《ROUND1‐9》牛肉と野生パワーと獅子奮迅

 ――リスタート・イン・マッチ!

 ビーストハーツのゲーム拳士による初陣もいよいよ大詰め! カマキリ拳使いのマンテラーVS赤獅子の魂を持つ野生児・赤城玲王との決戦。


 ゲーム戦士の魂の能力『PAS』を発動させた玲王は、拳華成闘のアバターに作用し、独自の戦闘スタイルに変換された!


「うぉりゃあああああ!!!!」


 赤いたてがみの頭、筋骨隆々のボディに獅子に模したボクサーパンツ。野性に身を投じ、野性の力を借りて、炎の波導を纏わせて獲物を狩ろうと全力で走るその姿。

 ――我々は、戦場を駆ける赤獅子を見た!!


「な、なんて波導なの……?」

「有り得ない、あの野生児に何故あんなパワーが……?」

「とにかく、彼女を安全な所へ移さなきゃ」


 既に拳華成闘を熟している筈の舞と龍青さえも、圧倒させる程の玲王の闘気。傍観しながらも玲王に代わって、負傷してマンテラーに殺されかけた女性を救助するのだった。


 対して玲王。PAS発動と同時に憎きマンテラーの顔面を正拳で吹っ飛ばした。その追撃に奴の後を追う。

 チーターにも似た瞬速で、玲王は直ぐに瓦礫と共に吹っ飛んだマンテラーを見つけた。


「オラオラどうしたぁ!? グー1発にカマじゃ相手にならねぇか!?」

 おっと? 純粋な野生児が一転して、好戦的な煽りを入れてきたぞ!?


「ほ……ほざくな、ターザン風情が! この俺を愚弄する気か!!」

 さぁマンテラーも鎌振り上げて鶏冠に来たぞ! これに応じて玲王、相手に急接近し、近距離戦を仕掛ける。


 カマキリの鎌がある分、マンテラーの方がリーチが上手だが、俊敏さは玲王が圧倒的に上だ! 振り翳す鎌の軌道は単純明快直線のみ。野生の勘から既に察知していた玲王は、完全に奴の攻撃を見切っている。


 強固な肉体とは裏腹に、柔軟な身体の動きから成る軽やかなフットワーク。その動きは、密林を駆けるサルの如く。霊長類の限界を超越した可動力で、廃墟と化したアスファルト・ジャングルを制する!


「うにゃーーーーッッ!!」


 あぁぁっと!? いきなり玲王がマンテラー目掛けて飛び掛かり、上腕・両脚でガッチリと奴の身体をホールド! そして大きな口を開けて、


 ――――ガブリュッッッ


「ギャアアアアアアア!!!!」


 なんと!!? マンテラーの首筋目掛けて、強烈な噛み付き攻撃だぁ!! しかも玲王のライオンのように鋭く尖った歯と顎の強さが比例して、途轍もないダメージを与えたようだ! 未だ飛び掛かって身体に絡みついた玲王は、身体から下半身を解いて奴の胸に両脚を付けて……


「あら、よっと!!」

 ――――KICK!!!


 バク宙の要素で胸にクリーンヒットさせた、サマーサルトキック炸裂!! これにはガ◯ルも真っ青、ザンギ◯フ相手に使いたい!!


「こ……この、猿小僧が!!!」


 ――斬ッッ!!


 ここはマンテラーも黙っちゃいない、サマーソルトキック炸裂後の隙を突いて、両手の鎌を使ってバツ字に胸を切り裂かれた玲王。

 その衝撃でフィールドの外壁にふっ飛ばされるが、その壁を両脚で着地し、脚のバネを利用して再びマンテラーに接近。片腕を横に広げて、


 ――――BLOWWWW!!!!


 マンテラーの喉元目掛けて、空中反動ウエスタン・ラリアットだあああ!!!

 次々に炸裂する野生のパワーを用いたプロレス技。当然彼が熟練して得た技ではなく、これはぶっつけ本番で野生の本能のままに編み出されたもの。


 ――その力の源を、『ヘラクレス』本部から見守っていたマスター・金剛と、高橋豪樹が知っていた。


「マスター、ちゃんと理由あって玲王を拳華成闘に参加させたんでしょう?」

「何故、そう思う?」


「マスターが彼に食べさせた牛丼。そいつに乗ってた牛肉……あれって、から仕入れたんちゃいまっか?」


 え……ゲームワールド? あの地球規模のオンラインゲーム空間で仕入れた、って!?


「鋭いな、流石我が弟子だ。ズバリ、ゲームワールドで転送輸入してきた『ワイルド・ワイルド・ビーフ』だ。欧米開拓者のDNAが注ぎ込まれた牛肉が、玲王の強靭なパワーとプロレス技を授けたのだ」


 いや、その前に説明して欲しい所が一つあるんですけど。仮想空間のアイテムであろう食材を、何で現実に出せるのか……って、私への聞く耳持たず二人は話を進めちゃってます。


「玲王が本部のドアぶち破ってピンと来たんスよ。生半可な拳士じゃ、あんな力直ぐには出せへんし。――期待してるんでしょう。玲王の力を」


「圧倒的なパワー、狙った獲物は必ず仕留める俊敏さ、そして大いなる自然を支配する王者に相応しき圧力の強さ。……まさしくこれは、”獅子“の魂。


 ――天翔道流・赤獅子拳。我はこの力を携えた赤城玲王に、賭けてみたくなったのだ……!!」


 〚SETTING...〛


 代わって舞台は歌舞伎町VRフィールド。マンテラーと玲王の激戦もクライマックス!

 立体表示されたマンテラーのHPゲージも残り僅かに対し、玲王のHPは10%も消費されてないという圧倒的な強さを魅せつけていた!


「これでトドメだ、ブッ飛べカマキリ野郎!!」


 玲王のHPゲージの下には、必殺技に必要なSPゲージがマックスまで蓄積されていた。

 まだ拳華成闘の仕組みを知らない筈の玲王は、無意識にもSPゲージを30%消費させて、両拳を両脇に構えて気力を蓄える。

 そしてその拳を、一気に前に突き出して解き放つは初お披露目、玲王の必殺技!!



「天翔道流・赤獅子拳奥義!! 『真朱しんしゅたてがみ』ッッ!!!!」



 玲王の拳から、獅子のたてがみに見立てた渦状の炎を発現! 怒りの炎が煮ても焼いても喰えないマンテラーの身体を包み込み、着火と共に爆風を呼び、マンテラーを場外へ吹っ飛ばす!!


「ギヤヤヤヤヤヤァァァァァァ!!!!!」


 PLAYER1 WIN!!


 ――カマキリ拳使いのマンテラー、完全ノックダウン!!

 フィールド中央、立体的に表示された玲王の勝利メッセージと共に、拳華成闘・初陣を見事に制しました!!!


「…………すっっげぇ〜〜〜ッッ」


 対して玲王、生まれて初めて放った必殺技に感動。更に己の手を見つめて、想像もしなかった自分の強さに興奮が止まらなかった。



「これが、これが拳華成闘か!! 俺、強ぇし! 強い技出せたし!! 超ッッ、楽し〜〜〜いッ!!!」



 湧き上がる好奇心、漲る無限の力!!

 その力を闘いに注ぎ込んだこの瞬間から、赤城玲王のゲーム拳士としての第一歩を、踏み出したといっても過言ではない!!



 そしてこれこそが、長くも厳しいゲーム拳士・最強への道の始まりでもあるのです……!



 〚Coming Soon…〛





 ――TIPS――

【ゲームワールド食材・料理リスト】

 No.001『ワイルド・ワイルド・ビーフ』

 ☆食材レベル:B++

 ・ゲームワールド北西エリアの平原にて生息する『野々牛』から採れる牛肉。

 通常の牛肉よりもタンパク質・アミノ酸が多く含まれており、ゲーム拳士達のパワー強化に重宝される食材の一つ。また欧米文化の遺伝子も組み込まれている事で有名。


 調理の仕方によっては、フロンティア魂直伝のプロレス技が習得出来るとか。

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