《ROUND1−10》ジェラートと宿命と拳士の裁き

――TIPS――

【拳華成闘の掟①】

『拳華成闘』で培った力は、闘技場にて正々堂々とぶつかるべし。

己の欲望と渇望に駆られ、人を傷付け、殺め、破壊行動を行う愚か者には、全ての“生”を拒絶する裁きが下るだろう。


〚SETTING...〛


 ――歌舞伎町で繰り広げられた『拳華成闘』。

 正義の拳『天翔道流』と邪悪な拳『奈落道流』、それぞれの個性と魂を用いて闘うゲーム拳士達。


 二つの流派を相対する初の格闘戦。その初陣を飾ったのは、拳華成闘歴というド素人かつド初心者。それに反して赤い獅子の魂を持った野生児・赤城玲王が、奈落道流・カマキリ拳使いのマンテラーを野生パワーでノックアウト。


 この拳が混じり合った瞬間から、天翔道と奈落道による全面衝突の意を表す宣戦の火蓋が切られたのです。


 ……だが今は、奈落道の襲撃によって廃墟と化した歌舞伎町の姿がいたたまれない。ネオン煌く夜の街も、電飾看板が大破されて、ビルも切断されては風情に浸るどころではない。無情な感情が心を刺す……って、ありゃりゃ!?


「何だ、なんだ!? ビルや店が元通りになっていくぞ!」

 奈落道に勝利し、闘いの恍惚に浸っていた玲王は、時間が巻き戻るように瓦礫やビルの破片が修復される様子に目がパチクリ。鉢合わせていた龍青達が、この現象を知っていた。


「『拳華成闘』は仮想空間と現実が融合されたゲーム。その力を現実で利用し、破壊活動を行っても、敗れればその行為そのものがされて、歌舞伎町も修復される」

「でもそれが出来るのは建物や自然だけ。もしその相手が人や動物を傷付けたり殺したりしたら、生き返させる事は出来ないわ」


 等と淡々に説明する龍青と舞。これに玲王が理解したかは望み薄だが。

 要は拳華成闘の力を用いて、無機質なものを如何に破壊しようとも、負ければリセットが出来るが、生きとし生けるものの殺生に関しては修復出来ない。それほど生命は重く、ゲームの枠で弄ぶ事は赦されないものなのだ。


 だが、カマキリ拳使いのマンテラーのように人の生命を弄び、哀しみを顧みない拳士には、拳華成闘の掟に背いたとして重い裁きが下される。

 それが、ノックアウトされて敗れた今のマンテラーの姿を表していた。


「あれ、さっきのカマキリ野郎だ!」

 玲王がマンテラーを見つけ近くに駆け寄ると、その姿は直視出来ない程酷いものとなっていた。


「ぁ、か…………は…………」


 筋骨隆々だったマンテラーの肉体が、老年期の末端を迎えたかのように痩せ衰え、両手の鎌も錆びついている。モヒカン頭もチリチリに乱れて、歯もボロボロ。虫の息と言ったものか、声を出すのもままならない。

 最早闘う気力どころか、食欲・性欲・睡眠欲の三大欲求全てを失われた様子だった。


 彼をそうさせた要因は、拳華成闘で装着された『拳華印輪』によるもの。

 印輪から与えられた力の使い方を間違えた事で、五体全てを司る力を全部印輪によって、吸収されてしまったのだ。


「これじゃ、食べ物どころか流動食すら喉を通らなくなるわね」

「当然の報いと言うべきか……こうなるなら死んだほうがマジかもしれん」


 舞や龍青がマンテラーの姿を憐れむ。あと数十分もすれば警察が到着し、彼を逮捕に向かう事だろう。……収容までに生命が持つかは分からないが。


「――――見事であった。闘獣魂のゲーム拳士達よ」


「「マスター・金剛!!」」

「キングコングのおっちゃん!」


 玲王達の初陣に勝利した事で、マスター・金剛自らが出向き、彼等を称賛に現場へやってきた。これに舞と龍青は敬意を込めて抱拳礼ほうけんれい。玲王は相変わらず無礼講に戯れる。


「数年に渡る修行の成果が、この初陣で確かに実を結んだようだな、舞、龍青。

 そして、玲王。御主の正義の魂と、野生の力で奈落道の拳士を打ち破る事が出来た。これで御主は改めて、ゲーム拳士の道の第一歩を踏み出したのだ」


「そーだ! オイラがあのカマキリをぶっ飛ばしたんだぞ!! オイラ超強えーーー!!!」

 初勝利を飾って、有頂天になる玲王。


「……マスター、わたしは今の実力で満足はしていません! 奈落道と闘う為にも、どうか更なる力を、技の伝授をお願いします!!」

 対して龍青、経験則から思っていた程の期待をされなかった事に嫉妬したか、はしゃぐ玲王を払い除けてマスターに深々と頭を下げて懇願した。


「私もお願いします!!」

「あ、じゃオイラも!」

 龍青に続くように、舞と玲王もマスターに懇願する。



「うむ。その心意気、天晴である。その意志に応え、我がしかとその修行を引き受けよう……と、言いたい所だが――――御主ら三人には、そこまでの域には達しておらん」


「「「……………えぇ???」」」


 なんと、マスターは龍青達三人からの修行の依頼を拒否。これには三人もどういう訳か困惑している。


「……だが、修行に早い遅いと言ってる暇は無いだろう。ならば、我からの修行の道を示す前に、御主ら三人にはを与えよう!」


「修行の前の、試練?」

「それは一体?」

 舞と龍青が、その試練の内容は何か問うならば、



「舞、龍青。御主ら二人は、玲王に拳華成闘の基本を教えながら――――【ゲームワールドオンライン】にて、ある食材を収集するのだ。…………以上!!」




「こ……この野生児に格闘を教えながら……!?」

「ゲームワールドで狩猟ですってぇ!?」


「……げーむわーるどって、美味いのか?」


 闘い終わって、更なる強さを目指すべく待ち構えるはマスターからの試練!

 それは何と現実から電脳へと、五体を転移させて突入できる『VRMMO(仮想現実大規模多人数同時参加型オンラインゲーム)』システムを用いた仮想空間世界【ゲームワールドオンライン】の狩猟体験であった!


 玲王、舞、龍青の三人。未だチグハグな関係の中で、どんな闘いが待っているのでしょうか?


 試練の内容も分からず、ただ困惑する三人を尻目に、マスター・金剛は修復された歌舞伎町のアイスクリーム店から購入したピスタチオジェラートを頬張っていくのでした……!


「う~む、このピスタチオのまめまめしさが忠実マメな美味を生んでいるのぅ♪」


 ――ビーストハーツ、結成前夜。格闘ゲームの次は狩猟アクションへと突入します!

 本日の試合はここまで! マッチブレイクッッ!!




 〚Coming Soon…〛

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【Burning Fighter Online】拳・華・成・闘!! 〜闘獣魂の格ゲーファイター、心技体強くなりたいんで飯食わせて下さい。〜 @kazukid

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画