になっている。

 皮は剥がしにくいのか、和野は途中ではぎとることを止め、おもむろにズボンを脱がした。ペニスを掴むと、根元に包丁を入れ、ザクザクと切り出した。

「いでええええええええ」

 和野は掴んだペニスを口に入れ、あごを無理やり上下させた。自分で自分のものを含んでいるのが気持ち悪く、胃から吐瀉物が上がってくるが、無理やり口をふさがれ、ついにはペニスごと飲み込んでしまった。

「死ねえええ」

 和野が叫ぶと包丁を体全体に突き刺し始めた。痛覚は麻痺してくれず、新たな痛みが次々に長岡を攻撃する。

 和野の指は喉ぼとけを掴むと、たちまち首にめりこみ、血管とともに喉ぼとけを引きちぎった。

 引きちぎられたところからは大量の血が噴水のように飛び出し、和野の顔を赤く染め、多くの血が滴った。

 長岡は意識がなく痙攣している。その顔に最後は思い切り包丁を突き刺した。

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エイプリールフール 佐々井 サイジ @sasaisaiji

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